和月 "わすれなぐさ" 2026年6月14日

和月
和月
@wanotsuki
2026年6月14日
わすれなぐさ
わすれなぐさ
吉屋信子
大好きな世界観。 女の子達の間の倒錯的な友情を描いていて、王道の少女小説をたっぷり味わえる。 学生時代、尾崎翠を研究していたので、同じ少女雑誌で連載していた同い年の2人が対照的な作風であること含めて面白かった。 他者からの好意に疎い鈍感主人公・牧子、美しく奔放なファム・ファタール・陽子、硬派で家族思いの実直な少女・一枝。三者三様の彼女達が女学校で繰り広げる三角関係が、何とも読み応えがある。 解説でも語られているが、蠱惑的な魅力に溢れた陽子の一挙手一投足に目が離せなくなる。意図的に意地悪をしたり、自己顕示欲で動く典型的なワガママ女王ではなく、動機が一貫して牧子への執着である所が良い。牧子の翻弄されっぷりには正直突っ込みたくなる時もあるが、陽子の魅力を踏まえると抗いがたい気持ちはよく分かる。 他方で、一枝の潔癖さ、清廉さもとても美しく、実は心の奥では深い情を抱えている所も好ましい。陽子が薔薇だとすれば、一枝は白百合のような存在だと感じた。 そんな大輪の薔薇のような陽子を象徴する香りが「勿忘草(花言葉:わたしを忘れないで)」なのが本当に素敵。場所が変われば相手に縋るようなニュアンスに捉えることができる言葉が、陽子の手にかかれば相手を翻弄させる妖しさを纏う。 物語の終盤になると、また違った想いをのせた香りとして、牧子や一枝の元に香ってくる所含めて素晴らしい。 タイトルの秀逸さも合わさって、とても良い作品だった。
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