

和月
@wanotsuki
マイペースに読みます📚
- 2026年8月24日
ガラスの街ポール・オースター,柴田元幸読み終わった流動的な表現と透き通った文章。 ニューヨークを歩き続ける主人公のように、スッキリとした心地と彷徨いぐるぐると渦巻く心地が交互に押し寄せてくる。 ポール・オースターの名前は以前から知っていて、読みたいと思っていたのでやっと読めて嬉しい。 作品としては、現代の多くの大衆文学が持つ「一貫性」「理解しやすさ」「予定調和」はほぼ皆無なのだが、何故か読みやすく頭に入ってくる文章なのが不思議。時々それを崩すかのように、分かりにくい表現を用いて語られる場面も読み応えがある。 もっと考察を重ねると見えてくる部分が多いのだろうな、という気配がする。 ドン・キホーテを書いた人物の考察と本作の流れはおそらくリンクしてそう。 読み直す度、多様な文学に触れてからこの作品に戻ってくる度に、新たな発見が生まれるお話なのだと思う。 今は未だ、掴みづらい質感の読書だったけれど、同時に本を読むことが「理解する」と安易に繋がらない感覚が好ましかった。 また折を見て読み返したいし、著者の他の作品も読んでみたい。 - 2026年8月20日
ゾンビ回収婦小砂川チト読み終わった一気読みだった。 難解さと面白さが天秤で釣り合ってる感じの作品。面白さに少し重心が傾いていて、好ましい一冊だった。 純文学の放つ言葉の濁流に身を委ねていると、洗濯機の中に居るみたい。頭がこんがらがって目が回りそうなのに、同時に外で染み込んだ汚れが清められて、心地よい。 人間とAI、愛憎、公私、仮想と現実、巧遅と拙速。様々な二項を行ったり来たりしながら、わたしとあなたたちについて考える。一度読むだけでは噛み砕けない文章が好き。 「わからない」の渦に飲み込まれそうになるのに、どうして私の心がわかるんだろう?と思える一瞬が確かに存在している。 クマ先生とのメンテナンス・デー、アラスカの最期、彼の名前の由来…数えるとキリがないくらい、断片の言葉達が胸に突き刺さる。 人間として生きていく上で、行動指針に「愛されたい」という生存本能が宿るのは至極当然だ。「私」を支配する上位の存在に認められたい、生きていることを肯定されたい。それは、人が死ぬまで抱え続ける衝動なのだろう。 だが、その為にはミスなく改善向上進歩を続けることが正しいのか?まるでAIのように?AIに仕事を奪われた場合はどうすればいい?急に掌返しで不完全さが称賛の的になるのか? 利便性が著しく前進する世界で、これまでの指針を喪った現代人は身体を引き摺り歩くゾンビのように、心を彷徨わせている。 本作は、彷徨い破壊され散らばったゾンビの身体達を回収する中で、愛されたい不完全な人間たちの心の欠片も拾い集めてくれているように感じる。 短編ながら読み応えがあり、己の自意識を見つめ直すことができる作品だった。 - 2026年8月19日
ナイフをひねればアンソニー・ホロヴィッツ,山田蘭読み終わったホーソーン&ホロヴィッツシリーズ第4作。 作中ホロヴィッツの不憫加減に拍車がかかっていて、思わず作者にホロヴィッツが可哀想じゃないか!と抗議したくなる。本人だからこそ容赦ない展開に持っていくことが出来るのが面白い。 今まで読んだシリーズの中で一番読みやすく、時間制限がある中でのスピード感含めてとても楽しめた! 純粋なエンタメとしても見事な本作だが、社会や文章表現における問題提起も織り込む手腕が素晴らしい。文化盗用や青少年の犯罪について、ホロヴィッツの考えがそのままの形で表現できる所は、メタ構造の長所だと思う。 ホーソーンの秘密についても徐々に、確実に迫っていて該当箇所を読むとウズウズする。謎が多く掴めない人物ではあるが、だからこそ、ホロヴィッツには少し譲歩する場面や、父親としての顔が垣間見える場面に惹き付けられる。 9月にはシリーズ最新作も刊行予定なので、凸凹コンビの行方を今後も追いかけていきたい。 - 2026年8月16日
せやかて、あの街は一穂ミチ,上村裕香,円城塔,加藤進之介,桂りょうば,金菱清読み終わった馴染みのある京阪神にまつわる掌編エッセイ集。 書き手それぞれの視点で描かれる地元が趣深く、面白かった。 1つずつが短いので非常に読みやすい。 世代も生業もバラバラな書き手が思いを馳せる京阪神は、懐かしさもあれば笑いもあり、同時に寂しさや苦味もある。読み心地も様々だが、どの文章もどこか温かみを感じる。 本の想定のようなやわらかい黄色のイメージが始終漂うエッセイ集だった。人々が過ごした街の輪郭、風景、感情を味わい、読み終えると自分の街の思い出も立ち上ってくる。私も、忘れないうちに生まれ育った街の記憶を書き留めておきたい。そう思わせてくれる作品だった。 - 2026年8月15日
ハウスメイドフリーダ・マクファデン,高橋知子読み終わった主要な作中人物の人数が限られていて、海外作品で時折生じる登場人物が覚えられない、ということが無い。1章がかなり短く、展開が細々と区切られていて読みやすい。さくさくと読めた。 が、男性1名を除いてキャラクターの好感度が総じて低い。前半までは特に、全員倫理観とか常識とか無いのか………?という気持ちに終始襲われる。被害者意識のマウント合戦みたいな節があり、可哀想な己への自意識の強さと正当性の主張は読んでいて少々胃もたれする。 第二部に入ると物語のスピード感が上がり、隠されていた真実が徐々に紐解かれていって面白いのだが、それにしたって共感できる人物は居ない。個人的には、もう少し善性寄りの存在が欲しかったかも。 でもサスペンスもののエンタメは十分にあり、終盤スカッとしつつ最後までスリルが味わえる所は良かった。 三部作は読み切りたい! この展開で続きがあるの?という驚きもあるが、続編はより面白くなることを期待。 - 2026年8月13日
青天若林正恭読み終わった表舞台で本職を持つ人の書く作品に対する雑念が取り払われた感覚。 今まで何となく、文筆家の本とそれ以外で区別してしまっていたけど、そんなの関係なくシンプルに面白い小説だった!! アメフトの基礎知識が無く、2000年前後の時代背景も疎い。設定だけならば解像度が低い故になかなか読むハードルが上がるけれど、文章の魅せ方が巧みで全く苦にならなかった。 1Qは冒頭の展開から面白く、引き込まれる。2Qは打って変わってかなり雁字搦めな感覚に襲われるが、学校や教室の窮屈で鬱々とする世界が細かく描かれていて、苦しいのに読み続けてしまう。3Qからのオーバータイムは、より加速度を上げる物語に目が離せなくなり、一気に読み耽ってしまった。 スポーツを題材としていることもあり、中盤以外はスピードと暴力性と純粋な闘争心に満ちた作品。 冒頭で登場する強豪校の選手と対峙する場面。 主人公が心の中で「殺す。死にたい。」の両方を抱く所がとても印象的だった。 真逆のようでいて、この2つの思いに支配される感覚はすごく分かる。 合間で時折、倫理の話が出る場面も好き。私が学生の頃は倫理の授業が無かったので、アリと岩崎先生の対話は読んでいてとても面白かった。 形ばかりの和解、みたいなシーンが無いのも良い。全力でぶつかった結果、途絶える縁もあれば最後には笑顔をかわす仲になることもある。摩擦がないと生まれない関係性が丁寧に描かれていて、好感が持てた。 次に再読する時はもう少しアメフトのルールを踏まえて読んでみたい。きっともっと面白くなるだろうな。 - 2026年8月11日
クロエとオオエ有川ひろ読み終わったジュエリーにまつわるお仕事×ラブコメ小説。 とっても読みやすく楽しくわくわくする本! 元々鉱物や宝石に興味があって、尚且つ有川さんの書くお話のファンでもあるので、発売された当初から読みたくて仕方がなかった本。想像していた通り大好きな要素が詰め込まれていて、読んでいる間ずっと幸せだった! クロエの創り出した指輪達がインスタで見られるように紐づいているのも素敵だった。煌びやかで美しい宝石が独創性の高い造りの装飾品に変化を遂げていて、本当にクロエとオオエが存在しているような気がする。 写真を惚れ惚れと眺めている時間も含めて、心の弾む読書体験だった。 モデルとなったモイメメさんの店舗にも近々行ってみようと思う。 私はドルジーチップアメジストのメデューズとモンストルの型のリングが欲しい……! - 2026年8月9日
ババヤガの夜王谷晶読み終わっためちゃくちゃ面白かった!! 想定していた何倍も好き。しっかりダガー賞作品の持つミステリ要素も味わえて、文句なしの読書体験だった。 映像におけるヤクザもの、暴力性を主軸とするものはグロい画を観るのが苦手であまり観ないのだけど、文章を読み想像するのは平気で、むしろ本作はアクションとしての面白さを感じることが出来た。映像化はかなり難しそうだけど、この作品が映画等になったら観たいなと思う。 物語のスピード感が素晴らしく、ページをめくる手が止まらない作品だった。 別の人物に視点が切り替わると、没入感が途絶えてしまいがちだが、文脈に沿って主体を変える所が絶妙で、それ故に突き進んで読むことが出来た。後半で流れを変えてくる構成力も見事で、楽しい読書だ……!!と大興奮した。 著者のインタビューで、現代日本の女性を主軸にリアルな物語を書こうとした時、どうしたってミソジニーの要素は避けられない、という旨の話が印象に残っている。 新道と尚子は、対照的な人物像でありながら、圧倒的に男性優位な裏社会において「女」という記号で同等に侮られ、尊厳を軽んじられる。ふたりの世界が違っていれば、彼女達の関係性も大きく変わるだろう。男性と女性、加虐と被虐、それぞれの連帯を描いている作品としても非常に読み応えのある物語だった。 王谷晶さんの作品を今回初めて読んだので、過去作も読んでみようと思う。 - 2026年8月8日
読み終わった読みやすい!さくっと読めた。 主体の思考の流れを追いかける文章は、過去に読んだ芥川賞候補作品にも通ずる所があるけど、主人公の思考が割と親しみやすいというか、近しい感覚があり、最後まで楽しく読めた。 味噌屋さんの直営店で働く主人公が、あまり関わりのなかった元職員のお通夜に参列して、働かなくなった恋人との生活に区切りをつける。 主人公が決断して行動する中に、わかりやすく成長の描写が無い所が良い。 間違えた、とは思わないけど、これで良かった、と真っ直ぐに感じている訳でもない。 そのぬるっとした日常の変化と、それに何となく順応していく姿に現代らしさを感じた。 味噌チョコが美味しそうで、京都の町屋で働く姿も想像しやすく、関西弁(京都寄り)で進む会話のリズムも心地よい。表面上は雰囲気のあるお店も、古い形態の会社を母体としていて、その古さが良くも悪くも職場の人達の言動や態度に表れているのが読んでいて面白かった。 - 2026年8月7日
マイボディ・オン・ザ・ムーン 上矢野アロウ読み終わった楽しみにしていた国内SF長編小説。 詳細な内容を調べずに読んだのでどうなるのかわくわくした。 章ごとに視点が切り替わる構成で、国籍や世代の異なる4人が次第に交差していく様子が面白い。ただ、やはり前半パートなこともあり、それぞれの職業や立場等を把握する体力が必要。それもあって、第一部は没入感はあまり感じられなかった。 しかしラスト数章から第二部はかなり高い熱量で読み進めることが出来た。一気に物語が加速した感覚があり、とても良かった。 主となる4人は各自別の属性を持っているが、共通項となるのが人間の身体と頭(体を司る場所)について。形を変えながらも提示される問いや思考が、月の裏側で発見された頭のない体と次第に繋がっていく様はとても読み応えがある。 まだまだ一番の謎は明らかになっていないので、下巻も楽しみ。 - 2026年8月4日
塩の街有川浩読み終わった図書館戦争が本当に大好きで、自衛隊三部作もずっと読みたいと思いつつ未読だったので、ようやっと読めた。 ライトノベルの良さとポストアポカリプスを題材とした物語の重厚感を絶妙な匙加減で織り交ぜた作品。超面白かった!! 真奈と秋庭のキャラも個性があってとても好き。図書戦の小牧さんと柴崎を100倍毒っ気に塗れさせたみたいな入江さんも、人間の綺麗なだけではいられない部分で存分に立ち回ってくれていて、良い味出してた。 デビュー作でここまでしっかりと作家の癖というか、オリジナリティが立っているのが純粋に凄い。物語のベースはシリアスで読み応えがあるのに時折コミカルで、キュンとして、感情の機微を描く文章にはハッとさせられる。 読んで後悔しない純度100で面白い作品だった。 次は『空の中』!空自も楽しみだ〜! - 2026年8月1日
役職定年 (角川文庫)荒木源読み終わった大前提、とっても味のある素敵な表紙です。読んだ後に見返すと微笑ましくもなる。ただ、本を読む前に想定していた100倍くらい面白かった!!!!!本当にコミカルで楽しくてあっという間に読んだ。 もっとこの世に知られてほしい作品。 生命保険会社の人事課に転職した主人公が、隙あらばサボるシニア社員(いわゆる窓際族)をあの手この手で切ろうと奮闘する話。シニア社員も伊達に歳を重ねていないので、同盟を組み対抗する。追い出したい側と居座りたい側、二組の抗争自体とてつもなく面白く、読み応え抜群なのだが、その大筋と並行して起こるとある問題が物語に拍車をかける。ハラハラドキドキして、終幕に辿り着くとしっかり腹落ちできる展開。 エンタメお仕事小説として大満足の一冊だった。 特に好きだった一文 「理解するための知性が欠けているわけではない。分かり合う手間を厭う側にも問題はある。」 会社に勤めていると、どうしても世代間や部署毎の軋轢が大なり小なり生じる。複数の人が集まって共同でお金を稼ぐ上で、致し方ない部分もあるだろう。 しかし、そうした局面に遭遇した時に各々の主張を「どうせわかってもらえない。」「説明するだけ無駄だ。」と勝手に諦めるのは良くない。相互に歩み寄る姿勢が肝要なのだ。 当たり前だけど忘れがちな考え方を再認識させてくれる小説だった。 - 2026年7月31日
謎の香りはパン屋から2土屋うさぎ読み終わった続編も面白かった!美味しそうなパンの香りが漂うほのぼのとした日常ミステリー。 2巻目になると登場人物のクセや特徴にも馴染んできて、一層読みやすく感じられた。パンも全体的に続編のラインナップが好きなものが多かったので嬉しい。 謎解き場面も入り方が前回より自然になった気がして良かった。著者は事件の内容から構成を組んでいるのかな?謎を起こすきっかけとなった人達の犯行の動機が、結構極端な言動から来るものが多かった気がする。でもお話のまとめ方が上手いのでそこまでノイズにはならなかった。 パンの豆知識が入るのも楽しくて、作る工程が詳しく描かれている点も好き。 私達が普段訪れるパン屋さんのパンが、人の手によって作られたものだということを改めて実感させてくれる。 小春の漫画家としての今後や、ノスティモで働く皆のその先がもっと読みたいので3巻も出て欲しいなあ…! - 2026年7月30日
謎の香りはパン屋から土屋うさぎ読み終わったパンはお米よりも消化が早く、軽めの食事に最適。この作品は正に読書の質感もパンそのもので、とても読みやすく和やかな日常ミステリー作品となっている。 腹にズドンとくる重みは無いが、久しぶりに本を読みたいな、ミステリーあまり読んだことないけど読んでみたい!と言った人にはぴったりの一冊。 章立てが5つのパンで構成されており、焼き立ての美味しそうな香りが漂うパン屋さんを舞台に物語が進む。読んでいると登場するパンが無性に美味しそうで、パン屋さんに足を運びたくなる。 インタビュー記事を読むと、実際に豊中市にあるお店をモデルに、作中のいくつかのパン屋さんを描いているそうなので、私も小春達のようにカレーパン巡りがしてみたくなった。2巻も楽しみ! - 2026年7月28日
めぐる糸 明治浪漫霊異譚永井紗耶子読み終わった好きな要素てんこ盛りでお話もとても良かった! 明治39年の東京を舞台に、霊が視える苦労性な帝大生の青年と心霊現象に目がない子爵家の次男が繰り広げる霊異譚。 霊媒体質キャラ➕霊感ゼロだが強い守護を持つオカルト好きなキャラは、怪異を扱う作品では鉄板コンビ。何パターンでも読みたくなるし、間違いなくわくわくさせてくれる。 本作の2人はその役割を担いつつ、貧富の差階級の差が薄ら残る時代特有の立場関係も併せ持っている。この明治の空気感が何とも味わい深く、読んでいて面白かった。 時折、その年代の著名な人物や場所が文章の中に登場しており(ラフカディオ・ハーンや夏目漱石、凌雲閣など)、日本史や文学史を少し齧っているとより一層楽しめる。 怪異の謎に迫るお話ではあるが、読み心地は軽やかでアニメや漫画にメディアミックス化できそうな雰囲気がある。 他方で、霊達の残留思念を描く描写は丁寧で奥深い。廃仏毀釈や近代化改革に伴って切り捨てられた存在に焦点を当てていて、それらに人情を持って行動する主人公達には好感が持てる。 作品全体の緩急のつけ方が絶妙で、まだまだ深掘りできる部分もありそうなので、切実に続編が作られてほしい……! 本作の著者が、最近観てかなり面白かった映画『木挽町のあだ討ち』の原作者だと知り、木挽町も原作を読んでみようと思った。 時代小説ももっと色々読んでいきたい! - 2026年7月26日
溶けていく氷にとってぼくらは永遠最果タヒ読み終わったタイトルに心惹かれて手に取った一冊。 短歌は時々読むけれど、現代の詩集はあまり触れる機会が無かったので、新鮮な気持ちで読んだ。 全編通して、「あなたとわたし」「ぼくときみ」の間に流れる感情、対人によって湧き出てくる心の機微に焦点をあてて、言葉が綴られている。 同じ気持ちだ、と思える言葉もあれば、よくわからない、と感じる言葉もあった。 それは、他者に向ける感情や愛について私がそこまで深く考えてこなかったからかもしれない。 だけど、これはどういう意味なんだろうと一つの詩に出会って思考するのはとても心地が良くて、詩集を読んでいる間ずっと、自分が抱く心を見つめ直す時間が出来た。とても素敵な読書時間になった。 「天使について」「チャームポイント傷」「恋する塩分」「大晦日の詩」が特に好き。 誰かを大切に想う最中のわたしよりも、誰かを想う一歩手前の心や、大切とは違う感情も混じり合う心情に興味があるのかもしれない。 最果タヒさんの言葉選びがとても好きなので、他の詩集も読んでみたい。エッセイも読みたい! - 2026年7月26日
俺の恋バナを聞いてくれ新川帆立読み終わった新川さんの作品、今までもアクが強い人物が多かったけど、今回は総じて個性強め。現実では関わりにくそうだなと思う反面、物語ではそういう人々がとても魅力的に見えてくる。 個人的にはハイスペの起承転結が読んでいて気持ちよかった。あとオレサマも登場人物が皆憎めない良さがあり好き。 破れ鍋に綴じ蓋なカップルばかりで、一見すると大衆から批判されかねない人もいる。 ただ、それが著者の紡ぐ文章の中でコミカルかつ鮮やかに描かれており、読んでいるといつの間にか愉快な気持ちになれる。 がっつりした恋愛小説というより、ラブコメ(コメディ色強めだが作中人物達は真剣)な作品で、その系統が好きな人にはとても刺さる一冊。面白かった! - 2026年7月24日
ムーミン全集[新版]2 たのしいムーミン一家トーベ・ヤンソン,山室静読み終わった1作目以上にムーミンの世界が愛おしくなった!解説にもあるように、彗星の時よりもかなり物語全体がほのぼのとしていて、より童話らしい雰囲気が漂う。 飛行おにやモラン等の少し不気味な存在が、明るい真っ直ぐな児童文学に少し北欧色をプラスしていて、それも素敵。どのキャラクターも、ちょっと意地悪な所や利己的な部分があって、でも根は心優しく親切。そこにどこか人間臭さを感じて、彼らの憎めない愛らしさに魅了される。 スナフキンとムーミンの友情や、ムーミンママがムーミントロールを見抜く時の深い愛がすごく良かった。 心があたたかくなって、朗らかな気持ちになれる一冊。 - 2026年7月22日
けんぐゎい朝倉かすみ読み終わった読み応えのある時代小説! 手元に届いたタイミングで本作の直木賞受賞が決まり、心して読まねばと意気込んだ。 江戸を舞台にしていることもあり、女性の社会的な役割や年齢の捉え方が現代とはかなり違う。 その差にウッとダメージを受けることが多いのだけど、よくよく読んでいると形は違えど現代にも共通する部分があるのでは?と思えてきて、追撃を喰らう。 前半は特に、作中の強固な倫理観、美醜や性差の常識に嬲られる主人公の様子が辛くて呻きながら読んでいた。途中で耐えられなるかもと危惧していたが、ふゆとりよ、つるやかめの江戸言葉特有の軽快さ、少し不思議な存在が折々にふゆの中から現れる場面に救われた。 後半からは一気に道が開けたように思えて、ふゆの築いたガストホイスが読者の私にとっても拠り所のように感じられた。 生まれおちた瞬間から、私は“わたし”が定まっているのだろうか?“生まれもった性分”と称されるものは、本当に1ミリも外的要因は無いのだろうか?環境や外見に左右されない心根は存在するのか?人という生き物が生まれてから死ぬまで、私達の心身に宿る「いのち」の所在について考えさせられる物語だった。 特に心に残った一文 「おいらはおいらをどうでもいいと思わなくなった。なにしろヒデさんが大切にするおいらだからな、どうでもいいはずがないんだ」 他人から受けた掛け値なしの愛によって、自分を大切にすることができる。 対価を求めない親愛の尊さが沁みる文章だった。 - 2026年7月19日
殺しへのラインアンソニー・ホロヴィッツ,山田蘭読み終わったどんどん続きが気になっていくホーソーン&ホロヴィッツシリーズ3作目。 今回は英国本土を離れ、文芸フェスで訪れた島が舞台。田舎の島らしい牧歌的な描写の中に、そこはかとなく不穏さ漂う舞台が良い。 殺人事件が発生してから始まる話ではなく、途中までは文芸フェスとイベントに関わる人々のやり取りが導入となっている所も新鮮味がある。 解説にもある通り、本筋から外れる謎解きが発生して、その謎解きから派生して手掛かりを掴んでいく構成が本当に秀逸。それで?それで??と続きが気になり、どんどんページを捲っていってしまう。 作品単体の殺人事件の真相についてもそうだが、シリーズ全体でホーソーンの謎に迫る手法も面白い。そして、その謎を追う存在が著者であるホロヴィッツである所も魅力。 ミステリーのシリーズものを読む時、作者はこのお話をどう進めていくのだろう?と考えながら読んでいるけど、本シリーズは著者も読者側に立ってくれているような気がして、100%仕掛人という感覚がしない。 ホーソーンの魅力的な人物像は勿論、ホロヴィッツの立ち位置が絶妙な面白さを生み出しているのだと感じる。
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