のーとみ "桃源亭へようこそ 中国料理店..." 2025年3月20日

のーとみ
@notomi
2025年3月20日
桃源亭へようこそ 中国料理店店主・陶展文の事件簿
友人が表紙描いてて、料理ミステリで、好きな陳舜臣作品なのに未読で、出てすぐ買おうと思ってたのに中々店頭で見掛けなかった本。ようやく買ってきました。 陳舜臣「桃源亭へようこそ 中国料理店店主・陶展文の事件簿」読んだ。陳舜臣のデビュー作で乱歩賞受賞作「枯草の根」で初登場した、中国料理店店主にして、明晰な頭脳で事件を解き明かす陶展文が登場する短編全六編に、料理小説の大傑作「幻の百花双瞳」を加えた陳舜臣生誕100年記念で編まれたオリジナル・アンソロジー。編者は神保博久、表紙はYouchan。実は、陳舜臣さんの作品は、初めて読んだ「秘本三国志」を始め、ほぼ歴史小説にしか触れてこなかったので、陶展文シリーズは初めて読んだ。「幻の百花双瞳」は、他のアンソロジーで読んでたし、日本を舞台にした現代小説も短編はいくつか読んでたけど。 1961年発表の長編「枯草の根」で登場した陶展文だから、本格ミステリではあるものの、今のミステリからすると、確かに古くさいし、謎もトリックもそれほど見るべきものはないのだけど、でも面白く読めてしまうのは、語りの上手さと、60年代から70年代にかけての、いわゆる「中間小説」と呼ばれる時代色風俗色の強いエンターテインメント小説というジャンルの豊穣さの中で磨かれた「面白さ」の技巧のためではないかと思う。梶山季之とか藤原審爾とか佐賀潜とか鈴木いずみとか阿佐田哲也とか、そういう凄い人たちが書き飛ばしていた大衆小説の、文芸誌が産婦人科の待合室にも置かれてて、駅のキオスクに新書版の娯楽小説が普通に売ってて、新幹線の車内で出張のビジネスマンが当たり前に小説を読んでた時代のエンターテインメントとしての「小説」の面白さが、今も全然色褪せていないことを、この短編集で再認識してしまった。 もちろん、ここに収められた作品が、どれも単純な犯人当て小説に止まっていない佳作揃いだということもある。縄三部作なんて、驚きは犯人の意外性よりも、何故そういう不可解な状況になってしまったのか、という点にドラマを仕掛けてあるし、「軌跡は消えず」のような、どういう事件が起こっていたのかを解き明かすという構造で読ませる作品もあって、パズラーではないけれど、クライムノヴェルとしての面白さは十分。ちょっとした笑いと少しのエロと厚いドラマ性をまとめて軽く読ませる昭和の中間小説のいいところが存分に発揮された作品集で、だからずっと面白いなあと思って読み続けてしまう。陶展文の長編も読みたくなってきたけど、その前に、神保さんの解説にも引用されてた陳舜臣・錦噸夫妻によるエッセイ集「美味方丈記」読もう。
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