
句読点
@books_qutoten
2026年6月5日
南方熊楠・萃点の思想〈新版〉
松居竜五,
鶴見和子
読み終わった
図書館で借りてきて読了。
南方熊楠の思想について彼の人生を追いながらわかりやすく紹介している。
南方熊楠(1867ー1941)は、鶴見和子さんが紹介するまではほとんど世に知られることがなかった人物だったそう。
南方熊楠の生涯と仕事について鶴見さんは以下の5つの特徴をあげている。
①柳田國男とともに、日本民俗学の創始者となるが、民俗学に留まらずに人文・社会科学と自然科学との接点で仕事をしたこと。(人文・社会・自然科学を横断)
②生涯大学などの教育、研究機関には属さずに在野にあり続けたこと(学校嫌いの大学者)
③若い頃のアメリカ、カリブ海、イギリス放浪の経験と、日本に戻ってきてからは和歌山県田辺に住んで死ぬまでほとんど外には出なかったこと、そして辺境の地から、『ネイチャー』『ノーツアンドクィアリーズ』へ英文論文を投稿しつづけたこと
④イギリスで培った自然・社会科学の方法論と、大乗仏教を基盤とする東洋の思想を格闘させ、「南方曼荼羅」と呼ばれる独自の学問モデルを生み出したこと
⑤神社合祀令によって山野がどんどん潰されていく中で先頭に立って環境保護活動に動いたこと
これらが南方熊楠の生涯を追って見えてくるという。
そこには、「民俗学と粘菌学、自発的、自律的な研究と強制的他律的な教育、漂泊と定住、大乗仏教と近代自然科学、学問と社会的実践、という異質なものの間の対立と、それらの間に新しい結びつきを創り出すための強烈な意志と、執念深い努力」という共通点が見出せるとし、そこに南方熊楠の創造性のカギがあるという。
創造性とは、「考えの新奇な組合せ、ないしは異常な結合」で、「その組合せまたは結合は、社会的ないしは理論的な価値をもつか、または他者に対して感情的な衝撃を与えるもの」という心理学者フィリップ・ヴァーノンの定義を紹介し、まさしく熊楠はそうした創造性を発揮している。
「南方曼荼羅」は、仏教学者の中村元さんが命名したことはこの本で初めて知った。
西欧自然科学の方法は、物事の因果関係を一対一で対応づけて考える因果律に基づくものだが、世の中のことはそうした因果律だけではわからないことがたくさんある。因果律は必然性を持つが、世の中には偶然性による動き、結びつきもたくさんあるからだ。仏教では、そうした偶然性を「縁」として、因縁として捉えられてきた。
南方曼荼羅は、こうした必然性と偶然性を同時に捉える方法のモデルだという。1903年の土宜法竜に宛てた手紙の中であの有名な曼荼羅の図が書かれている。
萃点というのは、この曼荼羅図の中で多くの必然性と偶然性の網目が重なるポイントのこと。そうしたポイント(萃点)を見つけることができればいろいろな物事の関係性を理解できるという。萃点は中心にずっとあるわけではなくてその時々で移りゆくもの。そうした萃点を捉えるのは直感的なものなのだろうか。偶然と必然が重なるところ。物事が大きく動く時というのもそうした時だと思う。


