
蛾のおどり
@Nachtfaltertanz
2026年7月1日

遠野物語remix 付・遠野物語
京極夏彦,
柳田國男
読み終わった
去年のことである。
やっと麓近くまで辿り着いた時のこと。
恐ろしく背の高い男が、急ぎ足で山を登って来るのに行き逢った。
薄暗かった所為か、色は黒く見えた。眼はきらきらと光り、肩には麻で織ったような古い、浅葱色の風呂敷で包んだ小さな荷物を背負っている。
それは恐ろしかったという。この刻限に山の方に登って行くということ自体、普通ではない。
あり得ないことだ。
肝の据わった子供の一人が、どこへ行くのかと、声を掛けた。
「小国へ行く」 と、男は答えた。
しかしこの山路はどう考えても小国村に通じる道ではないのである。方角がまるで違う。男は山に向かっている。 子供達は立ち止まり、不審そうに男を見送った。
「山男だ」 と、誰かが言った、その途端に怖くなり、子供達は口々に山男だ山男だと叫んで里まで逃げ帰ったという。

