DaDa "カリブ海序説" 2026年6月14日

DaDa
@tub
2026年6月14日
カリブ海序説
カリブ海序説
エドゥアール・グリッサン,
中村隆之,
塚本昌則,
星埜守之
・本著は大まかに各章3つの展開を繰り返す形をとっています。 ①問題提起 ②その分析・批評 ③その解答や乗り越えとして自説を提示 これを同一の問題「フランスによる植民地政策によって、様々に剥奪を被ったアンティル人はどの様な存在様態であるのか」また「文化的後背地を失った私たちは誰であるのか」をアンティル人である著者が方法や観点を変えながら記述する。 クラシック音楽でいえばモチーフとなる主題をリズムや音階を変え変奏する形に近い。 グリッサンは繰り返し主題を別の角度で、解明解明方法として使用する西洋的思考そのものの批判や、分析を交えつつ記述していきます。 ・グリッサンの思想の方法として顕著なのが、<方法の逆転>であると訳者は指摘します。 アンティル人に押し付けられた"西洋的思考"の批評・分析を通して得た知見(心理学・歴史、社会学・民俗学・哲学・文学などから)を用いて、アンティル人の側からから西洋に向けて逆投射し実践することを提示する。 その全体的な在り方や実践を<関係の詩学>と名付けました。 また彼はその特殊例として国内作家に向けての方法<過去の預言的ヴィジョン>を示し、アンティルの人々には<アンティル性> <二重言語>と名付けた存在様態を示します。 ・しかし本著ではその具体的な事例は上げ切れておらず、理念としての在り方やそれを予感させる向きの記述をしているのみである(これは訳者あとがきでも言及されている)。 私の所感だけれど、グリッサンは具体例を語り挙げる事で度々言及している個人を消し去ってしまう普遍性の暴力や、垂直関係が成立してしまう懸念(主人-奴隷のような命令のように)があるために避けたように思う。 あくまでアンティルの人々が各自特異な環境に於いて実践をするよう促すための、一実践例として本著を上梓したのではないかと考える。 つまり関係の詩学をただの理論としてだけ書くのではなく、理論を用いた結果として事例・サンプルとしても記述している事になる。 ここで興味深いのはアンティル人の特殊性を突き詰めるほどに、私たち日本人の現在の在り方に類似しているのを感じ、起せずして普遍一般性が顕在している事でした。 ・これはアンティル人エリートが思考した"尊い教科書"としてではなく、他者と関係し合い生きようとするアンティル人の一つの報告書でもあると私は考えます。 なぜ一つかと言えば本著を通じて展開する在り方は、読者によって異なって然るべきでありそれを著者は招来している。 本著序盤で語られる全体性に同化しようとする<一>ではなく複数の<多>を志向するグリッサンの思想に即して本は結ばれていました。
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