
酸菜魚
@suancaiyu
2026年6月3日
白の闇
ジョゼ・サラマーゴ,
雨沢泰
読み終わった
@ ホテル
サラマーゴがノーベル文学賞を受賞したきっかけになったといえる作品。
視界がまっしろになり失明する伝染病が、ある男からなんの前触れもなく発生し、瞬く間に世界に広がっていく絶望的な状況を生き延びる人たちの物語。
コロナ禍の2020年に偶然復刊されたらしい。
未知の伝染病による恐怖、人間同士の差別、争い、略奪、暴力がありありと描かれている。読んでいて息が詰まるくらい。
失明した患者は政府により強制隔離され、使われていない精神病院に送られる。そこでは誰の助けもない中、目の見えないもの同士で暮らしていかなければならない。
最初は数人だったのが、やがて200人を超える。
食料の奪い合い、食料と引き換えの金銭要求、性的搾取が発生。誰も目が見えていないのに、人間は協力せず、一部の人間が他者を虐げてふんぞり返っている。そして復讐される。
ひとりだけ、失明していないことを隠して精神病院に隔離された女性がおり、その導きによって主人公のグループは精神病院を脱出できたが、世界はもう誰もが失明しており、すべてのインフラが止まっている。
街には食料、水を求めてさまよう失明した住民がおり、さながらゾンビ映画。
見える女性の導きで食料を手に入れ、どうにか安全な場所を確保。見える女性が世界の惨劇をグループに語る。
急に視覚が回復しだしたところで、この物語は終わる。
前半の隔離施設のシーン、後半の荒れ果てた街のシーン、どちらも緊張しながら読んだ。今にもなにかもっと酷いことが起きるんじゃないか、誰か暴れ出すんじゃないか、見える女性も視覚を失うんじゃないか。
視覚を失うと、人間は、社会はきっとこうなる、というリアリティのすごくあるストーリーだった。
見える女性は強く優しく、みんなの心の支えになっていたと思うが、女性の抱える孤独や精神的な負荷は度し難い。みんな目が見えないのを、自分が導かなければ、というプレッシャーは相当なものだと思う。自分だったらどうしているか想像もできない。


