
碧衣
@aoi-honmimi
2026年5月19日

蜜柑
芥川竜之介
読み終わった
『砂の器』の作中に本作の名前があったので、気になって青空文庫で読んでみた。
曇った冬の日暮れに横須賀発上り二等列車に座る私。
そこに乗り込んできた三等の切符を手にした田舎者と思しき少女。彼女の姿や弁えのなさに腹立ちを覚える私。
平凡な出来事ばかりの世間と娘の「卑俗な現実を人間にしたような面持ち」から「不可解な、下等な、退屈な人生の象徴」と切り捨てる。そんな私に対して何様だこいつと思ったが、私自身がその不可解な、下等な、退屈な人生の一部であることに気づいているが故の嫌悪なのではないかと思った。
そんな少女が窓から放った蜜柑の鮮やかさ、その瞬間の美しさが私の疲労と倦怠をこの時ばかりは忘れさせるというのは偉そうな言い方になるがいい出来だなと感じた。

