
句読点
@books_qutoten
2026年6月7日

読み終わった
よりみちパン!セシリーズはどれを読んでも面白いことで定評があるが、この本もその例に漏れず素晴らしく、めちゃくちゃ面白かった!中高生の頃にこの本を読んでいたらもっと数学が好きになれていたかもしれない。
数理論理学の研究者として活躍する新井さんも元々は大の数学嫌いで、苦手だったという。そんな新井さんだからこそ、なぜ数学が苦手になってしまうのかもよくわかっているし、数学が面白くなるコツもよくわかっている。
数学を学ぶことで身につくのは、「とは」と「なぜ」を考える力。「とは」を考えるとは、まず物事の定義を決めてから考えること。「なぜ」を考える力とは、物事の論理を順序立てて組み立てる力。
数学はたしかに算数レベルのもの以上のものは実生活で使う機会はほとんど無いと言っていい。だからといって数学を学ぶのは無意味かというと全く違う。それは、現実離れしている数学だからこそ、抽象的な概念を頭の中であれこれ考える力が身につき、「とは」と「なぜ」を問う力を鍛えることができる。「社会」とか「国家」とか「善」「悪」とかも現実にはどこにも存在しない概念。異なる意見や習慣を持っている多様な人たちと共同で生活するうえで、争いごとが起きないように、あるいは起きた時にも、まずは「○○とは●●と定義する」というところから擦り合わせることから話し合いをしなければどこまで行っても話が平行線のまま、ということになってしまう。
なんらかの契約を結ぶときとか、怪しげなビジネスなどに引っかからないためにも「なぜ」を問う力は必要。
この本は、まず「かけ算とは何か」という、あまりにも当たり前なような顔をしているところから問い直すところからはじまる。かけ算は改めて考えてみるとよくわからないことだらけ。マイナスをかけるってどういうこと?なぜマイナスとマイナスをかけるとプラスに?は定番な問いだけど、かけ算の筆算や割り算の筆算がなぜああいうメカニズムで成立するのかとか、改めて考えたこともなかったことを一から丁寧に探っていく。ものすごくクリアにかけ算の本質的なものがみえてくる。しかもその「かけ算らしさ」は理論が発達するにつれてどんどん基本性質を保ちつつ変わってもいくという。行列同士のかけ算とか。
それまで当たり前のように受け入れていたものが全く違うものとして捉えられるようになる。
「円周率とは?」という問いから、あの有名な東大の入試にも使われた、円周率が3以上4以下であることの証明もスッキリ導くことができる。(とても気持ちいい)
そして話はだんだん高度な内容のものになっていくが、それらの考え方の基礎となっているものは小学生や中学生レベルの驚くほどシンプルで単純なものであることも順を追っていくとよく見えてくる。高校数学の微積分がなぜ画期的だったのかとか、傾きってなんだったのかとか、三角関数って一体何を表しているのかとか、全部訳のわからないままに無理やり暗記してきたものたちがとてもクリアに見えてくる。それらは本当は全部教科書に書いてあったことだと思うのだけど、この本はとてもわかりやすい語り口と例えで理解できるように書かれている。あの、博士が愛した数式も、そうやって出てきた式なのか!と目からウロコ。最終的には「自然数」という概念を人間が完全な形で把握することは原理的に不可能であるというところまで行き着く。
数学を学んでいくと人間の理性、論理的思考力には限界があるということが見えてくる。数学入門というところから、とんでもない地点にまで行き着くことができる。中学生でも高校生でも順を追っていけば理解できる形で。なんてすごいんだ。
この本読んで、もう一度数学をやり直してみたくなった。あと新井先生の他の著書も読んでみたい。








