にっかり青江 "新装版 タイム・リープ〈下〉..." 2026年6月4日

新装版 タイム・リープ〈下〉 あしたはきのう
今読んでも色褪せない、青春SFの金字塔  下巻も上巻同様、非常に軽快で読みやすかった。  物語が進むにつれ、和彦と翔香の間に紡がれる絶妙な関係性に、最後まで胸が高鳴り続けた。作中ではわずか一週間の出来事だが、会話劇を中心とした非常に濃密な構成で、ページをめくる手が止まらない。  和彦を主人公にする案もあったようだが、翔香を主軸に据えたのは正解だったと思う。和彦の心の内をすべて明かしてしまっては、この物語の持つ不思議な没入感が削がれてしまっただろうから。  また、脇を固めるキャラクターたちも非常に魅力的だ。物語の本筋とはあまり関係ないが、とある登場人物が残した「世の中には、負けても恥にならない相手がいることを、知っている」という一節は、心にすっと入ってきた。  若い頃は理屈では理解できても、自身のプライドが邪魔をして納得できなかった言葉かもしれない。今こうして素直に胸に落ちてくる感覚に、時間の積み重ねを感じる。若いうちに読んでいたら、また違った思いを抱いたかもしれない。  終盤、和彦が魅せる姿は圧巻だ。その決意と行動はどこまでも頼もしく、翔香との間に生まれる淡く尊い関係性に、思わず頬が緩む。SFとしての緻密な面白さと、高校生の繊細な感情が混ざり合い、これ以上ないほど爽やかな読後感をもたらしてくれた。二人にまた会いたくなったら、きっと何度でもこの本を開くはずだ。生涯手元に置いておきたい2冊となった。  唯一気になった点は、上下巻合わせても400ページに満たないため、一冊にまとめられたのでは、ということ。しかし、上下巻を並べた時に完成する表紙絵の美しさを思うと、この分冊もまた一つのこだわりなのだと納得してしまうのが悩ましいところだ。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved