shima "水たまりで息をする" 2026年6月17日

shima
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@7inp1
2026年6月17日
水たまりで息をする
2年前から気になっていたこの本を、書店を辞める際に購入。 何の問題もなく東京で夫婦二人で暮らしていくだろうと思っていた主人公と、突然風呂に入らなくなった夫の話。 主人公視点の小説で、彼女の来歴や心理が語られるが、私はひたすらにこの風呂に入らなくなった夫の「結末」が気になって仕方なく、なんなら読んでいる途中からはずっとハラハラしていた。 夫が仕事を続けられなくなり、海のある主人公の田舎、近くに川が流れる古い家に転居する流れを読み、ああ、と天を仰ぎたくなった。 彼女の昔飼っていた魚の話が出てきた段で、その魚が夫の姿を取ったのだと思ってしまった。 この小説で夫の顛末は語られない。語られないことが、彼女が今まで「その方がいい」と考えて生きてきたことの結果なのだと知らしめられるようで、でもそれは決して罪でも悪でも無いことに途方もない気持ちになると同時に、顛末の語られない夫は、田舎に帰るまでに彼女をがんじらめにした「世間」「常識」「正常であること」と言った鎖から解き放たれたのだろうという、また別種の途方もなさを抱かせる。 過去に手放した魚と顛末の語られない夫。膨大な水の中から彼女の前に新たに現れた水たまりの中の魚の美しさに、複雑な読後感でありながら、狂えない人間にしか出来ない決別の快美感があった。
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