
Moonflower
@Moonflower0226
2026年5月6日

裏面
アルフレート・クビーン,
吉村博次,
土肥美夫
読み終わった
第三部 夢の国の没落
第一章 敵対者
第二章 外界
第三章 地獄
第四章 幻影ーーパテラの死
第五章 結び
エピローグ
【感想】
文学作品の挿画画家として活躍したクビーン唯一の長編小説にして、幻想怪奇小説の異端的傑作。
この小説が特異なのは、主人公が「街(都市国家)」であり、語り手は狂言回し的な存在にすぎず(というかむしろ、「信用できない語り手」であるため「騙り手」とすべきか)、その街の「崩壊」にこそ主眼があることだろう。
「夢の国」に赴いた主人公夫婦は、到着直後(いや、出発したそのとき)からあらゆる幻滅に見舞われる。この「夢の国」の官僚機構にカフカの先達を見る向きもあるだろうし(本作は1909年作)、統治者パテラに古今東西の独裁者像の普遍とそこからの逸脱を見出せるだろう。
ただ、画家が創作に行き詰まって書き下ろしたという作品だけあって小説としては歪であり、文学的な達成なり文章の機微といったものはそれほどではない。その分、異様なヴィジョンの数々と著者本人による挿画の強烈さが、本作を傑作たらしめている。
とくに第三部第三章「地獄」は、どうしてこんな汚らしい(文字通り、汚物のオンパレード)幻視が次から次へと出てくるのか、かえって感嘆さえするほどで、有名作家だったら発禁処分になっていたのではないかと思った。
本作執筆がある種のセラピーとなったというだけあって、ここに込められたクビーンの無意識に当てられてしまう人もいるかもしれない。読んでいて何というか「距離感」が狂うのを感じた。危険な小説かもしれない。