
読書猫
@bookcat
2026年5月6日

第七階層からの眺め
ケヴィン・ブロックマイヤー
読み終わった
(本文抜粋)
“何分も、何時間も、<実在>が彼女のために船に乗って戻ってきてくれる日について考えた。<実在>は途方もなく音楽的な呼吸音で彼女にささやくだろう。指で優しくふれて、彼女を焦がすだろう。彼女の名前を口にして、彼女を空へと運ぶだろう。そして、二人は一緒に島から出発して、未来に対する輝くばかりの夢によって空間の層をいくつも通りすぎていくだろう。”
(「第七階層からの眺め」より)
“アクィナスはそのときまだ五十歳にもなっていなかったが、その数ヶ月後に死ぬことになる。著述をあきらめた理由をレジナルド修道士に問われると、彼は答えた。「私はもう書けない。私の著作すべてをつまらぬものにするものを、見たのだ」”
(「思想家たちの人生」より)
“他人の家というものは、本質的になにか物悲しい。どの部屋にも他人に属する品々が無数にあり、そのだれかさんの日常生活の存在が感じられる──電灯や敷物、蔵書や食器類などがすべて一緒くたになって、小川が大地へと吸いこまれて干上がるのとおなじくらいゆっくりと、うつろに、時間をすごす。人はそんな小川の底を歩くこともできるし、流れによって削られた跡をたどることもできるが、水は一滴たりとも味わうことができない。”
(「壁に貼られたガラスの魚の写真にまつわる物語」より)
“私は自分をだれかに引き渡さねばならないのです。すすんで私を受け入れてくださるだれかに。私は愛することが足りませんでした。エネルギーの行き場がないのです。”
(「ジョン・メルビー神父とエイミー・エリザベスの幽霊」より)
“このときから数千年かかって、人類は死者の肉体から記憶を回収する処置を開発することになる。そのときまでに、あなたが生きていたころのことは、野蛮で粗暴な物理的破壊の時代として思い起こされるようになり、退廃的文化を扱う歴史家の興味しか引かなくなっている。しかし、科学的研究という名目で、あなたのいた世紀の遺体が記憶再生ように発掘されて、その中にあなたのものも入っている。”
(「ルーブ・ゴールドバーグ・マシンである人間の魂」より)
“自分の人生について考える時間はたくさんあり、アメリカ人がカメラで空中に穴を開けて、向こう側から光が注ぎ込まれてきたあの日、私が得た洞察は錯覚ではなかった。あの瞬間、神はその視線を私に注いで、私はそれにさらされた。私のある部分は、ひっそりした生活を永遠に奪われたのだ。”
(「空中には小さな穴がいっぱい」より)
