
ピエ
@pie_202
スペイン語圏の文学、歴史、美術/英米児童文学
川野芽生/山尾悠子/皆川博子
などを好んで読みます。
今年はイタリア文学に力を入れて読みたい(全然読めてない)。
- 2026年8月29日
マヤ神話ポポル・ヴフ3版アドリアン・レシーノス,林屋永吉買った@ 東京オペラシティ アートギャラリーフヅクエでメソアメリカ文明の入門本を読んだ後、「ポポル・ヴフも読まないとな〜」などと思いながら、オペラシティアートギャラリーの「ほぼ、空:青木淳 + リチャード・タトル」を観に行ったら、ミュージアムショップで売っていて横転した。いや何であるんだよ! 今回の展示は、コレクション展やショップも含めて企画展のために再構成されており、ショップの選書も青木とタトルによるものだそうだ。 考えてみると、天高くそびえるマヤの神殿と、大きな柱や吊られたバスケットを多用する今回の展示には、ともに見る者の視線を斜め上へ(空へ)誘導するという共通点があるようにも思う。青木がセレクトしたコレクション展の野又穫の作品にも、天を突くような遺跡を思わせる建物がいくつかある。 『ポポル・ヴフ』は学生時代に図書館で借りたものの、急に気持ちが離れて読まずに返した記憶がある。しかしこれだけ偶然にお膳立てしてもらったからには、今回は読み切れそうだ。 フヅクエに行くと、本が響き合うように新たな出会いがあることが多く、つくづく不思議である。 - 2026年8月20日
ペドロ・パラモフアン・ルルフォ,増田義郎,杉山晃読み終わった再読フアン・ルルフォ作・杉山晃訳『黄金の軍鶏』が国書刊行会から今年出ているので皆読んでー! 『ペドロ・パラモ』は、フエンテス「チャックモール」と共に、私がイスパノアメリカ文学を読むようになったきっかけの作品である。きっとこの先も何度も読み返す。 初めは大学の授業でこの本の一節を読んだ。やはりラテンアメリカ文学ブームの先駆けとして紹介されていたような気がする。その後、図書館で借りて読み、また読みたくなり本屋で買った。 しかし何度読んでも内容を覚えられない。読み終えて暫くすると、荒れ果てたコマラの乾いた空気と、そこに漂うささめきだけが記憶に残っている。ペドロ・パラモがどんな人物であるかすら忘れてしまう。 ストーリーや語り口が優れているが、それらも含めてこの小説が描き出す情景や空気感を私は愛しているのだと思う。 あとがきの杉山晃による解説も秀逸である。自分の読解力の無さに悲しくもなるが…本当は記憶の新しい内に読み返した方が、新たな発見があって面白いのだろう。 杉山がこの作品を訳し始めたのは大学3年の時だそうで、この1992年のあとがき時点で「合計すると二十年以上ルルフォと付き合ってきたわけだが、たぶんこれで卒業だろう」と書いているが、まさか34年後に『黄金の軍鶏』の翻訳も出すことになるとは… - 2026年8月16日
鏡の角度山尾悠子買った@ ジュンク堂書店 池袋本店都内の大型書店にのみばらばら入荷しているが、買いに行く機会がなかなか無く、通りがかった池袋ジュンク堂で平台にあった最後の1冊を入手。 丸の内の丸善ではまだ在庫に余裕がある様子。 池袋ジュンク堂には初めて行ったのだが、海外文学がとても充実しており良い書店だなあ。 幻想文学のコーナーも大きめに取ってあり、特に川野芽生が凄まじく推されていて嬉しかった(ポップなどは無いが、棚に並ぶ物量がすごい…)。 - 2026年8月13日
長崎の教会白井綾読み終わった長崎、五島、平戸、天草などの教会堂を撮影した写真集。 あくまで写真集なので、建築をじっくりと見るのには向いていないが、各教会の特徴が際立っており、細部まで眺めてしまう。 人が写ったものはほとんどないが、堂内の扇風機やスピーカー、聖歌集、活けられたばかりの花瓶などが、これらの教会が現役の祈りの場であり、信徒たちによって大切に保たれていることを感じさせる。いくつかのパイプ椅子には座布団が置かれており、いつも座る席があるのだろうなと、ミサの前に信徒たちが挨拶を交わす様が思い浮かんだ。 入口に下足箱のようなものが見える写真もいくつかあり、少し驚いた。明治から昭和の初め頃にかけて建てられた教会が多いので、履物を脱いで上がる日本の習慣に沿ったつくりとなったのだろうか。 写真だけでなく、それぞれの教会とその地区の信徒たちの来歴が添えられており、読み応えがある。どの教会も、信徒たちが資金や労力を出し合い、数年から数十年かけて建てたものだ。かつては潜伏キリシタンであった家も多いかれらにとって、皆で集まって堂々と祈れる場所をつくることは、どれほどの悲願であっただろう。 どの教会も静謐で美しいが、私は特にリブ・ヴォールト(ゴシック建築によく見られる肋骨様の交差アーチ)天井に惹かれた。これらは上五島生まれの大工棟梁・鉄川与助によって設計・施工されたものが多いようだ。 熊本市の中心街にある手取教会もかれが手掛けたものとのこと、通る度に綺麗な教会だと思っていたがちゃんと見たことはなかった。今度見学してみたい。
- 2026年8月12日
深淵のかなたピラール・キンタナ,加藤尚子読み終わったピラール・キンタナの日本語訳2作目がいつの間にか出ていた! 既に出ている『雌犬』(村岡直子訳)は海辺の寒村が舞台だったが、本作では作者の生まれ故郷でもあるコロンビア第3の都市・カリ。主人公も大人の女性ではなく、まだ8歳くらいの女の子、クラウディアだ。 そのため、読み始めのあたりでは児童文学のようにも感じられたが、この物語で描かれる主体は語り手のクラウディアではなく、その目を通して捉えられる母ではないか。 母(彼女の名もまたクラウディア)は若く美しく、物質的には何不自由ない生活を送っている。しかし口には出さずとも、安定した暮らしのために20も年上のつまらない男と結婚してしまったこと、娘という足枷を産んでしまったことを後悔しているのは明らかだ。 決して同情を引くような人物ではないのだが、若くして専業主婦(お手伝いがいるため家事を頑張る必要すらない)となった日々の単調さと、学が無くコツコツ働く勤勉さにも欠けるため自分で生計も立てられないやるせなさを思うと、鬱病のような状態になるのも頷ける。 勢いで離婚をちらつかせたりもしつつ、結局一人で生きてゆくことのできない彼女は、若くして死んだ女たちに惹き付けられている。そしてその話を聞く娘のクラウディアも、階段やマンションの高層階、断崖といった「深淵」に惹かれていく。 原題は"Los Abismos"(losは定冠詞複数形、abismoは深淵)。深淵は一つではなく、一人一人にとって、あらゆる場所に存在していることを思わせる。 訳者の加藤尚子は、書籍翻訳としては本作が初めての出版とのこと。読みやすい訳ながら物語の不穏さを保っており、他の翻訳が出たらまた是非読んでみたい。 スペイン語文学の日本語訳は、ラテンアメリカ文学ブームの頃の翻訳者たちから、より若い世代の翻訳者たちへ移り変わりつつある。殊に女性翻訳者が増え、様々な女性作家の作品が訳されるようになったことが本当に嬉しい。 - 2026年8月10日
プラネット・ダイアリーマリー=ヘレン・ベルティーノ,小澤身和子読み終わった装画が素敵なのと、あらすじを読んで気になったので手に取った。 フィラデルフィアに人間として生まれた宇宙人のアディーナの物語。幼い頃に自分は宇宙人だと知らされた彼女の使命は、ファックスで日々の出来事を母星の「上官たち」に書き送り、地球に関する知見を集めること。毎日送り続ける報告には、上官たちの短い返答が同じくファックスで返ってくる。 本屋ではSFコーナーに置いてあったが、あまり「SFっぽい」小説ではない。未知の技術は上官たちとやり取りするファックスのみで、アディーナの生活は他の人々とさほど変わりない。 しかし、彼女は宇宙人であること以外にも、周縁化されがちな特徴を持って生きており(イタリア系アメリカ人であること、アセクシュアルであることなど)、それが時に彼女に疎外感を与えているように見える。 原題の"Beautyland"は、アディーナが育った家の近所にある化粧品専門店の名前だ。シングルマザーの母は金銭的な余裕が無く、カウンター奥に並ぶブランドものには手を出せずに生活必需品のみを買っていた。 大人になったアディーナが再訪した時、会計時の雑談で店員が言う。この辺りの店名は「みんながよく知っている場所っぽく」名前が付けられている、それは「なんか安心する」からではないか、と。だが、子供の頃のアディーナと母にとっては、香水のテスターを次々試すという束の間の楽しみがありつつ、それをあけすけに非難する嫌味な店員のいる、少し気後れのする場所だった。 アディーナや社会の中で異質とされる「エイリアン」たちにとって、地球や国もまた"Beautyland"なのかもしれない。マジョリティにとっては所属感のあり安心する場所でも、そうでない人にとっては時に気まずい思いをさせられたり排除されたりする場所になり得る。それでもそこには愛する人々もいるし楽しいことだってあり、何よりそこ以外にもっと良い居場所があるわけでもないのだ。 - 2026年8月3日
深い穴に落ちてしまったイバン・レピラ,白川貴子読み終わった再読ちいかわの「穴に落ちた」の話をアニメで見ていて、ふと思い出したので引っ張り出してきて読んだ(この本はちいかわと特に関係はない)。 深い穴に落ちてしまった兄弟が、脱出を試みる話。 泥水をすすり、木の根をかじり、ミミズやウジをご馳走のように食べ、兄弟が何とか生き延びようとしながらも弱っていく描写には息が詰まる。 しかし、体が強く専制的で現実主義者の兄と、ひ弱で夢見がちな弟という対照的な二人の会話には、妙に引き込まれてぐいぐいと読んでしまう。 素数のみが振られた章番号には理由があり、本文には暗号が隠されているそうだが、ただ物語を追うだけの私には相変わらず何も分からない。次に読む時に考えてみよう…とは初読の時にも思った気がする。 原題は"El Niño Que Robó El Caballo De Atila"(アッティラ王の馬を盗んだ少年)だが、これは31章で錯乱した弟が語る話か。あとがきでヒントとして挙げられた「数字にはひとつひとつ、対応する言葉がある」という話もしているので、この章がキーとなるのだろうか…。 ところで、裏表紙のあらすじには「力強い感動をもたらす」や「暗闇で生きるあなたに捧げる」などと書いてあるが、寓話風の小説にこの手の紹介が付いていると途端に安っぽく感じてしまうのは私だけだろうか(『アルケミスト』然り、『星の王子さま』然り)。 確か川野芽生が読んでいたのを見て面白そうだと手に取ったのだが、このあらすじを見て買うか躊躇ったのを覚えている。私は「感動すること」自体に何の価値も感じないが、この本は何度読んでも面白いので結果的に買ってよかった。 - 2026年7月31日
バーティミアスソロモンの指輪 3 スナネコ編ジョナサン・ストラウド,Jonathan Stroud,松山美保,金原瑞人読み終わったいやバーティミアスがスナネコに化けてるの可愛すぎませんか!? おみ足でちょいちょいする仕草が良すぎてひっくり返った。かれは元々ネコ科に変身することが多いけど、こんなに可愛かったことは今までなかったでしょうが… 毒舌な丸顔ネコちゃんが活躍するのを見たい猫派の皆様はぜひ読んでください。 外伝の完結巻として、物語は文句なしに面白い。 ソロモン配下の妖霊たちの強さがインフレを起こしているために、力で遥かに劣るバーティミアスはひたすら機転で切り抜ける。今回の物語だけで何十体の妖霊から恨みを買ったかを思うと、3000年後の本編では、遭遇するのは因縁の敵ばかりになるのも頷ける。 今回の物語は、バーティミアスがナサニエルやキティ以外の人間とどのように関わってきたかが見えて良かった。人間への恨みつらみを零しまくる割に、様々な時代や場所の魔術師たちとの思い出話も多いよなあと思っていたが、何だかんだかれは人間と関わるのが好きなんだな。 特に『ゴーレムの眼』でフィジカルも負けん気も強いキティと再会した時には、きっとアズマイラのことが脳裏に浮かんでいたと思う。本編を読み返す時に深みを与える、良い外伝だった。 - 2026年7月30日
エーコ『薔薇の名前』図師宣忠読み終わった図書館で見かけて手に取ったところ、先日読んだ『カタリ派とアルビジョア十字軍』で解説を書いていた図師宣忠による本だった。あの解説は分かりやすかったな…と思い借りてみたら、この本もとても読みやすかった。内容が簡単なわけでは決してないが、文体が滑らかで論考の繋がりが明確なために読みやすく感じるのかもしれない。 昨年末に日本語訳の完全版が出た『薔薇の名前』を、史学の観点から読み解く本である。図師先生の専門は西洋中世史、まさに『薔薇の名前』の背景世界だ。 宗教的な背景に始まり、モデルとなった修道院や中世の写本文化、異端審問などについて語られており、『薔薇の名前』の世界をより鮮やかに思い描けるようになる。ただ、ネタバレには配慮していないので、中世やキリスト教の知識が全く無くとも、本編を先に読んだ方が良いと思う。 改めて、エーコがいかに膨大なテクストを再構成してあの世界を構築したのかを思い、気が遠くなった。 例えば、作中でのベルナール・ギー(実在した異端審問官)による尋問は、かれの記した審問マニュアル『異端審問官提要』に書かれた手法に倣っているというのが面白かった。こうしたディテールを積み上げ、知識の浅い私のような読者の前にも、中世の修道院がまざまざと描かれるのだ。 図師は『薔薇の名前』を、氾濫する断片的な情報を読み解き、そこから世界を再構築する書物として捉えている。これこそまさに歴史学の手法であり、インターネットの普及を経て拡大し続ける情報の洪水に翻弄される我々にとって、「文系」の学問を学ぶ意義にも繋がるのであろうと思った。 - 2026年7月28日
バーティミアス2ソロモンの指輪 ヤモリ編 (静山社ペガサス文庫)ジョナサン・ストラウド,松山美保,金原瑞人読み終わった理論社版のヤモリ編がReadsに登録されていなかったので、こちらをお借りする。 フェイキアールの供給ありがてえ…普段は知的で常識人なのに、人間への憎悪が深くて隙あらば食おうとする残酷さを急に出してくるとこが良すぎる。 コックになる前の定番の姿もおいしい…ジンが人間に変身する時は美形になりがちなのに、かれは大柄でふくよかな姿を好むんだよな。おそらく人間を油断させるためだよね…見栄を張る必要もないという自信に満ちたクレバーな男(男?)、良い… あと、フェイキアールがバーティミアスのことちょっと面食いだと思ってるの面白すぎた。確かに理由がなければ必ず顔立ちの整った若者の姿になってるもんな。 まあ顔はともかく、バーティミアスが勇敢で知恵と力に満ちた自己犠牲的な若者にやたらと甘いのは本当にそうで…てっきりプトレマイオスと出会ってからだと思っていたけれど、この頃からそうだったのは意外だった。 - 2026年7月26日
バーティミアスII ゴーレムの眼ジョナサン・ストラウド,松山美保,金原瑞人まだ読んでる根がオタクなので実に20年ぶりに再燃しちゃってずっとバーティミアスシリーズのこと考えちゃうよ〜! 重くて会社に持って行けないので、毎晩ご飯を食べながらちみちみ読んでいる。もっと早く帰って沢山読みたいのに… 2巻に入り、記憶の100倍くらい酷い寡頭制が敷かれていてびっくりした…労働者搾取と人種差別のキメラみたいになっている。 現実で起こる分断には人種、性別、階級、宗教など様々な要素が多層的に絡んでくるけど、この世界のロンドンではひたすらに魔術師と一般人の2層のみが存在するんだな。 単純化しすぎてる割に、中途半端に現実の歴史を反映しているので、「ん?」となるところも結構多いのだけれども…これだけ大っぴらに魔術が存在している世界線で、古代はともかく近現代が現実と似たような展開を辿ることがあり得るかね? 物語の本筋は整合性が取れていると思うが、宗教とかナチズムとかが現実と似たような感じで存在したらしき言及には、世界観が詰めれていないのではと思わせるところもある。 まあそんなことはどうでも良くなるくらいに面白いのだけれど! 一般人たちが魔術師に支配されることに疑問を抱かないようにして生きている(歯向かえば粛清されるため)描写などは、子供の頃には気づかなかったリアルさがある。 魔術師の見習いは家庭教師からあらゆる高度な学問を学ぶのに対し、一般人の学校では技術工作系の教科ばかりが奨励されているところにはぞっとした。一般人は工場や手工業の労働者になるためであり、学校は職業訓練の場でしかない。考えることやそれを言葉で表現することを学ばせず、従順で搾取しやすい人間をつくっている…ちょっとわが国に似ているな。 しかも、祝日には無料の食べ物や飲み物が振る舞われ、「娯楽省」(直截すぎて笑った)主催のあらゆるショーが行われる。歴史の授業で習う、少数の支配階級が庶民を従える方法を全部実践してます!という社会なので、高校生くらいで再読していたら味わい深かったろうなあと思う。 - 2026年7月25日
死んでよ、アモールアリアナ・ハルウィッツ,宮崎真紀読み終わった@ 本の読める店fuzkue 下北沢これまたインパクトの強いタイトル来たな…と思ったら宮崎真紀さんだった。『肉は美(うま)し』も秀逸だったが、最近の翻訳タイトルがキレキレでいいな。 原題は"Mátate, amor"、mátateはkill yourselfなのでストレートな訳ではある。ただ、「死ね」ではなく「死んでよ」というのが絶妙で、原題にある死への能動性がうまく訳出されている。 「死ね」では店頭でこのタイトルを見かけた人にも刃を向けるような攻撃性がありぎょっとするが、「死んでよ」は一見それよりマイルドに見せて、よく考えるとより生々しく恨みや呪いが籠もっているように感じる。前者は衝動的に発することも多いが、後者は相手への愛想が尽きたという印象が強いからだろうか。 内容としては、産後うつがメインテーマなのかな… 初めの数ページは「そんな夫捨てちまえよ!」と思ったが、徐々に、「あれ、これ主人公(妻、視点人物)の方が振り回す側か…?」と混乱してくる。読み終わる頃には、むしろ夫は精一杯やっているのでは、という印象に変わった。 主人公の視点が歪んでいるのではないか? 本当はこの人物はこんな意図は持っていないのでは? と常に疑いながらも、一気に読み切ってしまった。 この日は、フヅクエ下北沢で7月限定のパフェを食べながら。苦い物語も甘いものを食べながら飲み込んでしまった。
- 2026年7月24日
バーティミアス ソロモンの指輪 (1) フェニックス編ジョナサン・ストラウド,松山美保,金原瑞人読み終わった本編三部作の完結から6年後の2012年に外伝が出ていた。教えてよー!気づけないよー!! 残念ながらハードカバーでは出なかったのだね…でもこのサイズだと会社に持っていけるのは良い。これも今は静山社から文庫化されているそう。 本編より3000年ほど前、ソロモン王の取り巻き魔術師の奴隷になっていた頃のバーティミアスの物語。 まだプトレマイオスとも出会う前なので、バーティミアスの元々の性格が垣間見えて良い。まあ若い頃(2千歳)からずっと口達者で信じられないほど生意気なのは変わっていないというか…他のジン達と仕事をしていると、変わり者すぎて完全に浮いているのがよくわかる。読者からするとおもしれー主人公なのだが、連帯責任で巻き込まれる方からしたらたまったもんじゃないな… - 2026年7月19日
バーティミアス (1) サマルカンドの秘宝ジョナサン・ストラウド,松山美保,金原瑞人読み終わった再読実に15年ぶりくらいに再読。 小中学生の頃は何度も読み返していたが、大きくなってから読むとまた違う切り口で読めて面白かった!いやこの本は本当に面白いよ… 時は現代(1990年代後半くらい?)のロンドン、見習い魔術師であるナサニエルと、彼が分不相応に召喚した中級クラスのジンのバーティミアスの物語。 この世界の魔術師の扱う力は、複雑なペンタクルを描き、難しい呪文を正確に唱えて妖霊を使役することが中心にある。ペンタクルや呪文にほころびがあると、それが妖霊に対する隙となり、命を取られかねない。 魔術に対するコストやリスクがかなり高い世界だが、その分、それを行使できる魔術師は極めて強い権力を握っている。 子供の頃は「首相」や「国会」という言葉から民主主義社会をイメージしていたが、実際は魔術師による寡頭政治が行われており、一般人の地位は著しく低いことが今なら分かる。常に路上を監視している「光の玉」や夜間外出禁止令など、独裁あるあるな描写も多い。 大人も楽しめるシビアな世界観だが、バーティミアスの軽妙な語り口が、万人に読みやすい物語に仕上げている。かれは非常にお喋りなので、ページ下にちょくちょく注を挟む独特のスタイルで書かれているのだが、この世界の事情や歴史を補足してくれるこの脱線が本当に面白い。私が後に『白鯨』(語り手による注が信じられないほど長い)を好きになったのも、バーティミアスシリーズでこのスタイルに馴染んでいたからかもしれない。 ただ、バーティミアスの下ネタや皮肉は10歳の子供にはよく分からないものもあったので、当時の疑問を思い出してフフッと笑ってしまった。 今読むと、ある行動をきっかけに、バーティミアスがナサニエルを見直したことがよく分かる。ナサニエルはあまり変わらないのだが、バーティミアスの態度が若干軟化したことで、乱暴だが面倒見の良い兄ちゃん的な感じになり、二人がバディになり始めていくのが良い。 私は食料品店のバンを強奪するシーンが大好きなのだが、今回も先の展開を全部知っているにもかかわらずずっとクスクス笑ってしまった。終盤のテンポの良さはシリーズ屈指であり、シリアスとコメディの緩急の付け方が本当に上手い。 ところで、この理論社刊は表紙が本当にかっこよかった。都心の大きめの本屋の入り口に山積みにしてあったのに一目惚れし、母にせがんで買ってもらったのをよく覚えている。絵の部分がエンボスニス加工されていたり、カバー下が古ぼけた羊皮紙を思わせる装丁だったり、読む前から本当にわくわくした。重い本だが、家まで持って帰るのが全く苦にならなかった。 当時はハリー・ポッターブームもあり、こういう分厚い児童書が沢山出ていて良い時代だったな…今は静山社が文庫を出しているのを店頭で見かけたが、表紙がコミカルすぎて少しう〜んとなってしまった。 - 2026年7月13日
バーティミアス (1) サマルカンドの秘宝ジョナサン・ストラウド,松山美保,金原瑞人読み始めた再読精神がかなり落ちており、横たわってうめき声をあげる獣のようになっていたので、夜更かしして読み始めた。仕事など知るか 小学生の頃はカバーの端がよれるほど繰り返し読んだが、最後に開いたのは高校生くらいだったか… 最近、プラハや中東を舞台にした作品をいくつか見たせいか、バーティミアスのことをよく思い出していた。 冒頭の展開は台詞も含めてかなり覚えていたが、それでもなお大変に面白い。 改めて見ると、構成が上手くて驚いた。最初にバーティミアスが盗みに入る流れで、魔術の世界の構造や制約をあらかた説明している。大枠の提示が早いので、読者が作品世界に入り込む流れがスムーズだ。 それにしても、小学生の頃はあまり気にかけず読んでいたが、バーティミアスはずーーーっとプトレマイオスのことを考えてるのな。単にその姿にばかり変身するだけじゃなく、ガラスに映った顔に思わずにやっとしたり、ロンドンの気候をエジプトと比べて腐したり、人間をビビらせるために咄嗟に変身するのがナイルワニだったり… 冒頭から執着が強すぎるよ…本人視点でしか描かれないけど、これ周りのジンからは異常者か変態と思われてるでしょ… - 2026年7月12日
嘘つきアーニャの真っ赤な真実米原万里,長尾敦子読み終わった『オリガ・モリソヴナの反語法』があまりに面白かったので。表題作の冒頭をKADOKAWAの特設サイトで読んで、小説だと思って手に取ったのだが、米原のプラハ・ソビエト学校時代の同級生に関するノンフィクションだった。アーニャって実在の人物だったんですか!? 内容は『オリガ…』に負けず劣らず面白い。というより、『オリガ…』に出てくる個性的な同級生や先生たち、過去の記録を漁って真実に迫っていくプロセスは、ほぼ米原の実体験に基づいていることが実感できる。 米原が特に仲良しだった、ギリシア人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤスミンカにまつわる3編。どれも、少女時代のエピソードと、中年になった米原が彼女らの消息を尋ねてゆくパートで構成されている。 少女時代の話はユーモア全開で吹き出してしまう箇所もあったが、大人になってからの再会には思わず涙ぐんでしまった。 エッセイ的な面白さだけでなく、各国の子どもたちが通ったソビエト学校を内部から語る、時代の証言としても貴重な作品である。祖国を離れた子どもたち、特に亡命者など帰れない理由の強い子ほど愛国心を強く噴出させていた、という分析が鋭い。 一方、自分の親が属する各国の共産党とソ連との関係が悪化すると、子どもたちも学校で居心地の悪い思いをすることになる。多くの先生や同級生はなるべく気遣って過ごしてくれるものの、当の本人たちはその空気を敏感に感じ取っている。悩みなどせいぜい部活の人間関係くらいであった私の中学時代とは、何という隔たりだろうか。 大人になってからの再会パートでは、3人の祖国の政治事情や彼女ら自身の複雑な立ち位置に考えさせられることも多い。 特に3話目のヤスミンカの話は、ユーゴスラビア紛争の最中だ。民族と宗教が複雑に入り交じる国のあり方は、日本で限りなく支配的な地位にある大和民族たる自分には実感できないが、だからこそこれまで積極的に知ろうとしてこなかったことを恥ずかしく思う。 - 2026年7月12日
あの重い足音のにおいイブラヒーム・サミュエル読み終わったシリアの作家イブラヒーム・サミュエルによる短編集。各短編は独立しているが、どれも1980年代後半、アサド独裁下のダマスカスを舞台としている。 主人公は、前半は政治犯とされた人やその家族が多いが、後半は小学校の代用教員や、子沢山の労働者なども語り手となる。 生活の苦しさや政治的な抑圧を直接描くのではなく、それに対する人々の反応としての生活の一場面が主に描写される。特に、表題作「あの重い足音のにおい」や「レイヤ」に感じるじっとりした圧力は、読んでいて息苦しくなるほどだった。 原文では韻を踏んだ言い回しがちょくちょく使われているようで、訳注が適宜ついている。私はアラビア語が全く分からないので、付されたカタカナから想像するしかないが、円を描くような美しい響きが思い浮かんだ。 慣用句は日本語に訳されているが、原文ではどのような表現なのかが訳注に書いてあり(ジンに取り憑かれる→頭がおかしくなる等)、慣習や文化が透けて見え面白い。 訳者の石垣聡子と岡崎弘樹は、サミュエル自身に師事したとのこと。サミュエルとの思い出を語る石垣によるあとがきを読み、訳や注の丁寧さに愛情を感じた理由がよく分かった。 - 2026年7月9日
はじめての百合スタディーズ中村香住,水上文,近藤銀河気になる - 2026年7月5日
すぐわかるイスラームの美術桝屋友子読みたい昨夜アニメの1〜2話が放送された『天幕のジャードゥーガル』は、トゥースのイスラーム建築の描写が極めて美しかった。特にあの均整の取れたアーチの連なりや、中庭の木々に囲まれた噴水や薔薇のつぼみ… アニメのトゥースの場面は桝屋先生が監修されたとのことで、原作のトマトスープ先生がこの本を紹介されていた。 2年ほど前にグラナダやコルドバに行き、イスラーム建築に魅了されてしまったのだが、未だに何の知識も無いので、まずはこの本を足がかりにしたい。 アンダルシアには(キリスト教的な改修が加わってもいる)建築しか残されていないため、建築以外は見たことも無いのだよな… - 2026年7月3日
タコ セロリ アボカド長谷川あかり読みたい予約した実は5月くらいから楽天ブックスにタイトルだけのページが作られていたのだが(通知設定しているので気付いた)、漸くご本人から告知された…! あかりさんの本を買わない選択肢は無いので、一体どんなレシピ本なんだ…とわくわくしながら予約していたのだが、まさかのエッセイだったwww 話すのも書くのも上手く、自分の考えをはっきり持っている方なので、きっと面白い本になっているのだろう。 表紙のデザインもとても良い…! 楽しみ!!
読み込み中...