
ピエ
@pie_202
スペイン語圏の文学、歴史、美術/英米児童文学
川野芽生/山尾悠子/皆川博子
などを好んで読みます。
今年はイタリア文学に力を入れて読みたい。
- 2026年2月8日
R.U.R.大久保ゆう読み終わったカレル・チャペックの"R.U.R. (ROSSUM'S UNIVERSAL ROBOTS)"の英訳版を大久保ゆう氏が日本語に訳し、青空文庫に収めたもの。 「戯曲を読もうの会」(ゆーぐれなゆーりんちー様の主催)に参加した折に、第二幕まで参加者みなで朗読した。第三幕は終了後に一人で読んだ。 「ロボット」という言葉を初めて使用したことで知られているが、この作品における「ロボット」は、人間と同じ外見と体構造を持ち、工場で生産される代替労働力というような意味である。人間の労働者の何倍も効率よく働けるが、心や感情を持たない。 そのロボットの生産を一手に担うロボット製作所に、会長の娘ヘレナがやって来るところから第一幕が始まる。この世間知らずのお嬢様の目的は… 人間より安価に働かせられるロボットにあらゆる労働を任せていったらどうなるか…という展開は、今となっては見慣れたものになってしまったが、結末は衝撃的だった。 生命を創り出すという、神に成り代わろうとするかのような行為の描き方は、キリスト教の要素が強い。ロボットの反乱を予防するため、地域ごとに言葉も外見も異なるロボットを創り、彼らの意思疎通を妨げて反目させようとする計画など、バベルの塔の逸話そのものだ。 登場人物、特にヘレナの心情に分かりづらい部分があったが、他の人の朗読の仕方を聞くことで解釈が深まった気がする。 また、掛け合いのシーンも多いので、誰かと一緒に声に出して読むのがとても楽しい作品だった。 - 2026年2月5日
ブエノスアイレス食堂カルロス・バルマセーダ,柳原孝敦読み始めた原作が良いのか翻訳が良いのか(おそらく両方だろう)、文章のテンポがよく、ぐいぐいと読んでしまう感覚がある。 言葉で描かれる料理があまりにも美味しそうなのは言わずもがな、人の外見や風景の描写に使われる独特な言葉に妙な説得力があり、本からイメージが押し出されてくるような気がする。例えばブエノスアイレス食堂の創設者である若きカリオストロ兄弟の描写に、「…、白い肌は海風に鍛えられていた。暗い色をした目がそんな肌の上で黒光りするさまは、あたかも海面にばらまかれた石油のようだった。…」(p14)というのがあり、印象に残った。 ※私の読んだ範囲ではまだ一般的な(異国風であってもヨーロッパ趣味的な)「料理」の描写しか出てこないが、本作はカニバリズムを主体として扱う文学であるため苦手な方は注意してほしい - 2026年2月4日
ロサリオの鋏ホルヘ・フランコ,田村さと子読み終わった1980年代のコロンビア第二の都市メデジンを舞台とする、麻薬カルテルの女殺し屋ロサリオ・ティへーラスの物語。コロンビアでは『百年の孤独』と並ぶベストセラー小説だそうで、映画やドラマにもなった。私はメデジン出身のJuanesが本作をオマージュした楽曲"Rosario Tijeras"が好きで、それをきっかけに読んだ。 冒頭、ロサリオは撃たれて病院に運び込まれ、死にかけている。ロサリオに片想いする「俺」が、病院の待合室で夜を明かしながら、出会いから現在までの彼女の人生を回想していく。 スラムに住むシングルマザーの家に生まれたロサリオは、仕立屋である母の鋏を使い、自分を強姦した男に復讐したことから、ロサリオ・ティへーラスと呼ばれている(tijerasは鋏の意)。殺し屋になったことで金を手に入れたロサリオは、上流階級出身の「俺」とその親友エミリオに出会い、エミリオの恋人として3人でつるむようになる。 女殺し屋というと冷酷な女を想像したが、ロサリオは感情の起伏が激しく、兄や仲間の死に激しいショックを受け、人を殺した後は罪悪感から過食して著しく太る。彼女を殺し屋にしたのは、麻薬カルテルの牛耳る暴力と、固定化された階級と、女性を踏み躙るマチズモであることを、痛々しいほどに感じた。 邦題『ロサリオの鋏』について、Tijerasは二つ名なのだから寧ろ「鋏のロサリオ」ではないかと疑問を覚えながら読んでいたが、本編最後の2ページで腑に落ちた。「鋏」は、周りを傷つけながら、何より自分が傷つきながら生きるしかない彼女自身の象徴なのかもしれないと思う。 最後に、この話の舞台は前世紀であり、現在のメデジンとは全く状況が異なるという点には留意したい。コロンビアに染み付いた麻薬と暴力のイメージが再生産され続けることは本意ではないので。 - 2026年2月1日
薔薇の名前[完全版] 下ウンベルト・エーコ,河島思朗,河島英昭読み終わった読了。大変に面白かった! 巻末の(と言っても120ページある)覚書と解説で少しペースダウンしたが、本編の後半部分は特に夢中になって読んだ。 第四日で、ウィリアムが書物についてより深く語ってゆく場面が特に気に入った。「書物はしばしば別の書物のことを物語る」(p.53)という彼の言葉を受け、それでは文書館は、その内部で膨大な書物たちがひそかに囁き合っている一種の生き物ではないか…と考えるアドソと共に、私も畏怖のようなものを覚えた。 ウィリアムが故郷であるイギリスやアイルランドの書物について語る時に、懐かしさ愛おしさを込める様子も好きだった。中世においては辺境と見なされただろう故郷から、今の距離感とは比べ物にならないほど遠く隔たって生きる人にとって、かの地で生まれた書物は故郷との繋がりを感じさせる唯一に近いものだったのかもしれない。そう考えると、アドソには「変な言葉」としか思えない崩れたラテン語を、懐かしそうに見つめるウィリアムに何だか共感してしまった。 上下巻を一か月ほどかけてゆっくり読んだため、私もまたこの僧院で過ごしてきたような気持ちになっており、物語が終わって自分の中からこの場所が失われることが少し苦しい。きっとまたこの山上の僧院に、写字室と文書館に戻りたくなり、何度でも読み返すであろう物語だった。 - 2026年1月25日
薔薇の名前[完全版] 上ウンベルト・エーコ,河島思朗,河島英昭読み終わった第三日まで、そして上巻を読了。 見習修道僧であるアドソが、異端に関して年配者たちに尋ねて回る一日。第一日に僧たちが異端について議論していた時にはよく分からずさらっと読み流したことが、アドソがしつこく質問してくれたことで理解できるようになった。常にアドソと同じくらいの理解度で読み進めることが、この小説を楽しむポイントなのではと思われたので、この日は彼と同じくらい真剣に読んだ。 アドソという少年(語り手としての現在は老人)の人となりも、だんだんに分かってきた。彼はいわばワトソン的な探偵助手のポジションなのだが、この立場の登場人物は探偵(師のウィリアム)より思慮が浅いために、読者を苛立たせやすい。しかしアドソの未熟さはまだ少年であるがゆえであり、かつ、老年となった今では反省や後悔も交えながら回想しているため、読者のヘイトを集めにくいのが巧いなと思った。 アドソは聖処女像の胸元の清らかな美しさを説かれて顔を赤らめてしまうような初な少年で、思わず微笑んでしまうような言動も多い。しかしその純粋さは、おそらくはそこそこ裕福な家の生まれであることにも由来しているなと、貧しい生まれの人との間に生じるギャップからも感じた。第三日は彼の危うさが露わになり、語り手の揺らぎは読者の感情をも不安定にさせるものだが、それでも物語は動いてゆき、アドソも我々もそれについてゆかねばならないという、第四日(下巻)へ引き込まれる感覚が面白い。 - 2026年1月21日
影をなくした男シャミッソー,A.von,A.vonシャミッソー,池内紀読み終わった無限に金を取り出せる革袋と引き換えに、自分の影を失った男。金さえあれば安逸な人生を送れるかと思いきや、影のない人間など誰にも信用されず、方々で忌み嫌われ…という寓話のような中編。 件の革袋や七里靴など昔話でおなじみのモチーフが出てきて面白かったが、主人公シュレミールの嗜好には近代的なところがあり、これは作者自身を投影しているのかな…と思いながら読んだ。 訳者あとがきから、確かにシュレミールには作者シャミッソーと共通する部分もあることが分かるのだが、一方でシャミッソーは「影をなくした男」が「祖国をなくした」かれ自身を示唆していると読まれることは否定していた(シャミッソーはフランス貴族の生まれだが革命を避けてドイツに逃れてきた過去を持つ)。 私たちは作者に似たところのある登場人物を見つけると、「これはきっと作者の分身だ」と考えてしまいがちだが、作者が明言していない限り、安易にそのような読みをすべきではないなと考えさせられた。 この本はきっかけも覚えていないほど以前から読みたいものリストに入れていたが、本屋でふと見かけて買った。こういった薄い文庫本は持ち歩きやすくて好きだ。 - 2026年1月12日
薔薇の名前[完全版] 上ウンベルト・エーコ,河島思朗,河島英昭読んでる第二日まで読んだ。 夜明けと共に明らかになった第二の事件、一面の雪景色とどす黒い豚の血の大甕のコントラストにぞくぞくした。聖務日課に従って物語も動き始め、どんどん面白くなってゆく。そして聖務を外れた深夜課、いよいよ文書館の迷宮の探索に至ると夢中になって読んでしまった。 頭の中で図形を描くのが苦手なので、迷宮の地図が載っていて有難かった…しかし、地図を見るとアドソたちの辿ったルートが分かってしまうため、最初はテクストだけで彼らと一緒に頭を悩ませてみた方がより楽しめたかもしれない。 - 2026年1月8日
薔薇の名前[完全版] 上ウンベルト・エーコ,河島思朗,河島英昭読んでるお正月になかなか時間が取れず、ようやく第一日まで読み終わった。舞台となる僧院の概観と、修道僧たちの一日の流れを把握でき、前提知識の無い私のような読者にもわかりやすい導入だった。写字室や写本の描写が大変に美しく、中世のキリスト教芸術が好きな人にはきっと堪らない本だろう - 2026年1月2日
女教皇ヨハンナ 下ドナW.クロス,阪田由美子買った - 2026年1月2日
女教皇ヨハンナ 上ドナW.クロス,阪田由美子買った - 2026年1月2日
82年生まれ、キム・ジヨンチョ・ナムジュ,斎藤真理子買った - 2025年12月31日
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