
紫嶋
@09sjm
2026年5月21日
金木犀とメテオラ
安壇美緒
読み終わった
借りてきた
北海道の新設私立女子校の一期生として入学した少女たちの、青春と葛藤の日々の物語。
メインとなる二人の少女は、成績首位を争う学年のツートップ。しかしそれぞれに、家庭環境の悩みや、自身のプライドと現実との差などに喘ぎ、苦しんでいる。
周囲からは「なんでもできる天才」「才色兼備のマドンナ」であるように一目置かれている彼女らも、本人たちは溺れそうになる現実の中で必死に水面を目指すようにもがいている。そしてそれを他人には悟らせず、血の滲むような努力を重ね、しかし内心ではギラギラドロドロと感情を燻らせたり、時に他人を「自分より恵まれている者」だと勝手に決めつけ蔑んだり羨んだりもする。
十代の、まだ狭い世界の限られた選択肢の中で生きているからこその、じりじりと足場がなくなっていくような窮屈な焦燥感が描かれており、大人から見ても苦しそうだなと感じる。
そんな「悩める少女」たちを、決してキラキラした青春の1ページというだけで美化することなく、醜い部分も含めて描かれているのがよかった。
また、そんな彼女らを取り巻く等身大の友人たち、人の良さが伝わってくる寮母、時にそっとヒントになるような一言をくれる先生といった存在も、良いアクセントや癒しとなっていた。
この作者の作品は、まず『ラブカは静かに弓を持つ』を読み大変面白く感じたが、それを受けて期待を込めて読んだデビュー作『天龍院亜希子の日記』は残念ながらまったく面白味を感じられずにいた。
この『金木犀とメテオラ』はその二作の間に書かれた作品にあたるが、こちらは物語や人物に厚みがあって、とても良い作品だったなと思う。こちらの方が、デビュー作よりも作者本人の本来の持ち味が発揮されているのだと思う。
ただ、たとえ植生が本土と少し異なる北海道であっても、さすがに春に金木犀が咲くことはないと思う。おそらくそこには特別な意味はなく、単に作者の勘違いによるものか。
金木犀が根付くことが一つ大きな奇跡として象徴的に使われている分、咲く季節の設定を盛大に誤ったままなのはもったいなかった。
