

Moonflower
@Moonflower0226
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- 2026年2月24日
- 2026年2月23日
- 2026年2月22日
- 2026年2月21日
エビデンスを嫌う人たちリー・マッキンタイア,西尾義人読み終わった第4章 気候変動を否定する人たち 〜 第8章 新型コロナウイルスと私たちのこれから 【感想】 科学哲学者による、科学否定論者との対話を理論と行動から綴った体験的ノンフィクションにして、他者との真摯な関係構築を提案する警世の書。 第2,3章が理論編で、残りが実践編と大まかに言える。後者はところにより語り口も軽妙で楽しく読めた。(ただし、科学哲学を知らないと読みにくく思えるであろう箇所はいくつもあるので、著者の旧著を読んでおくといいかもしれない) フラットアース(地球平面説)、気候変動否定、反GMO(遺伝子組換え作物)、反ワクチン、またそれらに共通する陰謀論といった科学否定論が語られるが、それらを珍奇なトンデモ言説として斥けるのではなく、なぜそのようなものを信じる(信じるに至った)のか、またどうしたらその考えを変えることができるのか、著者は対話を通じて真摯に探っていく。 執筆時期が第一期トランプ政権と重なっているため、アメリカが被った大きな転換期のドキュメントともなっている。 科学否定論者の五つの類型(①証拠のチェリーピッキング、②陰謀論への傾倒、③偽物の専門家への依存、④非論理的な推論、⑤科学への現実離れした期待)や、信念形成におけるアイデンティティの中心的役割、確信を変えるのは情報ではなく信頼であることなど、理論編から学ぶことは多々あった。 ただ、本書の素晴らしさは実践編にある。真摯な対話を重ね、様々な推測と思索を巡らせる著者の姿に感銘を受けた。 もっとも、著者が対峙したのは知的な人がほとんどで、言うなればもっと「考えが凝り固まった」人たちはほぼ(冒頭のフラットアーサー以外は)出てこない。なので、本書は哲学者による電波系陰謀論者ぶった斬り武勇伝みたいなものではない。むしろ、そうした信念を抱くに至った経緯に関心を示すことで、他者に心を開いてもらうことからすべては始まるのだと本書は語っている。 その実践は誰にとっても困難だろうが、それでも理論編で得た知識や実践編での悪戦苦闘ぶりは参考になるはず。SNS全盛/AI興隆の現代にあって、本書が愚直に示す「真摯さ」は眩しくも儚い(かもしれない)が、だからこそ重要なのだと思えてならない。 - 2026年2月20日
- 2026年2月19日
- 2026年2月18日
聖母の贈り物ウィリアム・トレヴァ,栩木伸明読み終わったかつて読んだ「マティルダのイングランド 三、客間」 【感想】 三部作その三。マティルダは48歳になっている。 戦後、チャラコム屋敷はある富豪に買い取られ、マティルダは周囲の反対を押し切ってその一族に嫁ぐ。すべては屋敷と老嬢の思い出のためだった。 本書中でもっとも怖い作品かと思う。いわゆる「信用できない語り手」による語り/騙りであり、それゆえにニューロティックなホラー感が醸される。ただし、実際のところマティルダと夫の間に何があったか/なかったかは曖昧であり、その宙吊り具合が絶妙。 三部作を通じて、マティルダにとって屋敷/老嬢の「物語」がいかに大きかったか/致命的だったかが描かれている。ひとの「世界観」の深化を辿った連作とも言える。 【全体の感想】 12年ぶりくらいでの再読。あらためてトレヴァーのうまさに唸らされっぱなしだった。 どの短編も概ね「何かを失ったひと」(もしくは「失うとは何か」)を描いた作品と言える。ゆえに後味は苦く、ときに胸に痛みを覚えるほど。それだけ登場人物に血が通っている証左であり、「人間が描けている」(嫌な言い方だが)とはまさにこのことだろう。 - 2026年2月17日
聖母の贈り物ウィリアム・トレヴァ,栩木伸明かつて読んだ読んでる「マティルダのイングランド 一、テニスコート」 【感想】 三部作その一。マティルダはまだ9歳のこども。 近所のチャラコム屋敷に住む老嬢と三人兄妹の交流が深まり、かつて開かれていたようなテニスパーティーが開催される。人生最良の一日はしかし、その終わりに土足で踏み込んできた「戦争」の記憶とともに刻まれるのだった。 本書中でもっとも美しい一作では。すべてが光り輝いているからこそ、最後に立ち込める暗雲の黒さが際立つ。 「マティルダのイングランド 二、サマーハウス」 【感想】 三部作その二。マティルダは11歳。 父も兄も召集されてしまい、あらゆることが変わってしまった。マティルダはかつて老嬢が言っていた「冷酷」の意味を身をもって知ることになる。 戦中の話なのでどうしてもつらいものになる。それでも屋敷やその周辺の自然描写などが挟まれることで、リアルなのにファンタジックな雰囲気が微かに漂っており、この土地/屋敷こそが真の主役であると暗に伝えてくる。 - 2026年2月16日
聖母の贈り物ウィリアム・トレヴァ,栩木伸明かつて読んだ読んでる「丘を耕す独り身の男たち」 【感想】 父が亡くなり、兄弟姉妹が母のもとに集まる。末の弟が牧場を継ぐ。末の弟は結婚をしたいがうまくいかない。それだけの話なのに、その土地における神話(いや、叙事詩か?)のように思えてくる。 - 2026年2月15日
聖母の贈り物ウィリアム・トレヴァ,栩木伸明かつて読んだ読んでる「アイルランド便り」 【感想】 お屋敷に仕える姉弟から見た、主人一家とその従者たちの群像劇。本書中でもっともユーモアとアイロニーが強い(きつい)かもしれない。それもこれも姉弟の人間観察/描写ゆえ。もちろん、この二人も作者にこれでもかと観察/描写されており、そこに黒い笑いがある。 「エルサレムに死す」 【感想】 成功した兄が、実家で燻る弟をエルサレムに連れて行くも、母急逝の報が入る。兄弟母と全員が完璧にすれ違っており、その酷薄さがそれゆえにいかにも真実めいている。読むたびに肩入れする人物が変わりそう。前回は弟、今回は兄だった。 「雨上がり」 【感想】 失恋した女性はいかにして自分を新たに見出したか。本書の掉尾を飾るに相応しい、清々しさのある一作。逆に言うと、希望が描かれているのは本作だけということでもある。 - 2026年2月14日
二月のつぎに七月が堀江敏幸買った - 2026年2月14日
2月の本宇野浩二,森鷗外,矢川澄子,立原道造,菊池寛,西崎憲買った - 2026年2月13日
聖母の贈り物ウィリアム・トレヴァ,栩木伸明かつて読んだ読んでる「ミス・エルヴィラ・トレムレット、享年十八歳」 【感想】 少年とそのイマジナリーフレンドを、家族史とからめつつ語っていく。ニューロティックなホラーになりそうでならないのは、あくまでも少年の語りであるためだろう。苦さよりも切なさの方が勝るか。 「聖母の贈り物」 【感想】 聖母に翻弄された修道僧の一生と言えなくもないが、それでもというかそれゆえに、大きな恩寵のようなものをラストに覚える。アイルランドの峻厳な自然をそこかしこに感じられる点も大きい。 - 2026年2月11日
聖母の贈り物ウィリアム・トレヴァ,栩木伸明かつて読んだ読み始めた「トリッジ」 【感想】 仲良し悪ガキ三人組が長じて大人になり、かつて散々バカにしていたトリッジに手痛いしっぺ返しを喰らう。勧善懲悪的な因果応報譚と言えなくもないが、痛快さよりも不気味な印象が勝る。 「こわれた家庭」 【感想】 老婦人の満ち足りた住環境を、善意の人々が決定的に破壊してしまう。描かれるのは世代間対立でも老人への蔑みでもなく、徹頭徹尾ディスコミュニケーションであり、ひとは他人のことなど微塵も思っていない(自分の見方でしか見ない)という身も蓋もない事実なのだった。 ふとピンチョンの「エントロピー」を思い出した。ある種の「熱死」と言えるかもしれない。 「イエスタデイの恋人たち」 【感想】 薄給の中年男が初心な娘と不倫を重ねる。それだけの話なのに、ホテルのバスルームという夢空間を設けることでロマンティックな一作となっているのだからすごい。映画化したらノスタルジックな佳作になりそう。 - 2026年2月11日
人生の段階ジュリアン・バーンズ,土屋政雄読み終わったかつて読んだ読み始めた1 高さの罪 2 地表で 3 深さの喪失 【感想】 刊行時以来の再読。当時は3部にいたく感銘を受けたものだったけど、今回は不思議と2部に惹かれた。 1部は気球にまつわる群像が描かれる歴史編。 2部は1部における「もしも……」が描かれる虚構編。 3部は妻を喪った作家本人の独白ないし回想が描かれる現実編。 1部2部は、言ってみれば作家に3部を書かせるための足がかりのようなもので、作品として必要であるとは必ずしも言えない。ただ、訳者解説にあるように、バーンズ本人にとって必要不可欠な「筋書」だったのだろう。その点を含め、とても真摯な「喪の作業」だと思う。 とはいえ、そこはバーンズ。鬼面人を驚かすような作品ばかりものしてきた御仁らしく、様々なところに現れる「繰り返し」の妙がいかにもバーンズなのだった。 - 2026年2月10日
行く、行った、行ってしまったジェニー・エルペンベック,浅井晶子読み終わった32〜55 【感想】 大学を定年退官した古典文献学の名誉教授リヒャルトは、ふとしたきっかけからアフリカからの難民に関心をもち、実際に彼らと交流するようになる。彼らの来し方の聞き取りを進めるなかで親交が深まると同時に、法の理不尽と社会の無理解が浮かび上がり、リヒャルトは自然と様々な行動を打って出るようになっていく。 大まかな物語は上記の通りで、そこに東ドイツ時代の記憶が細部に埋め込まれていくのが実に巧みなのだが、それを可能にしているのがやや特異な文体の妙だ。ほぼ一人称に等しい三人称の文体はとても読みやすい一方で、自由自在に話者を出入りするためときにその「声」と実景との重なりが輻輳化する。とくに多用される「自問自答文」においてそれが顕著で、とても面白かった。小説を読む愉しさはこういうところに(も)ある。 もちろん、表面的にストーリーを追うだけでも十分に面白い。難民たちの境遇に思いを巡らすだけでなく、何より彼らの個性が際立っているのだ。「顔のある人間」として描く(一方で、彼らに一種の記号として古典からの名前を与えてしまうリヒャルトを描く)その語り口は、淡々としているようであたたかい。 終盤、1ページに一文だけが示される(そして繰り返される)場面の、あの感情をどう言ったらいいものか、わからない。遣る瀬なさ、なのだろうか。 移民や難民に関心のある方は、同じ訳者によるカロリン・エムケ『憎しみに抗って』もぜひお読みいただきたい。本作と同じく、ドイツの移民/難民問題に材を採っている。刊行年も本書が2015年、エムケが2016年と近い。 - 2026年2月9日
- 2026年2月8日
- 2026年2月8日
暗闇のなかの希望 増補改訂版 ――語られない歴史、手つかずの可能性 (ちくま文庫 そ-4-1)レベッカ・ソルニット,井上利男,東辻賢治郎読み終わった16 大いなる分断を越えて 〜 すべてがばらばらになり、すべてがまとまりつつある 【感想】 直接行動/アクティヴィズムの歴史と実践と思想を内側から描き、現代社会における希望と可能性の在り処を示す。 著者があとがきで述べるように、本書は端的に彼女の仲間たちを鼓舞するために書かれている。それでもなお/それゆえに、「行動すること」が切り拓く/切り拓いてきた「未来」が如何なるものであったかがありありと描かれているため、社会における不正・差別・不条理への抵抗の必要性と、行動しつづけることが自然と「次」を引き寄せていく可能性とが説得的に語られており、こうしたアクティヴィズムとは縁のないひとをも鼓舞する叙述となっている。そこにいたく感嘆させられた。 原書はイラク戦争期の刊行ながらも、本書が提示する「希望」の普遍性は色褪せることはなく、むしろ今後さらに強まっていくのではないか。ろくでもなさすぎる世界情勢(もちろん国内も含む)に「力」を殺がれる日々がつづき、今後ますますその傾向が深まると思われるだけに、多くの人に読んでもらいたいと思った。 - 2026年2月7日
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