いるかれもん "イノベーションの科学" 2026年5月16日

イノベーションの科学
イノベーションというのは創造的破壊であり、その名の通り新しいものが想像されるとともに、それによって破壊されるスキルもある。想像の恩恵は時間をかけて社会に広く広がっていくが、破壊される方は局所的に、しかも短時間で破壊される。そのためリスクが破壊される側はイノベーションに抵抗する場合もある。その上で、健全なイノベーション創出のためには、リスクの分散が必要というのが大筋。個人レベルでできる、リスク分散の方法としては自分が今持っているスキルとは異なるスキルを身につける、結婚して共働きにするなど言わればそうだよなという感じだったのだけれど、面白かったのは、今の自分のスキルを陳腐化するスキルを身につけるという点は確かになと思った。あと、自己責任の問題について取り上げていて、もともと責任とは「他者に対する責任」であったが、あるときから「結果としての責任」に変わっていたという話は、『中動態の世界』にも通じる話で面白かった。著者は使用していないが、「ケア」がこの本の裏テーマにもなっている気がする。イノベーションというのは経済発展のために必要である一方、ケアは経済とは相いれないようなイメージだった。しかし、健全なイノベーションを生み出すためにはリスキングとしてケアが必要というのが私なりのまとめ。イノベーションとケアが相補的な関係なんだなと新たな発見をした気分。あと、あとがきが面白かった。「イノベーションって幸せにつながるのですか?」という学生の疑問からこの本が生まれたらしい。学生の疑問に真摯に応え、本まで書いてしまった著者が素敵だと思う。
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