瀬戸内
@setouchi
1900年1月1日
改訂完全版 奇想、天を動かす
島田荘司
読み終わった
読み終わったあと、しばらくぼーっとしてしまった。
頭は働かず、感傷が残った。
しばらくして己を恥じ、思い込みは大切なことを欠如させてしまうのかもしれないと思った。
物語は年号が平成にかわり、消費税が導入した直後。
その日暮らしのホームレスが小さな店で消費税を払わないまはま物を持ち、追ってきた女主人が人通りの多いなかでその心臓をナイフで刺したことから始まる。
消費税導入による衝動的な殺人かに思えたが……?
事件のあらすじは以上のようなものだが、
実際に物語を期待させるのは本書の冒頭。
昭和、北海道の列車のなかでピエロが現れ、奇怪な踊りをして車両連結部に向かった後、
銃声が響き、床には炎が灯された蝋燭でひしめくトイレのなかでピエロの男の死体があった…というくだり。
小説の始まりとして、何か数奇なことが起きることを予感させるとても面白い導入。
同作者の占星術殺人事件の冒頭から結構なページ数を難解な文章を読ませるのに対して(そのあと読み進めるととてつもなく面白いのだが)
此方は掴みが完璧だった。
昭和の奇怪な事件と平成の刺殺事件という平行した事件が交じり合い、読むのが止められなくなった。
それは可能なのかと少し気がかりな部分がないわけではないが(大抵のミステリーはそんなもんなので細かいことは気にしない!)
広げた風呂敷をきちんと畳み、
真相が解明され、人間の半生が語られた時、やるせなくなってしまった。
それに直面した主人公が示した感情に読者も共感してしまうのではないかとも思う。
奇怪な事件、トリック、作風、
そして占星術殺人事件でも切なさややるせなさ、悲哀といったものが素晴らしかったが
本作も読み終わったあと、読み手の襟を正してくれるような心地にさせてくれる。
そんな話でした。



