
ピエ
@pie_202
2026年6月25日

戒厳令下チリ潜入記: ある映画監督の冒険
G.ガルシア・マルケス,
後藤政子
読み終わった
@ 本の読める店fuzkue初台
初台のフヅクエさんでお借りして読んだ。カウンター席上の真ん中あたりに、ラテンアメリカ文学の良い棚がありますね…
ピノチェト独裁を逃れて亡命し、チリへの帰国を禁じられた映画監督ミゲル・リティンが、戒厳令下の祖国へ潜入し記録映画を撮影した時の記録。本人へのインタビューを元に、ガルシア・マルケスにより書かれている。そういえば彼の出発点はジャーナリストであった。
変装し偽名で12年ぶりに帰国したリティンがまず目にするのは、予想に反し華やかに発展しているサンティアゴ。しかし人々をよく見ると、みな外出禁止時間を気にして足早に歩き、他人と目を合わせず、密告を警戒して声を潜めて話している。独裁下にある人々が疑心暗鬼になっている様はどこの国でも同じなのだな…
サルバドール・アジェンデやパブロ・ネルーダが反独裁のシンボルとして伝説化している様には、少し涙が出てしまった。
当時のチリ社会の記録というだけでなく、リティン自身の語りからは亡命者の苦悩が滲み出ている。私服警官に付け狙われるなど危ない場面も多いにもかかわらず、変装をかなぐり捨てて「私はリティンだ、祖国に帰ってきたのだ」と叫び出したくなるという気持ちは、亡命者にしか理解できないのではないか。大胆な行動にハラハラしながらも、苦しくなった。
訳者解説を読んで気付いたが、本書が出版された1986年はまだピノチェトの独裁が継続している(原書と同年に翻訳を刊行するスピード感!)。チリは1990年に民政移管したが、その後も軍総司令官としてピノチェトは影響力を持ち続けたそうだ。この後のチリについては、最近の本で読んでみたい。
ところで、見た目も訛りも所作も変えたリティンが、帰国時に唯一身につけていた過去の自分の持ち物が、カルペンティエルの『失われた足跡』で驚いた。私も今『失われた足跡』を読んでいる、というよりフヅクエに来た目的がこの本を読み終えるためだったからだ。本が本を呼ぶことはやはりあるなあと思った。






