@s_ota92
2026年5月25日
p17
「名刺のサイズで、真っ黒だった。裏返すと、白いフォントで<χ>の一文字が中央に慎ましく記されている。」
p25
「「各務さんなら、えっと、ええ、知っているかもしれない。」」
p31
「「エックス?」彼女は目を見開いてしまった。」
p34
「目の前に、本物の真賀田四季がいた。世界を揺るがすほどの存在。年齢は、島田とそれほど変わらない。ドイツ人の血が混ざっているが、黒髪の日本人。世紀の天才プログラマ、真賀田四季が、部屋の中で待っていた。」
p39
「犠牲となった乗客の中に、N大学総長・西之園恭輔の名を見つけたのだ。夫人もなく亡くなっている。これは、あの西之園萌絵の両親か。」
p42
「えっと、変な先生がいたじゃない。えっと、そうそう、犀川先生だ。シャアみたいな……。」
p43
「そうなったや、その英知はあらゆるものに組み込まれ、意識さえされなくなる。存在さえ忘れられてしまう。世の中は、こうしてどんどん中心に集まり、回転数を上げているようだ。」
p46
「このように、さきざきのことまでつい考えてしまうのが、彼女のような仕事の職業病といえるかもしれない。」
p55
「赤い文字は、<X>に見える。」
p68
「「電車の中で?うーん、あ、オリエント急行殺人事件か。」」
p82
「得るためには与えなくてはいけない、というのがスローガンのようだ。」
p95
「以前から島田の中で眠っていた根深い因果が、突如覚醒したのだった。」
p113
「四季語録のようなものがいつの間にか出回っていたから、それを読んだのだ。」
p118
「「レッドマジックですね?」」
p125
「「コワシヤ。」」
p146
「「ミナス?何それ。マイナスのこと?」」
p150
「「そう。ここが私の世界だ。」」
p152
「この世界の達人が残した格言がある。「評価は別のところがする。そんなものに惑わされるな。」」
p160
「使われたパスワードを探すために処理したところ、<longstreet>が見つかった。」
p175
「天才とは儚いものだ、と皆が語った。そうして、自分たちの社会を守ろうとした。天才は寂しいものだ、と皆が感じた。そうすることで自分たちを慰めたのだ。しかし、それは希望的観測でしかなかった。天才は、大衆が望まないほど大きかった。天才は既存の社会を守ろうとはしなかったし、また、少しの寂しさも感じていなかった。そのことに大衆が気づくのは、いつだろうか?」
p180
「「シ・マ・ダ・さん。」」
p193
「ミナス・ポリスとは、<月の街>という意味になる。」
p199
「「ええ、夢の中で腹ごしらえしておかないと、目が覚めてから頑張れません。」」
p204
「「エックスさん?」」
p207
「「物事をできるだけ正しく認識したいだけです。」」
p262
「「実際に飛行機に乗った二人が実行犯だと思いますが、彼らに名前を貸した、という意味で共犯であることはまちがいない。こそらく、私の両親のパスポートを持った人物が自爆したのです。主導的な立場だった可能性はありますが、それは証拠がありません。」」
p265
「「西之園博士です。」金は即答した。」
p267
「「うーん、じゃあ、それは譲りますけれど……。でも、私が納得がいかないのは、やっぱり、大勢を犠牲にしたという点ね。ありえないと思うわ。博士は、そんなことされる方ではありません。博士が殺したのは、すべて身内の方たちでした。ご自身の内部だと認識される方しか殺していないんです。つまり、自分の人格の一部を殺す。博士にとっては、自殺と同じなんです。他者の命を奪うということは、絶対とは言いませんけれど、ええ、たとえ真賀田博士であっても、簡単にできることではないと思います。」」
p268
「「真賀田博士は、まだ小さかった頃に、西之園博士にアメリカで会っています。そのとき、彼のお嬢さんも一緒だった。のちに、このお嬢さんは、真賀田博士に一人で会いにいきました。二人の間に強烈な印象があったのではないでしょうか。博士は、このお嬢さんのことを意識していました。どこか自分に似たものを感じたのではないかと想像します。自分が両親を殺したように、そのお嬢さんも両親を失ったら、どうなるだろう。その反応が見たかった。」」
p269
「金は言った。「実は、私も、そのお嬢さんをよく知っています。島田さんよりも、知っていると思いますよ。」」
p270
「「私を見つけ出し、私を殺すことが目的だったのでは?」カイがきいた。」
p270
「「それに近い感情を持っていた。」金は頷いた。「初めの頃は、もしかしたらそういった熱いものを持っていたと思います。若いときは、頭に血が昇っている。でも、今は違う。全然違う。たとえ、実行犯本人を見つけても、復讐するつもりはありません。ただ……、そうですね……、言い分を聞く。それだけかな。話が直接聞ければ、納得ができるかな、と考えていた。しかし、結局は、それもエゴだ。納得ができるはずもない。私は、あの飛行機事故で、姉を亡くしたのです。」」
p284
「金とカイは、世間話をしていて、最近の政治や国際情勢など、かなりインテリジェントだった。」
p285
「お昼まえに、日本科学大学に到着した。」
p289
「「今は、<ミナス・ポリス>というプロジェクトの話を聞きました。」金は言った。」
p291
「「いえ、ないと思いますよ。私も、こんなことからは、もう足を洗うつもりです。」「どうなさるの?」「それは、内緒です。」金は微笑んだ。」
p291
「「奥様はいらっしゃるの?」島田は尋ねた。「おります。」金は答えて、片手を伸ばした。島田は微笑んで握手をした。」
p293
「システムに侵入できるなら、なんでも可能であって、基本的に不可能ということはない。データ上であれば、死んだ人を生き返らせることだって……。」
p293
「「やっぱり、もう一度、真賀田四季に会うこと。」」
p295
「自分は一人で生きていくのだ、という気持ちが少々弱まっていることを自覚して、もう一度、自分にネジをまいた。」
p299
「あのロボットが殺人犯だ。」
p303
「遠田は、ドラムのカメラで顔認証され、ロボットは、<kowashiya>という彼の極秘データを参照しただよう。これをブレーカと訳したのか……。そうなると、この規定の文字のとおりになる。ブレーカを殺せ、と規定されているのだ。」
p304
「知ってしまったけれど、納得できるという気分ではない。世の中の問題の多くはそういうものだ。疑問が解決すれば、また別の疑惑が生まれる。」
p308
「「大丈夫よ。もうすぐだから。」」
p316
「「ああ、けっこうさ、面白い人生だったよねぇ。」」
p317
「行きたいところは決まっていた。ミナス・ポリスだ。」
p319
「「ありがとうございます。お待ちしていました。」島田は泣きながら言った。」
p319
「「生きているうちに、博士にもう一度だけ、お会いしたかった。」」
p319
「「私は、生きてきたのでしょうか?」「生きていたのよ。」「どんな人間でしたか?」「貴女は素晴らしい才能を持っていた。天才だった。私は貴女が好きよ。」」
p320
「もう、言葉にならず、島田は声を上げて泣いた。良かった……。ただ、ただ、良かった。」
p321
「「そんな不可能を、科学は消し去ってきました。」」
p322
「目が次第にクリアになる。目の前の姿をしっかりと見ることができた。想像していたとおりの姿。以前に見たままの姿だった。美しく。綺麗。人形のように。人間のように。」
p323
「「そう。そのとおりです。その問いが、すなわち命なの。」」
p324
「白いドレスを着て。目は青く。黒髪に白いリボン。島田は、その前に跪いた。「貴女は、誰?」それを尋ねたのは、自分なのか、それとも少女なのか、わからなかった。」
p325
「入ってきたのは、長髪で顎髭、そしてメガネをかけた初老の男だった。」
p326
「カイだ。」
p331
「「もう一字。下は、ミナスです。」」
p332
「「質問は、二つでした。では、失礼します。」カイはお辞儀をした。」