ごうき "詩という仕事について (岩波..." 2026年6月13日

ごうき
@IAMGK
2026年6月13日
詩という仕事について (岩波文庫)
「しかし、私の生涯でもっとも重要な事柄は、言葉たちが存在すること、そしてそれらの言葉を詩に織り上げるのが可能ということでした。最初は私は読者でしかありませんでした。これは確かです。しかし、読者の悦びは作者のそれよりも大きいと思います。読者はいかなる苦しみも不安も感じる理由がない。悦びを求めるだけなのですから。」  途中で他の本を読んでいたり忙しかったりしたから、2週間くらい読んでいた気がする。しかも、読了したのは一昨日だから、あまり詳しく書けないかもしれない。  本書は『バベルの図書館』で有名なボルヘスがハーバードで講義した時の記録であり、詩についてよく書かれている。これは最近考えていたことと重なることが多く、とても参考になった。同時に、彼は講義中で数多くの例を出したが、聞いたことがないものも多く、まだ世界には知らない本がたくさんあるのだな、と痛感。  1章は「詩という謎」というタイトルで、詩とは何か、どこから生じるのかという問いについて書かれている。でも内容はあまり覚えていない。言葉は単なる記号に過ぎない以上、詩は我々の経験や文脈から形作られる。我々の内部に深く根差しているものから詩趣は生まれ、して我々は詩を心得ている、らしい。  2章は、「隠喩」について。これは面白い。そもそも隠喩は無限通りあるかの風に思われるが、実際には世界中の詩人が、ありとあらゆる時代を通して、同じような隠喩しか使っていない。ふむふむ、確かにそうだ。思うにそれは、言葉の持つ歴史・民族性が関係していそうだ。「目=星」「女性=花」「時=河」などのメタファーは、それ自身が全民族納得できるものであり、しかもあらゆる時代の人間が目撃している。しかし、例えば「死体=何年も使われていないスマートフォン」は現代人、しかもスマホを買い替えた人にしか伝わらない。  また、ボルヘスはこの章で隠喩を3種類に区分している。1つ目は「伝統」。これはさっき言った通り、言葉の持つ歴史みたいなもの。2つ目は「絶妙な正確さ」。『六兆年と一夜物語』みたいに、単に『六兆年物語』とするのではなく、一夜を付け足すことで妙な具体性が増し、ポエジーが生まれる。確かに。3つ目は、「kening(ケニング)」。アングロサクソン人の時代特有の隠喩で、「海=鯨の道」みたいに、単一の名詞を複数の名詞で比喩するもの。ゲームのコースタイトルとかで、よくあるやつ。  この章は、非常に興味深かった。  3章は、「物語り」。「物語り」って、良いな…。「物語」は名詞だが、「物語り」は「物語る」という動詞の活用形であり、書き手の能動性を感じる。  内容としては、叙事詩の形式は①トロイ物語②オデュッセイア③福音書のいずれかに集約されるというもの。また、叙事詩と小説の違いとして「韻文か散文か」「叙事詩は英雄像、小説は人間の崩壊を描く」という傾向があるらしい。特に後者については、なるほどなるほど。  19〜20世紀の境目、ポーの「文章は最後の一文のためにある」という考えの元、多くのプロットというものが生まれたが、結局それもなんとなく技巧的な感じがする。結局物語としては先に挙げた3つの抒情詩が強くて、歴史の中にずっといる。それほど、新しいものは求められていないということである。  4章は「言葉の調べと翻訳」で、主に語感や翻訳について述べられている。私は日本人だから、英語の語感はよく分からない。翻訳については、確かにと思うところあり。翻訳によってポエジーが失われてしまう可能性があるが、逆にポエジーが生まれることもある。例えば、ヘブライ人は最上級を持たないので"the best song(最高の歌)"を"the song of song(歌の中の歌)"と訳す。すると、途端に詩感が生まれる。確かに。   ところがそれとは別の問題として、逐語訳なるものが存在する。要は直訳みたいなもの。今日では我々はあらゆる人間に公平であるため殆どを逐語訳で考えるが、マシュー・アーノルドは「逐語訳は忠実だが、誤った強調になる」可能性があると述べている。確かにそうだ。となると、逐語訳ではない翻訳は、詩の再生とも言えるね。  5章は「思考と詩」。ここではポエジーが我々の生活から生まれるとか、逆にあらゆる単語は自立し唯一無二であること、言葉の持つ魔術性を強調している。そんな言葉によって紡がれる物語を読むためには、その中の登場人物を信じるべきだ、とも。  そして6章では「詩人の信条」として、ボルヘス自身が創作に向かい合う際の心構えを述べている。  いやあ、難しかった。理解できた箇所も多いけど、難しくてすぐ忘れちゃった。いけないな。やはり私は馬鹿だから、同じ本を何度も読まないといけない。
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