だむ "赤頭巾ちゃん気をつけて (1..." 2026年6月29日

だむ
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2026年6月29日
赤頭巾ちゃん気をつけて (1969年)
代々木のマンモス予備校に通い始めて 間もない頃、高校時代同じクラスだった Tから電話があった。 なんでも同級生だった女子生徒~仮に Aさん~がクラスで一緒だったみんなに 知らせて欲しいと何人かに言付けし それがめぐりめぐって電話をくれた ということらしい。 Aさんとは高校時代言葉を交わしたこと があったかどうかそれすら曖昧な程で 大人しかった人、落ち着いた良い人と いったイメージしか思い浮かべること ができなかった。 Tの話によるとAさんは実は我々の一学 年上で当初入学した高校をある事情で やめることになり改めて受験し直して 我々と同級生になったのだという。 そしてその前の高校をやめた理由と いうのが実は彼女が政治的な活動に 携わっており、そのことと関係が あるらしかった。 話を聞いて困惑した。彼女と政治的な 活動というのが結びつかなかった。 彼女が何か活発に発言する、中心に なって何かするという様子はまるで 記憶になかったし何より学生が政治 的な運動にかかわる(しかも高校生) なんてひと昔前の話としか思えず 同世代のこととして受けとめること ができなかった。 我々の通っていた都立高校というのが 頭の方はさておいて自由さだけが 取り柄でなぜか3年間クラス替えが ないという伝統があった。彼女自身 は3年間ずっと自分が一歳年上で そのことを黙っていたことにずっと 罪の意識を抱いていたらしく卒業を 期にみんなにそのことを伝えお詫び したい、良くしてくれてありがと う、とそんな風な話だった。 でも、それにしても黙っていたこと に罪の意識を感じるなんて・・ いや、そうじゃなくて、彼女が 3年間自分のある部分を押し殺して 耐えていたということが・・・ 電話を終えてあらためて彼女のことを 思い浮かべてみた。大人しい人。穏やか な人。とうてい彼女の中にそうした 厳しいものが、芯の強さがあるようには 見えなかった。そうそう、休み時間には 自分の席で静かに本を開いていることも あった。 あるときそうした一冊の本のタイトル が目に入った。  「赤頭巾ちゃん気をつけて」 あ、その本知ってる、庄司薫でしょ、 読もうと思ってたんだよね。 ・・・けどそんな風に話しかけることは なかった。「大人しい」といった印象 しかなかったその人に話しかけさえす ればもしかしたら彼女の気持ちを少しは 軽くする ・・いやそんな力はなかったな・・。 昨晩庄司薫の訃報に接してこの出来事を 思いだした。本棚の奥まったうんと遠い ところに確かにあった「赤頭巾ちゃん 気をつけて」を引っ張りだす。奥付は 昭和53年11月20日 62版。 まだ17歳だった。
赤頭巾ちゃん気をつけて (1969年)
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