
octo
@mothmanoir
2026年6月2日

蛇淫
中上健次
読み終わった
1976年『岬』で芥川賞を受賞する前後に書かれた作品が収められた短編集。かつての「路地」の記憶に捕えられた人々、血縁や地縁で雁字搦めの世界観、そして暴力。後の『枯木灘』以降の中上健次を予告するようなオブセッションに満ちた作品集だが、これらの作品を後に確立されるスタイルの前哨戦とのみ見做すのも味気ない。『蛇淫』に始まり、若い男の暴力的な青春にはどこか爽やかさすら感じさせるものがあり、それはこの時期の中上健次に特有のものかもしれない。後に展開される、修飾語で埋め尽くされた密度の高い文体に比べると、さらりと読みやすい、紀州弁がアクセントとなった独特のリズムを持つ文体も一つの見どころ。

