たにこ "盗んで食べて吐いても" 2026年6月9日

盗んで食べて吐いても
摂食障害(過食嘔吐)からのクレプトマニアの話。 小さい頃から美しいことにこだわる母親に憧れてた主人公は、親に無理なダイエットを強要されていた。主人公本人は母親に認めてもらうために過食嘔吐を繰り返し、「どうせ吐くのにお金払うなんて…」という気持ちで万引きを繰り返してしまう。 周りからの理解が得られにくい依存症。一生付き合っていかないといけない病気。 主人公はずっと原因と向き合えず、周りを頼れず、完全に1人になるまで落ちるとこまで落ちた。(妹がめちゃくちゃ良い人すぎる) 暗い話でずっと終わるのかと思ったが、最後は主人公や家族にとって1番良い形で終わったんじゃないか、と思わせてくれて本当に良かった。 途中の主人公の心理描写が本当に辛い。母親にはありのまま愛してほしいよね。 病気と向き合えるようになってからの主人公が素敵だった。 参考文献も最後に記載されており、摂食障害や窃盗依存症について深めた上で書かれた小説なので、心境がリアルだった。 読んでて辛くなったけど、読んで良かったと思える作品でした。
たにこ
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@chico75_11427
<印象に残った文章> ほんの十数分前に食べたばかりの物が、口から一気に出てくる。 この一瞬は、食べているとき以上にすべてを忘れられた。 嫌なことも辛いことも苦しいことも、食べ物と一緒に、身体の外へ出ていくような感じだった。 水を流すと、私の身体の中の汚いものが目の前から流れていく。やがて水は止まり、トイレの中には、私の後悔だけが残った。 ーーまたやってしまった。 ほぼ毎日している行為に、毎日同じことを思う。もう、こんなことはやめようと思うのに、今日の私が昨日の私を裏切ったように、明日の私もまた、今日の私を裏切るのだろう。 吐いたあとにやってくる虚脱感は、身体の重さと心の重さが掛け算となって、私を襲ってくる。そして食欲が消えると、私は本当の意味で自分が空腹だったわけではないことを思い出す。 お腹がすいたから食べたわけではない。胃の中に物を詰め込んでいるときだけが、心の中の穴を感じずにすむから食べるのだ。(P21〜22) でも、言いたいことを飲み込むたびに、私の身体の中に泥のようなものが溜まっていって、吐き出さずにはいられなかった。(P26)
たにこ
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@chico75_11427
大樹の優しさが痛い。「なんてことをしているんだ!」と怒られたら、私も傷ついたと言えるのに、優しくされると、自分の罪と向き合わなければならないから。(P38) だって私は、辛いんだもの。 辛くて、辛くて、死にたいくらい、辛いんだもの。 お腹いっぱいにして、吐くときだけが、頭の中を真っ白にすることができるんだから、これくらい許してよ。 その場しのぎの行為にすがって、私は生きるしかなかった。 目的の物をカバンに入れ終わると、空のカゴをもとの場所に戻す。 こんなことに、お金を使うわけにはいかない。(P43) 明日にでも刑務所へ戻りたかった。それ以外、万引きをしない方法を知らないから。 このままでは、明日もまた万引きをして、明後日も、明々後日もするかもしれない。 盗らなければいいことくらいわかっているのに、どうすれば盗らずにすむのかがわからなかった。 バカだ。私なんて生きている価値がない。この世にいないほうがいい。ーー誰か殺して。 浮かぶ言葉に、頭の中がうるさすぎて、私は耳を塞いだ。それでも私をののしる言葉が次々と襲ってきた。 「ああああーー!」 自業自得だ。誰が悪いわけではない。自分を憐れんで、泣く権利すらない。 そう思っていても、勝手に涙がこほれる。(P164) 大切だから手放せない。だけど壊れた食器を目にするのは辛い。だからしまいっぱなしにした。母にとって何が美しいか。その基準は、母だけにしかわからない。 母には、食器も洋服も、私のつたない絵も、美しいものだったのだろうか。だとしたら、母、私自身もその中に入れたかったのだろうか。 太った私は、母には美しくは見えなかった。だから、痩せることを求めた。 美しくないと愛せなかったのかはわからない。大人になって振り返れば、母なりの愛情は受けていたとは思う。だけど、すべて受け入れることは私には無理だった。 だって私は、母にはそのままを愛して欲しかったのだから。 今となっては、すべて想像にすぎない。でももう、母には訊ねられないのだから、私が納得する答えを見つけられればいい、と思うことができた。(P266)
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