@s_ota92
2026年5月24日
p18
「「私、夢で見たんだけれど、発表を聴いている人が、みんな、国枝先生なの。」」
p30
「「いえ、それが、その、シールには、荷物の依頼主として、G・O・S・I・Pと書かれているだけです。」」
p31
「「これって、キウイじゃない?」」
p39
「「あらぁ、これ、キウイ。」」
p50
「「あるいは、そうですね……、文字だとしたら、γですか。」」
p60
「「秘密の逢引だよね。」」
p67
「キウイにギリシャ文字のγのサインがあった、というのである。」
p69
「しかし、ほんの僅かに引っ掛かるものがあったので、いちおう、彼に連絡をしておこうか、と考えた。」
p74
「「そうか、海月君、西之園さんの研究室なんですね?」」
p80
「そして、驚いた。島田文子とある。その名前を、犀川は記憶していた。ずいぶん以前に会ったことがある。」
p83
「真賀田四季の名を聞いても、まったく動じない。驚きもしなかった。そういうことなのだ。」
p85
「「ええ、そう。みんな喜んでやっているけれど、利用されているって、どれくらい気づいているかしら。私はやらない。利用されるよりは、利用する側に回りたいから。」「僕もやりません。でも、常に見ています。」「同じ。SNSもね……、まるで家畜。」「そこまで酷くはないでしょう。」「餌はなにかしらって、思わない?」「何でしょう。つながりたいんですよ、人間というのは。」「そうそう、絆ね。絆って、牛をつないでおく網のことでしょう?」「ネットというものが、元来そういう装置なのでしょうね。」「人を縛りつけておく装置?」「そうです。」」
p89
「「国枝先生が、どうおっしゃるでしょうか?」「いや、言わない。ただ、じっと睨むだけだ、横目で。まあ、言うとしても、ご一緒ですか、くらいだろうね。」「いいじゃないですか。ごく普通です。」「普通ほど怖いものはない。」「国枝先生に取り憑かれているみたい。」「そうかもしれない。だいぶまえからだ。彼女がC大に行って、会う機会が減ったんだが、よけいに恐くなった。」「怒られますよ。」「怒られたくないなぁ。」明らかに犀川は面白がっている。西之園も、面白かった。」
p91
「アボカドだったら、六かける十の二十三乗だ。」
p93
「今は自分も研究者として独立したので、国枝からは論文の連名を断られた。これは、犀川研の伝統らしい。」
p95
「今は、もし答えられない質問が来たら、それは素晴らしい課題に出会えたと素直に歓迎できる。」
p100
「「あ、そう……。私もたまに、それ、言われるな。名前でわかったって。」」
p108
「ところが、その低いガラステーブルの上に、キウイが一つ置かれていた。普通のキウイではない。プルトップの金具が刺さっている。」
p112
「キウイといって思い出すのは、この大学の講堂のホールの床の模様だった。それは、キウイをデザインしたものではなかったらしいが、色も模様もキウイフルーツの断面そのもので、皆がその場所をキウイホールと呼んでいる。」
p114
「左手には、キウイを持っている。」
p116
「もう動かなくなっていた学長の横、床にキウイが転がっていた。」
p139
「誰も手を挙げなかった。このまま終わってくれ、と加部谷は思ったが、突然一人が手を挙げた。それは海月及介だった。」
p141
「「お疲れ。」国枝は、加部谷の頭を撫でた。」
p144
「自分に向けられた優しさだと勝手に解釈すれば良いではないか。それだけで自己満足すれば良いではない、と考えようとした。」
p154
「加部谷のセットにはフルーツサラダがついていて、そこにはキウイの輪切りが入っていた。」
p161
「「来ると思ったぁ。懐かし懐かしじゃない。西之園さん。うわぁ、またまた、清楚なお召し物で。」」
p162
「「ね、それで、犀川先生とは、どうなったの?」「えっと、その話は……。」「犀川先生も、教えてくれないのよ。なんか、もぞもぞするだけで。」「ええ、そういう感じです。」「どういう感じ?」「もぞもぞとした感じです。」「わからないよぅ、そんなんじゃ。」「あの、それはまた、別の機会に、きちんとしたら……。」「何?きちんとしていないわけね。」「ええ、まあ……、そうです。ご想像にお任せします。」「すっごい想像しちゃうよぅ、私は。」島田は笑った。」
p166
「「島田さんの中にも、まだそのスイッチがあるのですか?」「あると思う。貴女だって、あるんじゃない?」「私?でも……。」」
p169
「「えっ、犀川先生がですか?」「貴女も。」「私も?どうして?」「恐くない?」「何がですか?」「怖くないってだけで、もう普通じゃないよ。」」
p181
「そのときの燃え残りのような、微かな熱と香りが、今も彼女の胸にあった。灰に近い、形のない気持ち、知らないうちに片隅に追いやられた小さな記憶だった。」
p208
「「先生、朝は、お茶漬けを召し上がりたいのですか?」「いや、お茶漬けも食べたくない。うーん、どちらかというと、シリアルに牛乳をかけて、うん、それで充分だね。」「もしかして、今でも、そうなさっているのですか?」「滅多に朝は食べないし、食べるときは、そうだね……、けっこうシリアルかな。」「ああ、そうですか……。」溜息が漏れる。「どうして、溜息を?落胆したみたいだね。」「ご用意のし甲斐がありませんね。」「誰が用意するって?」「私ですよ。」「あそう……。」「なにか?」「いや……。」」
p212
「「言葉にしなきゃわからないって、おっしゃったじゃないですか。」「そんなこと、言ったかな……、ああ、言ったね。でも、今は、わかる。」」
p214
「正義によって真実が突き止められると信じていた子供の自分が、今では愛おしいけれど、でも、それはやはり正義ではない。正義というものは、それほど単純ではない。今は、少しそれが理解できつつあった。」
p215
「「どうして、アボカドじゃないのかな。」犀川は呟いた。「やっぱり、そこですか?」西之園は吹き出した。」
p216
「もっとも、犀川研は、伝統的に集団行動を避ける傾向にある。
国枝研究室は、さらに輪をかけて個人主義だし、西之園研究室もその伝統に倣っているのかもしれない。」
p218
「でも、それは単に、少し妥協しているだけのことで、この妥協は、結局は、人から嫌われるかもしれないという小さな損を、自分が我慢をするという小さな損と交換しているだけのことなのだ。どちらも、小さな損だ。」
p249
「普通のキウイだが、リングが光って見えた。プルトップが刺さっているようだ。」
p263
「「そういえば、犀川先生も、煙草を吸われたいのでは?」「あ、いえ、やめました。」」
p268
「「西之園君が言った、靴を脱いでいたことは、かなり重要だと思います。」犀川はそうつけ加えた。「でも……、まあ、一番不思議なのは……。」」
p268
「「どつして、前日に、蔵本先生を撃たなかったのか。」」
p269
「「天井は、何でしたっけ?」「は?どういうことですか?」刑事はきき返した。「西之園君、覚えている?」「はい、吸音ボードの、普通の白い天井でした。」西之園は答えた。」
p274
「「君は、もう二つ質問をさせてほしい、とは言わなかった。自分の発言には常に責任を持ちなさい。」」
p282
「西之園博士の跡を、きっと犀川や西之園萌絵が引き継いでいるのだろう。それをまた、山吹や海月が引き継ぐのだろうか。」
p289
「「一つあります。」海月は言った。「どうして、犯人は、最初の日に、二人を撃たなかったのか。」」
p289
「「うん。今のそれね……。」西之園は、海月を指差した。「犀川先生が、まったく同じことをおっしゃった。」」
p290
「「えっと、犀川先生をたった今思い出した、日本に来たときに案内をしてくれた少年だった。もちろん、ドクタ・サイカワという研究者は知っていたが、まさかあのときの少年だとは気づかなかった。ドクタ・ニシノソノは、後継者に恵まれた。そんな話でした。」」
p302
「「正論には従う。」」
p302
「「違う人間だからだよ。」」
p302
「「僕の考えを聞いても、意味はない。真実は、推論の中から生まれるんじゃない。現実の観察から明かされるものだ。」」
p316
「ふとデスクに目をやると、奥の本棚にキウイがあった。」
p326
「「少しずつ割れたんだに、きっと。最初はちょっと割れて、次にもう少し割れて、最後で粉々になった。」」
p331
「「相変わらず、愛想のない奴。」国枝が言う。「あ、今の……、先生、ジョークですね。」西之園が指差した。「久しぶりだわ。」国枝はむっとしていたが、言い返さなかった。口に手を当てて笑っている西之園以外、山吹、加部谷、雨宮は一瞬何が起こったのか、と言う顔になった。」
p333
「「まあ、一つ確かなことは……。」西之園が三人を順番に見据え、真面目な表情で言った。「国枝先生の機嫌がとんでもなく良いこと、だね。」「さあ、もう行かない?」国枝が笑いもせず言う。「食事を奢ってあげる。」」
p337
「「つまり、自分の身を守る本能とまったく同レベルということになるわけだから、親が子供を守るのは、自分が自分を守る、つまりエゴと同じで、なにも美しいことじゃない、むしろ自己中というか、はしたないことと言われてもしかたがないレベルじゃないですか?」」
p339
「「でも、そうやって、近づいたかなって信じられるものが、真実という言葉の意味じゃない?」西之園は答えた。「幻想といえば、幻想だけれど。」」
p356
「「こういうネストって、初心者が作ったプログラムで、よくなるよね。」」
p357
「「うん、今度は、また、おもちゃ会社。でも、ゲームじゃないのよ。お人形を作っている中小企業。」「へえ……。そうなんですか。東京ですか?」「違うの、日本じゃないの。香港。」「あ、じゃあ、遠くなりますね。」「そんなことない。日本の田舎の方が遠い感じじゃない。それに、ネットがあるから、関係ないし。」」
p358
「「会いたいと思えば、会えると思うな。」」