
ピエ
@pie_202
2026年4月18日

無声映画のシーン
フリオ・リャマサーレス
読み終わった
スペイン北部の鉱山町オリェーロスで過ごした少年時代を、30枚の写真を見ながら回想する、という構成の小説。1枚の写真につき1話、想起したエピソードが語られる。
主人公が語る少年時代の記憶の断片から、1960年代のオリェーロスの姿が立ち上がってくる。炭鉱から出るボタ山の黒と、雪の白、この町のイメージは基本的にモノクロである。一転して、鉱山会社からの給料の「支払日」には、サーカスや旅芸人がやってきてのお祭り騒ぎとなり、あまりの賑やかさに笑みが浮かんでしまった。
しかし、そんな楽しげな「支払日」のエピソードにさえも、死の影が差している。リャマサーレスの小説は『黄色い雨』と『狼たちの月』も読んだが、どれも孤独と死のイメージによる静寂に包まれており、悲しいのに妙に心地良さを覚える。この独特の読み味は他には無い。
オリェーロスの坑夫たちは、鉱山での事故や粉塵による肺疾患の恐れに常に晒されている。また、時はフランコの独裁下にあり、少しでも反体制的な言動をすれば誰に密告されるか分からないという不信感が、国全体を覆っている(とりわけ、坑夫たちは内戦時の抵抗から目をつけられている)。
しかしそういった悲惨や不穏は表に出過ぎることはなく、語り手の少年時代の視点が貫かれている。このバランス感覚が絶妙で、改めて描写力に優れた作家だと感じた。


