
くめそんめ
@kumesonnme
2026年6月22日

売野機子短篇劇場
売野機子
読み終わった
売野機子作品は、連載中の『ありす、宇宙までも』しか読んだことがなくて、この作者の物語の閉じ方には初めて触れた。
特に好きな一編は『成人式』だ。
綺麗事と思う読者も中にはいるかもしれないけど、私はこの優しい終わり方が好きだ。十代で既に人生が荒れてると、「このままだと終わるぞ」としか言われない。「もうだめだな、お前は」とまで諦められることも多々ある。そうされると、他人には見えてない、自分なりに踏ん張ってた部分がどうでもよくなってきて、さらに破滅していく。破滅以外の将来なんて、どうしてもない気がしてくる。きっとそれをわかってて、あえて「大丈夫な未来」を描いたんだろうなあ、と思った。
創作での救いのひとつはやっぱり、私は「見つけてもらうこと」だと思う。そんでもって、この作品は私を見つけてくれる作品のひとつだ。
「大丈夫」という言葉はときに無責任なものになるから、「“泣かなくて”大丈夫だよ」という言い方を選んだのかもしれない。
あとがきで作者が触れているように、「わかりにくい作品」が何編かある印象ではあった。しかし、そこで「モヤるのは絶対嫌」になるか、「心象風景のような作品はむしろ高評価」になるかは、好みで分かれそうだ。私は、「うーん?」と引っかかりを覚えながら読んだ箇所は、正直、もう少し物語について行かせてほしかったが、総合的には、友人に勧めたいくらい好きな短編集になった。
『ありす、宇宙までも』でも感じていたが、全体を通して、漫画表現における「引き算」の上手さに舌を巻く(しばしば読解が難しいところは、引き算のしすぎに感じる部分もあるが、この短編集には同人誌に載せたものもあるとのことなので、全てを商業的なエンタメとして読もうとする姿勢が、そもそもズレたものなのかもしれない。)。「画面の構成(コマ割り)が独特」という圧倒的な足し算の要素を、「すっきりとした絵柄(ただシンプルというわけではなく、読みやすいのに美しい絵ですごい。ほとんどアナログで作画しているとおっしゃっていて、つまりおそらく、精密に整った線を引けるよう腕をサイボーグ化したのだろうと思われる。)」や「文字を極力減らす」という引き算の技巧によって、バランスが取れてしまっている。
また、物語だけ取り出すと、人間のかなり汚いところを描いているのが意外だった(『ありす、宇宙までも』にも、汚い部分がないわけではないが、この短編集は更に、いい意味でアングラな印象。)。読みやすいし、キツすぎる(不快な)ところもなかったし、好きな題材が多かったこともあり、あっという間に全編読めた。
ただ個人的には、先が読める展開も多いように感じた。悪いというより、この作品はエンタメとして脳汁を出すための作品とは違う気がする。ここは好みの問題だし、意外な展開があればいいというわけでもないが、「痺れる」表現が好きな私としては、その感覚はあんまりなかった。「痺れる」の味覚は反応しなかったけど、十分以上に味わい深かったのは間違いない。今後、また読み返したくなるだろう。

