
ぱちか
@pachica
2026年6月6日
不思議な羅針盤
梨木香歩
読み終わった
小学生の頃、木の実や花の蜜、川の水に木の葉の露、氷柱、通学路の帰り道、目に映る美しく食べられそうなものはなんでも口に入れていたように思う、もちろん怒られたことも渋かったことももいくらでもあるけれど、ときどき忘れられない妖精の贈り物のような味があって、その宝物を集めたみたいな、そんなエッセイなのよね。
p.71〜
(中略)
彼女に声をかけられないでいてどうする、と思い、四つ角の赤信号で二人、立ち止まったとき、思い切って、「さつきは使かったねぇ」とささやいた。
こういうふうに言うことが、彼女の小さなプライドをさらに傷つけることになりませんように、と祈りつつ、尊敬を込めて。
私の懸念は杞憂に終わったようだった。
街灯の光の中でも、彼女の顔がぱっと明るくなるのがわかった。
大きく息を吸いこんだようだった。
そして、信号を渡り、反対方向へ歩こうとするとき、彼女は、「さようなら」と言った。私も、「さようなら」と返した。