
きらた
@kirata
2026年6月9日

首イラズ
岡田秀文
読み終わった
大正時代、皇族や華族の不祥事を扱うために内務省に新設された「華族捜査局」
局長の女公爵·周防院円香と部下の警部補·来見甲士郎2人きりの部署だが、来見は上層部から“くれぐれも円香様の機嫌を損なわないように”との厳命を受けている
来見が着任の挨拶に向かった矢先、九鬼梨伯爵家で事件が発生し、これが華族捜査局(そして2人の)記念すべき初捜査となった
九鬼梨伯爵家で起きたのは毒殺事件
動機は家督相続権争いかと思われたが、円香の目の前に第2の犠牲者の生首が現れた(円香様失神)
捜査を続けると、鎌倉時代から語り継がれる九鬼梨家の呪いが明らかに
連続殺人犯の目的、そして、九鬼梨家の秘密とは──?
原則、男子にしか与えられない爵位、しかも最高位の公爵を叙された周防院円香(様)は、身分だけでなく日常的な感覚も桁違い
警視庁に誂えられた部屋(局長室)にトラック三台分の私物を持ち込もうとしたり、初登庁のセレモニーとして用意された音楽隊による歓迎を日常行事として捉えてみたり、移動に使う自家用車は当時も高級外車であるキャデラック
仕舞いには、事件現場となった九鬼梨伯爵家に自分の部屋を用意させ、お付きの執事やメイドや身の回りの品々を持ち込んで住み込んでしまうとの規格外っぷり
その上、円香様は霊感が強く、相手の手を握ると様々な事が分かると宣っている(しかし初っ端から指摘した内容を外している)
他所の部署から人員を借りはするが、華族捜査局としての実動部隊は来見1人
お茶の時間やお昼寝の時間、読書やお手紙を書く時間など、自身の日課も崩さない円香様の機嫌を損ねず、尚且つ捜査を円滑に進めるようにと動く来見の奮闘ぶりは涙ぐましくもある
‥とは言え、この来見甲士郎警部補、話が彼視点になっているので気付き難いかも知れないが、実際読み進めていくとワトソン役としては結構ポンコツに見える
円香様を《お飾り部署のお飾り局長》として認識し、円香様に対しては当たり障りのない対応で済ませてしまおうと考えたのが来見最大の失態だろう
そう、実はこの円香様、常識外れの奇矯さはあるけれど(爵位を鑑みればかなり寛容な性格なのだが)、推理に関しては明晰な人物だったのだ‥!
本作は、陰惨な事件と個性際立つキャラの取り合わせが楽しく‥ざっくりと言うと、横溝正史風な事件と背景を持ちながらも探偵サイドの行動や会話は明るめでライトな空気に寄っており、結果、非常に読みやすい作品となっているのです
また、“女公爵”とのありえない設定も、円香様のあの時代には珍しい性格や行動も、虚構の大正時代を味わうには程良いスパイス
事件が進むにつれて増して行く暗さを弾くような明るさを放つ円香様の魅力が素晴らしくて!
‥円香様と来見が良い感じのバディになってきた辺りで事件解決、物語終幕となってしまうので、続編と言うかシリーズ化して欲しいと思いました
‥あ、その際は白峰探偵も出てくれて良いのよ?
個人的には、《掘り出し物見つけた!》と喜べた1作
作者が楽しんで書いている雰囲気も感じたので、暫くしたら再読したくなりそうだなぁ
