しんたろう "ひと呼んでミツコ" 2026年5月6日

ひと呼んでミツコ
ひと呼んでミツコ
姫野カオルコ
p199〜200 「ーーでも、たかだか食事なんですけど、でも、わたしね、女のひとはオゴってもらって当然、とはどうしても思えないんです。もちろん、恋愛関係にある場合や恋愛感情をその相手に抱いている場合なら、それはそれぞれ当人同士の趣味もあるだろうからべつなんですよ。ただ……」 わたしは傘をコツコツと鳴らした。 「わかるわよ、ミツコちゃんのひっかかり。女だからという理由でオゴってもらうことって、はっきり言って売春と同じよね」 「うん…と、そこまで言っていいのかは……」 「じゃ、売春に通じるものがある、って言えばいい?でも、あなた、そう感じているはずよ。だから、長崎さんと課長のやりとりを見かけたことがへんにひっかかるのよ」 「……そうですね。ただ、それは二つある理由のうち一つだという気がしてきました」 「それじゃ、残りのもう一つはなに?」 わたしはしばらく黙っていた。頭の中を整理していた。 「売春に通じる、と心の半分で思いつつ、もう半分では、屈託なくオゴってもらえるひとをうらやましいと思っている自分にとまどったんです。ちいさな買春をできる女性のほうが幸せになれるんじゃないか、って。それが色気というものじゃないか、って」
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved