メルキー
@dogandbook
2026年5月30日

人は犬から何を学ぶのか
増田宏司
読み終わった
ポピュラーサイエンス
2200円安すぎる!と思うくらい内容が濃い濃い濃い。2026ベスト本の仲間入り。めちゃくちゃ良い本。色々な賞賛の言葉で埋め尽くしたい。
こういう本で泣くとは思わなかった。伝わりすぎました。読んだら著者のファンになるだろう。
動物行動学というテーマがありつつ、学問そのものの魅力についても語られていて、なぜ勉強するの?というよくある問いの一種の答えも書かれている。
しつけなどで有用な情報も盛りだくさん。系統的脱感作は実践したい。
特に第三章は、しつけ本かと思うほど有用な内容ばかり。根本的な考え方が紹介されているから汎用性もある。
そして、犬にとっての幸せを無視することなく人間社会で相互に幸せに暮らすためのしつけ方法に重きを置いているのが、愛情を感じられてとても良い。結果に見える行動は人間からしたら同じでも、回避型と報酬型のしつけをそれぞれ受けた場合の犬側の視点でも考えること。
しつけをするときは犬や猫の問題行動という言葉が使われるが、この言葉に対して消極的な姿勢。問題行動と一言で表す中にも、動物の本来の行動様式の範疇内のものもあるが、それが人間にとって都合の悪いだけで問題行動と言って無理やり矯正することがあるのが良くない。
行動治療では動物に直接的に対峙するのではなく、飼い主の意識変革をして動物への態度や行動変えることで、飼い主と動物の関係の改善をする。
犬側に問題を探すのではなく、犬と人間との関係に焦点を当てる。
専門的な内容寄りなのに、こんなに著者自身の魅力的な人間性が分か文章があるのか。
著者がローレンツのことを「いつまでも動物のことを理解できない人間を哀れに思った動物の神様が、代弁者として地球によこした天使」と表現したの大好き。
専門用語もたくさん使われるが、全てに()付きで説明がついているし、もっと詳細に説明なものは注釈でわかりやすく解説されていて、一般読者向けに丁寧に気遣いのある書き方。本当にこの学問を知って欲しいという気持ちが伝わる。その上から目線でない姿勢が読んでいてとても心地よい。
巻末の参考図書、文献にも一つ一つにコメント。
節々から、著者のこの学問への愛情と先人たちへの敬意を感じる。先人たちのことを師匠と呼び、スーパースターと呼ぶ。
「ローレンツ、ティンバーゲン、プリッシュの3人は、後輩たちの活躍を、目を細めて見てくれているだろうか。」
もちろん、犬への大きな愛情を節々に感じる。と同時に、タイトルからも分かる通り、犬を愛情を向けるだけの動物ではなく敬意の対象として捉えているのが分かる。
著者はおちゃめな方なのだろうなと想像できる。
「大学生が犬のようだと言っているわけではない(ならばもっと純粋に可愛がっている。教育は塩梅が難しい)」
「私もなかなかにヒューマニスティックである」
「近所に猫の集会を見つけて以来、ここ10年ほどその周回に時々参加しているが」
「講義期間の前半〜最後にかけて、真面目からさぼるようになり悪い成績をつけられると文句を言う学生に対して子犬にしか見えない。含み笑いをしてる時は心の中で犬によくつける名前を当てはめようとしてるかもね。」
「あれもこれも書いておかなくちゃ状態になっているが、改善するつもりはない。専門家も人間だ。」
オペランと条件付けの必要性を説明するための前置き「いったんしつけがみにつくと、その後の生活は幸せの隕石(色はピンク)が毎日頭上に降ってくるような感覚。〜この生活(詳しく書くと本2冊分くらいにはなる。)」
参考文献の国語辞典「ルーペと辞書があれば、老眼でも私はわりと強い」
犬と猫の飲水効率の違い。
「母性による手加減なしの攻撃は、利他的行動の代表格であると言える。精神的レベルでは子を守ることは自分を守ることとほぼ同義、すなわち利己的にも違い。」というのがすごく面白い見解。
猫が社会性が不明瞭でも人間と暮らしていける要因についての見解が面白い。
「他者に影響されない自身の生活パターンがしっかり決まっていて、それを基準に物事を判断しているからという仮説」
新聞の「犬は色んな生き物と仲良くなれる動物」を読んでのエピソード。
4-4-1 犬種によって行動特性に違いが出るのはわずか9パーセントで、それよりも年齢や性別による違いの方が大きい
→びっくり情報!
最終章も良すぎる。学問を信じてやまない気持ち、学問への希望、愛。熱い気持ちをダイレクトに感じて泣きそうになってしまう。
おわりに
本書で紹介する内容ごとに師匠との思い出がよみがえり、年甲斐もなく泣きながら書いた。
参考文献のコメント
13.お気に入りの学問が見つかれば、とたんに人生は豊かになる。
その他4.メイ・ウェストの言葉

