
六
@69rikka
2026年5月29日

いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)
ミランダ・ジュライ
読み終わった
子供の頃よく嘘をつく友達がいて、良く見せようとするとか騙そうとするとかそういうわけじゃなくて、自分の中の世界と、実際の外の世界とが、どうしてもうまく噛み合わないという感じだった。自分の頭の中では誰それちゃんと仲良しで、だから他人にもそう言うんだけど、実際には誰それちゃんとは一言も話したことがない、でも本当に友情を感じているから誰それちゃんに気軽に話しかけてみせて、怪訝な顔をされる……みたいな。「ムーミン谷の彗星」で、スニフが猫を自分のものにしたいあまりに「猫を飼っている」と得意にほのめかすシーンとか、ああ言う感じ。その友達だけじゃなくて自分にもそういうところがあったと思う。
短編集なんだけど、まさにそういう人々、自分の中の世界と外の世界が噛み合わない、他人から見たら妄想としか思われない世界をただ生きている人々、の話が多かった。しかもその妄想の多くはセクシャルな欲求と結びついている。自分の中の世界が外の世界を書き換えることを望んでいるけれど、それは決して起こらない。「いちばんここに似合う人」のはずの自分がつねにゆるやかに弾き出される。あの子は今も嘘をついているだろうか、それとも外の世界とうまく折り合いをつけたのだろうか。
「ロマンスだった」「十の本当のこと」「あざ」が良かった。
