
May
@May_05
2024年12月31日

天路の旅人
沢木耕太郎
かつて読んだ
西川一三氏が残した記録とインタビューをもとに、著者が25年の歳月をかけて、壮大な旅を通してひとりの旅人の人生を書き上げた一冊。
西川氏は「第二次世界大戦末期、25歳のときに日本陸軍の密偵として中国大陸へ潜入し、終戦後もインド・ネパールなど、8年に渡って旅を続けた人物」とのこと。
多分自分は、このような内容だけではあまり興味を持てなかったと思う。
まず著者に興味を持った事がきっかけだった。
恥ずかしながらこれまで著者を知らずにきたが、NHKクローズアップ現代のインタビュー内での発言やうかがえる人柄などから著者に惹かれ、その著者が「どうしても描きたい」と思った西川氏について私も知りたいと手に取った。
お金も、頼る人も、国のバックアップもない。
しかし、それがとても純度の高い旅だと。
旅の中で言葉を覚え、働き、ひとつずつ生きる手立てを身につけ、その力によって切り拓いていく彼の姿が描かれている。
最後の章で、雪の中へ消えてゆく西川氏の描写が印象的だった。
旅立つ若き日の西川氏と、旅を終えて家族の元へと帰る西川氏。
著者によってその描写が旅をより壮大に、ロマンチックに演出されていると思う。
読み終わったとき、自分もひとつの壮大な旅を達成したように感じた。
そして、私の思う「旅」とか「自由」は、鳥かごの中のものに過ぎないのだと改めて知った。