

和月
@wanotsuki
マイペースに読みます📚
- 2026年4月8日
成瀬は都を駆け抜ける宮島未奈読み終わった成瀬三部作完結!全編通して本当に読みやすくて、普段本を読まない人でも最初の第一歩として手に取りやすい作品だと感じた。表題の通り、今回も颯爽と駆け抜けていってくれたので、終わる寂しさよりも爽快な感覚で満たされた。 キャラクターの魅力がこの作品のアピールポイントだけど、それと同じくらい地域に根付いたトピックが面白い。1巻は膳所、2巻は滋賀県、3巻はもう少し範囲を広げて、成瀬が過ごしている場所の詳細を存分に描写してくれる。思わず成瀬の育った場所に行ってみたい!と思わせてくれる文章が、とても好き。 3巻は完結編ということもあり、何となく1巻から続く物語の結びに入っている気配が節々にある。この人の視点で読みたい!と思っていた3人が後半を担っていてかなり嬉しかった。やっぱり最後はこの人だよね。 とはいえ、前半も成瀬の過ごす京大生活が個性豊かに描かれていて楽しめた。やはり京大といえば外せない作家の作品も関連して登場していて良かった。 この先出会えないとしても、成瀬はずっと成瀬らしく、けど少しずつ成長して、真っ直ぐ自分の人生を歩んでいくんだと思う。3巻までの間も着実に周囲の輪も広がっていて、その一方で昔から大切なものは変わらず愛して未来へ進む成瀬はとてもカッコイイ。元気になりたい時は、成瀬あかりの人生史を振り返るべく、またこの作品を読みたい。 心のお守りにしたい一文 「みんなは『極める』という到達点に注目するのだが、わたしはそこに至る道が重要だと思っている。ゴールにたどり着かなくても、歩いた経験は無駄じゃない」 - 2026年4月2日
きょうの枕草子最果タヒ読み終わった枕草子を国語の教科書で初めて読んだ時、季節の美しい瞬間を表現する透き通った文章と、1000年以上も昔を生きた人と同じ感性で四季を感じられる喜びで、とても感動した記憶がある。 とはいえ他の章段は殆ど読んだことはなく、現代の詩人が訳した枕草子はどんな風になるのか気になって手に取った。最果タヒさんがとても瑞々しく今の私達にも伝わりやすい言葉で表現してくれていて、とても良かった。 合間に入るイラストも、雑然とした現代社会から離れ平安の趣のある世界観に入り込めて、素敵でした。 枕草子の現代文の合間には、清少納言さんに対する最果タヒさんの考え方や文章への感じ方をコラムが挟まれていて、これもとても面白かった。 清少納言の人物像を語る上でよく挙げられている「自慢したがり」な所も愛のある解釈をされていて、そんな風に読んでみると、知識豊富でキレキレな清少納言の面白さとはまた違った味わい深さを感じる。 美しい自然物に対する視点も素晴らしいけど、ムカつくものに対する感性やあの人ってちょっと……みたいな人間味ある言葉達も面白くて、随筆ってこんなに楽しいジャンルだったんだ!と新たな発見にもなった。 開けた戸は閉めなさい!みたいな文句もとても分かるし、平安時代の人とそうだよね〜ってお喋りしたくなる文章を今私達が読めていること自体、奇跡だ。 全文を訳している本では無いので、これを機に枕草子の全編を読んでみたくなった。 とても素敵で手元に置いておきたい一冊! - 2026年3月28日
小説野崎まど読み終わった2回読んで更に美味しい!みたいな作品だと思う。1回目は怒涛のように押し寄せてくる言葉の意味を咀嚼して、2回目は真相を知った上で味わう。噛めば噛むほど味がしてくる部類の本だし、作中に出てくる作品を読めばもっと楽しめる気がする。 大してあらすじとか調べず、様々な人がオススメに挙げていて手に取ったので、まさかこれが【ジャンル:SF】とは思わなかった。読書好き小学生2人が小説家のお屋敷に忍び込んで……の流れでくるのってハートフル青春ものだけじゃないんですね。ほんとにびっくり。 本を読む人って「じゃあ文章書くのも上手いよね!」「小説書かないの?」と聞かれがちで、中には文才のある人や書評が得意な人もいるけど、全員がそうとは限らない。文章を書くことに憧れはするけど、色々な本を読んでいるからこそ、自身の文章力も嫌という程分かっていたりする。 主人公の内海集司はそれを正に体現していて、とても感情移入させられた。彼レベルで多読では無いけど、読書が好きでも人並みの文章しか書けない感覚はとても分かる。 そんな内海が本を読み続ける中で抱く疑問。この物語はその答えを探す旅なのだと気付かされる展開。結末に行き着いた時、この小説そのものがこれからの読書人生のお守りのような存在になっている。 私が予想していたよりもずっと壮大なお話で、時折ページを遡り読み返しながら言葉を浸透させる必要のある箇所もあり、文章の読みやすさと理解の難しさがいったりきたりする作品だった。けれど、その難解な面白さこそフィクションの魅力だと思う。 『小説』に出会えてよかった。心底そう思わせてくれる本です。 - 2026年3月27日
叫び畠山丑雄読み終わった大阪万博に行った日が数日違いだったことも影響して、どこかですれ違っていたんじゃないかと錯覚するくらい作品の設定が近い距離にあった。 入り込みやすくてスルスルと読めた。 銅鐸ってその筋の職人さん以外で作れることあるの!?という驚きが最初の感想。銅鐸の音を動画で聴いてみると少し耳に刺さるような鋭さと余韻があって、趣がある。 銅鐸の音を辿って先生と出会い、銅鐸づくりと共にその地域の歴史を学んで、新しい人と関わりを持っていく様子は展開だけなら良い話。だけど、早野の言動から漂ってくる危うさが、徐々に物語を不穏に進めていく。 この物語が読者に伝えたかったことを考えてみる。読みやすさとは裏腹にかなり難解だけど、117頁の先生の言葉はその後の早野の行動にリンクする気がして、作品全体の意図が含まれているように思えた。道ならぬ恋のように川又青年を追いかけた早野が、絶望の底で彼の叫びと共鳴した結果がこの結末なのかもしれない。 読み終えた後、銅鐸が鳴る音が耳に残るように、どうしてこうなってしまったのか反芻してしまう一作だった。 - 2026年3月25日
掃除婦のための手引き書 --ルシア・ベルリン作品集ルシア・ベルリン,岸本佐知子読み終わったゆっくり、少しずつ、味わって読んだ。 度数の高いカクテルみたい。飲みやすさに任せて一気に飲むと酩酊しそうな気配が全体に漂っている。 著者の人生をベースに描かれる掌編の数々は、本当に1人分の人生なの?とビックリするくらい、起伏に富んでいる。アルコール依存症のシングルマザー、友達のいないネグレクト状態の女の子、富裕層として不自由なく暮らす少女。一貫してウィットな視点で物語が展開するので、ばらばらな印象にならない所が凄い。鋭く知的でしたたか且つ冷徹さと情熱を併せ持つ女性像が、読んでいて痺れる。読んでいて苦しくなるような題材・展開の中、エネルギッシュで簡潔でユーモアのある文章が展開されることで、唯一無二の魅力に溢れている。この苦しさと魅力の天秤が絶妙なバランスで釣り合っていて、ファンが多いのも納得の作品。 表紙のルシア・ベルリンの写真も、文章からイメージしていた女性の姿形そのままという感じがして素敵。どの短編も素晴らしいけど、「沈黙」が本当に苦しくて、本当に好きだった。 - 2026年3月22日
ここにきているぷくぷく買った - 2026年3月22日
奇妙でフシギな話ばかりブルース・コウヴィル,橋賢亀,金原瑞人買った - 2026年3月22日
ただいま神様当番青山美智子買った - 2026年3月20日
カフェーの帰り道嶋津輝読み終わった朝ドラのような感覚で読める作品だった! 連作短編集で読みやすいけど、しっかりと一つ一つのお話に深みがあり、続きが気になって読み進めたくなる。あまり普段本をあまり読まない人や、文学賞受賞作品を何か一つ読んでみたいな、と思った方にもオススメできる本。 カフェーで働く女給達の視点で描かれる大正から昭和、戦後の日本。女性たちの働き方含めて、読んでいて初めて知る当時の世相が沢山あり面白い。 寂れているカフェーという設定からなのか、昭和の風俗営業としてのカフェーというより、喫茶店的な場所を舞台としているのがこれまた良い。客が少なくゆったりした時間が流れるお店、穏やかなマスター、時折会話に花を咲かせながらもチャキチャキと働く女給達。前半の2篇は特に、その空気感がとても心地良かった。 しかし、中盤から時代が進むにつれてカフェー営業の取締りが厳しくなり、戦争の気配も濃くなっていく。現代までの過程を知っていても尚、どうかこの未来には繋がってくれるなと言いたくなる。戦場にいる男性達の無事を祈る女性の思いの丈を読んでいると、とても胸が苦しくなった。 過酷な時期を経て、それでも生きねばと前を向いた彼女達の強さが、現代まで繋がってきたバトンのように感じられた。読みやすい物語だからこそ、この本を多くの人に読んで欲しい。 読み終わったあと、今を生きる私達の背中を押してくれるような力を持つ作品だった。 - 2026年3月16日
YABUNONAKA-ヤブノナカー金原ひとみ読み終わった読書期間中、何度かこの作品に関連するような夢を見て魘された。性加害や性的搾取を中心的なテーマとする本作は、著者の熱量を感じさせる厚みのある本で、中身も非常に重厚且つ鋭い。本当にHPを削られるけど、この読書で脳の筋トレが出来た感覚もあり、読んでよかった。 読み終わってからいくつかYouTubeの動画で金原ひとみさんが本作について語っている動画をみた。登場人物の五松に対する言葉で、「生きることと加害性は切り離せない。」と話していた場面が印象に残った。 性的搾取の加害者として告発される50代男性の木戸は、告発文だけを現代の感性で受け取るとかなり酷い人物だ。しかし、彼の視点から物語が始まることによって、どことなく悪と言い切ることができない部分がある。 40代女性の長岡は、「悪のような正義感」を持つ人物として描かれる。その苛烈な正義は、正しさという暴力で相手を否定し、自分の理想とする世界から排除する。私は正直、正しさに基づく言動であるとしても、彼女の存在がいちばん怖かった。愛する娘すら不信を抱けば人間の皮を被った虚無だと罵倒する。揺らぎのない正義感に包まれた刃は、それが正当防衛だとしても、過剰に振るえば加害性を持つ。人は生きていく中で加害を及ぼす可能性を等しく持っている。被害者や傍観者も共にそのことに自覚を持たなければならない。そう考えさせられた。 また、優美の感情の爆発力も、横山の煩雑さが一切ないルーチンぶりも、伽耶の社会の枠組みから一旦外れることが出来る思い切りも無いけど、それでも彼等には特にシンパシーを感じた。ちょうど私自身が彼女達の狭間の年齢なのも、要因の一つなのかもしれない。 世代毎の思考が細やかに書き分けられており、自分とは別の世代の考え方を主体的に味わえる。なんでこの人はこんな古い考え方なんだろう?どうしてこの子は他者との対立にここまで回避的なんだろう?普段の日常でふと感じる疑念や年齢による断層を、なるほどその捉え方なら私にも当てはまるかもな、と思わせてくれる。どの人物にも全面的には賛同できない反面、全員にどこかしらで共感したくなる。 様々な年齢層の読者に対して各世代の思考や言動を示した上で、確かな説得力を感じさせてくれる作品だと感じた。 終始読んでいて苦しくなる場面が多かったけど、最後の視点には希望を持てた。他の読者の方で、越山恵斗は長岡友梨奈の悪のような正義を次世代に引き継ぐのではないか、と危惧する感想があった。確かに私もその片鱗は感じたが、彼の恋人が彼にとって良い軸となり隣に立っていてくれるのではないか、とも思う。 長岡と横山の関係性とは別ベクトルで、互いが互いを尊重して成長する2人として、この世界をサバイブしていってほしいと心から願う。 - 2026年3月12日
時の家鳥山まこと読み終わった芥川賞受賞作をこれまで読んだことが無かった。というか、「これが芥川賞か〜」という気持ちで本を手に取って来なかった。 でも、本当にこの作品に出会えて嬉しい。出会うきっかけとして芥川賞の存在に感謝した。 冒頭は、視点がどこから語られているのか分からず、少し読む進めるのに苦しんだ。ロバート・ゼメキス監督の『HERE 時を越えて』を連想させる設定。解体間近の家をスケッチする青年と、その家に住んでいた三代の人々の記憶や感情の物語。 主体の切り替わりがシームレスで面白い。壁の傷やタイルの模様を軸にして、一行後には別の人物が住んでいた頃の話になる。かと思えばいつの間にか現在の青年の時代に戻っている。 籐巻きと小屋裏のエピソードが特に好きだった。作品に出てくる彼等は交わらないけれど、確かに家を通して繋がっている。各々が何を感じ、考え、思ったのか。作中に登場する薮さんの仕事に対する姿勢と同様に、言葉を尽くして描写する物語の在り方に胸を打たれた。 大切な言葉が沢山あって、反芻したい文章ばかりだけれど、ハッとさせられた一節を引用。 「存在する細部の数こそ平等だった。自分はただ拾ってこなかっただけかもしれなかった。一つひとつに目を凝らさずに、むしろ目を背けるみたいにして生きてきた。自分は一体これまでにどれほどのものを掬い損ねてきたんだろうか。」 この場面を読んだ後、五感が澄みわたる感覚がした。私を取り巻く環境や事物を改めて、じっくりと考えることが出来た。日々を如何に無味乾燥に消化してしまっているのかを痛感した。 目を凝らして生きることを選んだ青年と迎える終盤は、やっぱり哀しい。でも、残酷な程に隅々まで丁寧に書ききる文章には、高い芸術性を感じた。 作中でも言及されているけど、人間は忘れていく生き物だ。それが寂しい半面、ありがたい特性だと思う。だけど今こうして「時の家」を読んで、心が洗われるように感じたことを忘れたくない。忘れない為にも時々読み返したい。 未来の私はどんな感想を持つんだろう。 - 2026年3月9日
火星の女王小川哲読み終わったすぐに返事が欲しい時に全然LINEが返ってこなくてモヤモヤすることがある。伝えた言葉が相手に正しく伝わっているかが分からない。表情も空気感も分からず、タイムラグがネガティブな間に感じられてより一層不安になる。 本作は、そうした日常でも起こりうる人間同士の距離の問題を、とても大きなスケールで描いた作品。SFと独立戦争の要素も盛り込まれていて、年齢も立場も異なる4人の視点で物語が進み、わくわくする! SFあるあるだけど、前半は特に設定や状況を理解することを重視してしまうので、なかなか読み進められない。でもそこを乗り越えると展開が気になってページを捲る手が止まらなくなり、楽しい。 火星を舞台に物語が進むので、かなり想像力が必要になる設定。だけどそこで暮らす人々が独立に向けて動き出す心境は、地球のこれまで歩んできた歴史とリンクしていて、人間ドラマとしても骨太な作品だった。 「光が遅すぎる」 いつか現実でも口にする日が訪れるのかな。 過去の歴史について考えさせられると同時に、未来にも思いを馳せたくなる物語だった。 - 2026年3月4日
83歳、もふもふのネズミを拾う。そして人生が変わる。サイモン・ヴァン・ブーイ,寺尾まち子読み終わった面白かった! 前半結構ゆったりとした進み具合なので少しずつ読み進めていたけど、後半からはグイグイ加速度が増していってとても良かった。 現代日本で生活しているとハツカネズミってなかなかお目にかかれないので、正直読み始めた時に「素手で触れたりして菌とか大丈夫なのかな……?」みたいな邪推ばかりが先行してしまった。だけど段々ともふもふの賢いネズミに愛着がわいてくる🐁 ネズミとの出会いをきっかけに、モノクロで単調だったヘレンの人生が色づいていく描写も素敵。本人が単調と語っているとはいえ、紅茶、べイクウェルタルト、テレビ、お風呂などを楽しみに日々を過ごしているヘレンの姿も読んでいて良いな、と思う。べイクウェルタルトが食べてみたくなった! 時折孤独の影が忍び込んでくる所は胸がキュッとなる。心に残った一文を引用。 「最後まで残されたことの唯一の救いは、誰よりも愛したひとたちが、そのひとがいないせいで自分がいま味わっている苦しみを経験することはないとわかっていることよ」 なんて苦しく、哀しく、愛に溢れた言葉なんだろう。このバックボーンがあるからこそ、別れの苦しみを痛いほど知っているヘレンがシップスワースとの繋がりを経て外の人々と関わりを持ち始める描写に深みが出る。 そして、次第に元の自分を取り戻していく様子が読者に勇気や希望を与えてくれるのだと思う。 登場人物もみな心の優しい人間が多くて、ネズミと人間の友情を尊重してくれるのも素敵。映像でも見てみたいなと思っていたら、あとがきで映画化の話が出ていた。いつか日本でも観られたら良いなあ。 - 2026年2月28日
なぜ日本文学は英米で人気があるのか鴻巣友季子読み終わった最近は、海外で文学賞を受賞したことで名前を知る作品が沢山ある。『BUTTER』や『ババヤガの夜』がその筆頭。そうした風潮はどうして起こったのかを知りたくて、本書はそれ故に手に取った新書だった。 正直「なぜ日本文学は英米で人気があるのか」についてよりも、翻訳という営為と世界情勢の関わりや、出版界における翻訳文学の立ち位置等の推察がとても鋭く、読んでいて面白かった。 日本語を母語として日本語に翻訳された作品に触れる機会が多い立場としては、他文化の違和感を含めた文章こそ外国文学の魅力だと感じていた。そのため「翻訳者隠し」や「馴化翻訳」といった手法があること自体驚きだった。 (引用) 「翻訳およびその読者というのは、原作とその読者に対してつねに「遅れて」いる。しかし「遅れてきた者」だからこそ持ちうる新たな視点もあるはずだ。」 著者のこの主張が新鮮だった。たしかに、私達が太宰治や夏目漱石の作品を読む時、現代の社会問題等とリンクさせて当時とは異なる視点で読むことがある。これは、時代の変遷に伴って起こる事象だと考えていたけれど、著者の言う通り国と国の間にも起こり得る現象なのかもしれない。 私はよく、この面白い海外作品を原書で読めたらもっと内容の解像度が上がったのかもしれないと悔しい気持ちになることがある。でも、その物語を日本語という別の言語を通して知ることで、新しい視点を得られるのかもしれない。 そう考えると、翻訳作品が遠い世界から様々な人の手を渡って届いた贈り物のようで、何だか嬉しくなる。 また、この本を通して新たに読みたい作品が増えたことも喜ばしい。作中に登場する「侍女の物語」や「マーリ・アルメイダの7つの月」は前から気になっていたけどより一層読みたくなった。海外で人気の日本人作家もまだまだ知らない方が沢山いたので、今後読む作品リストに加えて少しずつ履修していきたい。 - 2026年2月26日
グレタ・ニンプ綿矢りさ読み終わった初めてXJAPANの紅を聴いた時のような、 ペール・ギュントの朝を流してたら突然The OffspringのAll I Wantに切り替わったみたいな、そんな読書だった。めっちゃオモロい! ひとつ前に読んでいたのが朝井リョウの正欲だったので、グッピーもびっくりする温度差だった。 文字フォントを色々使って表現するのが視覚的にも楽しい。主張したい部分や強い感情が伝わってくる。 不妊治療、妊娠から出産、子育てまでを描く本作は、本来重く深い話か心温まる話のどちらかになりそうなテーマをかなりコミカルな文体で描いていて、終始笑えるんだけどしっかりと現代社会に対して吼えてくれているのが読んでいて清々しい。子供を産み育てることも悪くないなぁと思わせてくれる。ポジティブになれる作品! 表題作も面白かったけど、もう1つの短編「深夜のスパチュラ」も最高だった!!主人公の女の子の疾走感と、ちょっとしたことでウダウダしてしまう感じが可愛くて笑えた。兄との掛け合いも良かったな。 読みながらもう1曲思い出したのが、サマソニ2024のちゃんみなの「NG」。この映像を見た時も、お腹に赤ちゃんがいる女性って実はものすっごいパワフルなんだよなと感動した。グレタ・ニンプを読んだ人には是非聴いて欲しい。 今後もっと綿矢さんの作品を読んでみたい! - 2026年2月24日
正欲朝井リョウ読み終わった読んでいる途中、中断して日常生活を送っている間もずっとこの作品について考えていた。 感想の言語化がこんなに難しいと思うことは稀で、それと同じくらい、人間の細分化された相違と共通する欲求をここまで言語化できる本があるんだ、という驚きがあった。 人は常に独りになること、疎外されることへの不安を抱えている。一人一人が遺伝子による個体差を持つので、完全一致する存在で安心を得ることも出来ない。そこで安心するための材料になるのが他者からの受容と共感だ。多数派に属すると、第三者からの批判や評価の眼が分散されることも理由の一つかもしれない。 人という漢字は本来、1人の人間が地面にしっかり立っている姿を表している筈なのに、その実なんてあやふやで不安定な存在なんだろう。 そんなことを悶々と考えさせられる作品だった。 諸橋くんの一文が痛烈に刺さる。 「自分は偏った考え方の人とは違って色んな立場の人をバランスよく理解してますみたいな顔してるけど、お前はあくまで“色々理解してます”に偏ったたった一人の人間なんだよ。目に見えるゴミ捨てて綺麗な花飾ってわーい時代のアップデートだって喜んでる極端な一人なんだよ」 同じくらい、八重子のこの一文も胸を打つ。 「はじめから選択肢奪われる辛さも、選択肢はあるのに選べない辛さも、どっちも別々の辛さだよ」 「自分を削ってくるものだらけの世の中でなんとか前向きに生きていく方法を考えたいだけ。」 この2人の主張のぶつかり合いが、とても良い場面だと思った。 数秒後に誰かの言動に傷つく被害者になったとして、その1分後には自分の言葉が誰かの加害になり得ることを、私は私の為に理解しておきたい。 この作品を読んでいる途中に別のZINEでオススメ本として挙げられていた「聖なるズー(著:濱野ちひろ)」を、関連本として読みたいと思ったので忘れないようにここに記録しておく。 - 2026年2月21日
宝石商リチャード氏の謎鑑定 輝きのかけら辻村七子,雪広うたこ読み終わった1年8ヶ月ぶりに再開。琥珀の満足感がかなり高くて、番外編を読むのを一旦止めてしまっていた。 シリーズをおすすめしてくれた友人と最後まで読み終わったら記念にジュエリー買いに行こう!と約束したので続きを読み始めた。かなり忘れてる部分が多かったけど、段々読み進めるうちに思い出してきて、やっぱり好きな作品! 特にジェフリーとヨキアムの書き下ろしの短編が良かった。2人には今までの分、めいいっぱい休んで幸福になってほしい。 次からは新章になるから、リチャード達がどんな風に活躍していくのか今から楽しみ! - 2026年2月19日
ヨルガオ殺人事件 下アンソニー・ホロヴィッツ,山田蘭読み終わっためちゃくちゃおもしろい作品なのは前提として、これを海外作品として読むことの口惜しさを痛感する。 無論、魅力を損なうことなく翻訳してくれている出版元には感謝しかない!ただ単純に、私自身英国の古典ミステリの知識や教養が乏しい結果、分かれば絶対に何倍も楽しいだろうなあ〜!という場面が各所にあるので勝手に悔しがってしまうだけ。作中作であるアラン・コンウェイの描く物語は色々な仕掛けが隠されていて、その本来の面白さを十分に味わえていない気がするのが歯痒い。 少なくともアガサ・クリスティ作品は今年中に読んでみよう。そして背景にある名作の知識を深めよう…。 そんな浅学な読者であっても、ホロヴィッツが作り上げる緻密でフェアプレイなミステリは本当に面白い! 細かく各容疑者の話を聞き取り、疑わしい点はそれとなく目印をつけて、疑惑を提示した上でひとつひとつ解決していく。入れ子構造で1作品に2つの謎を解くというのもボリューム感があり嬉しい。何より、決して交わらない世界線のスーザンとピュントの間に生まれる、一種の師弟関係のような絆が良い。 魅力を挙げるとキリがないけど、この難しい構造でこれだけ完璧に歯車を噛み合わせてくるホロヴィッツの作家としての力が素晴らしすぎる。 凄腕に圧倒されたので、そろそろ名探偵に振り回されるちょっと不憫なホロヴィッツを見にもうひとつのシリーズの続きを読もうかな。 - 2026年2月15日
ヨルガオ殺人事件 上アンソニー・ホロヴィッツ,山田蘭読み終わったシリーズ第2弾。 やっぱりスーザンの物語にどんどん引き込まれているタイミングでピュントに切り替わり、戸惑う間もなく作中作にのめり込んでいく展開が楽しい。 ホロヴィッツ作品あるあるで、かなりヒントを盛り込んだ章の結びに「実はここには謎を解く鍵がたくさん隠れていたのに、なにもみえていなかったのだ。」的な一文を添えていることがあって、これに出くわす度に悔しーー!となる。私も全然分からんのに匂わせられた!みたいな。 でも、最後まで読み切るとなるほど!と気持ち良くパズルのピースがはまるのもこの場面なので、複雑な心境である。 今のところ全然真相に近づけていないので、このままの勢いで下巻読み進める! - 2026年2月7日
ブレイクショットの軌跡逢坂冬馬読み終わった分厚い本なのに読み始めるとするする進む! 5章あたりからはこの先どうなるかが気になりすぎて、一気読みしてしまった。 ふわっと登場人物同士が交わる連作短編集とは違い、誰かの行動が誰かの未来を動かして、それが連なっていく。現象としてはバタフライエフェクトに近いんだけど、相互的に連動している場面も多々あり、最後まで読むと複雑な相関関係に改めて驚かされる。 俯瞰して複数人の人生を見ることが出来るとしたら、案外現実もこういう構造なのかもしれない。 架空のSUV(車)がタイトルになっているので、基本自動車業界をメインに話が進むのかなと予想していたが、良い意味で早々に裏切られた。 7割くらいは資産や金銭が絡む内容。国内ファンドや投資用マンション、マネーセミナー等がっつりと現代日本のお金の話をしていて、それ以外にも低所得層と富裕層の格差が示されていたりとなかなかに骨太な題材。 他方で、人間の多様な在り方や貧富の差では測れない人の幸福についても絶妙なバランスで組み込まれていて、専門的な知識が乏しくても読み進めたくなる。 私自身、薄らとした金融知識だけでは難しい箇所も多かったけど、調べながら読むと色々な知識が身につく感覚がして面白かった。カモにも七面鳥にもなり得る自覚を持って生きたい。 現代日本の諸相を描きつつ、間に4回挟まる話もかなり面白かった。むしろ段々そっちの方がどうなるの!?と続きが気になって仕方なかった。 エピローグは、これまで様々な形で提示されていた伏線が綺麗に回収されていてとても心地よい。さながらビリヤードの終盤、ボールがポケットに次々と吸い込まれていくような気持ち良さがある。最後まで気付かず、あっそうだったんだ!?となり慌てて該当シーンを読み返したりしてそこも含めて楽しかった。 同志少女もまだ読めていないので、これを機に逢坂さんの作品を読み進めたい。
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