いぬすけ "すべての、白いものたちの" 2026年6月25日

すべての、白いものたちの
すべての、白いものたちの
ハン・ガン,
斎藤真理子
しなないで しなないで、おねがいーー。  おくるみ、産着、塩、雪、氷、月、米、波、白木蓮、白い鳥、白く笑う、白紙、白い犬、白髪、寿衣……白は脆く傷つき汚れやすい、けれども全てを含み込むマキシマムの色だ。作者はいくつもの白いものをめぐる断章を通じて、言葉によって世界が分たれる前にあるものを書こうとしているような気がした。白いものについて書くために黒いインクが必要なように、それすらも言葉によって書くしかないのだという矛盾。かなしい祈りのような文章の中から、そこへ、生まれて間も無く、言葉を持たないままに死んでしまった作者自身の姉(オンニ)の存在が、朧げに立ちあらわれてくる。 真っ白なページをさすりながら、私は、私が生まれる前の世界と、私が死んだあとの世界を思い浮かべた。そのあわいに、今も私は佇んでいるのである。
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