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蛾のおどり
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@Nachtfaltertanz
読書記録 コメントは本からの引用です
  • 2026年7月2日
    高丘親王航海記
    「ねぇ、ミーコはほんとうに、死んでもよいから天竺へわたりたいと考えていらっしゃいますの。」 その秘密めかした抑揚のある声の調子に、親王ははっとして、あらためて姫の顔を横からうかがい見た。微笑をふくんではいたが、姫の面上には、これまでに親王が何度も見たことのある、あの残忍のいろが一瞬、さっとはしりすぎたように思われた。それでも親王はことさら気にかけず、 「もちろんですとも。渡天はわたしのいのちを賭けた大業ですから、死ぬことは少しも厭いませぬ。」 「すると、天竺へついてから死なれても、死なれてから天竺へおつきになっても、結果的にはそれほど変りませんわね。」 「それが時間的に一致すれば、それに越したことはないでしょうがね。望み薄だとあらば、どっちが先でも一向にかまいませぬ。」
  • 2026年7月1日
    遠野物語remix 付・遠野物語
    遠野物語remix 付・遠野物語
    去年のことである。   やっと麓近くまで辿り着いた時のこと。 恐ろしく背の高い男が、急ぎ足で山を登って来るのに行き逢った。 薄暗かった所為か、色は黒く見えた。眼はきらきらと光り、肩には麻で織ったような古い、浅葱色の風呂敷で包んだ小さな荷物を背負っている。 それは恐ろしかったという。この刻限に山の方に登って行くということ自体、普通ではない。 あり得ないことだ。 肝の据わった子供の一人が、どこへ行くのかと、声を掛けた。 「小国へ行く」  と、男は答えた。 しかしこの山路はどう考えても小国村に通じる道ではないのである。方角がまるで違う。男は山に向かっている。 子供達は立ち止まり、不審そうに男を見送った。 「山男だ」  と、誰かが言った、その途端に怖くなり、子供達は口々に山男だ山男だと叫んで里まで逃げ帰ったという。
  • 2026年7月1日
  • 2026年7月1日
    ユリイカ(2026 4(第58巻第4号))
    ユリイカ(2026 4(第58巻第4号))
  • 2026年6月21日
    書楼弔堂 霜夜
    「書物の中には、世界の半分が入っています。でもその半分の世界は」  逃避のためにある世界ではないのですと天馬は言う。 「虚と実は等価ですけれど、決して交換出来るものではないのです。それは、謂わば此岸と彼岸のようなもの――なのだとか」 「現実を忘れて書を読み耽るのは無上の悦びですが、それは現実の代替えになるものではないのですわ。遁げ込んでも閉じ籠もってしまってはいけないのだ、と教わりました・・・遁げることは別に悪いことではないと思いますわ。遁げられるなら、どんどん遁げればいいんじゃないでしょうか。でも、永遠に遁げ続けることは――出来ないんですわ。遁げ込んだって、必ず帰って来ることになるんですから」  この世に。 ・・・一生目を瞑ったまま生き続けることは出来ません。わたくしたちは、あるものの方に居るのですから」 「だって読書って」  面白いでしょうと天馬は言った。 「わたくし達は、読書することでこちら側からあちら側を覗く訳でしょう。同じようにあちら側からこちら側を覗いたなら、わたくし達の人生も、また一冊の本のようなものでは御座いませんこと。尤も、未だ書きかけなんですけれど」
  • 2026年6月1日
  • 2026年5月28日
    人形歌集 舟もしくは骨
    人形歌集 舟もしくは骨
    うつくしき裾を広げてゐることを(少女らよ)永遠の飛翔と思へ 雪、縷縷として振り来たり火も水もきみの永住の場所ならねども わが骨をまるのみしたる蛇を肉と呼ぶいたみやまざる肉と 精神となづくる。肉に宿るものすべてを。肉に宿るやまひも。
    人形歌集 舟もしくは骨
  • 2026年5月24日
    狐花 葉不見冥府路行
    「この手は汚れておりましょうか」 狐は両の手を突き出す。 男は狐に向き合った。 「貴方は勘違いをなさっておられる。私は、私が法を守るのだと申し上げております」 「何と仰せか」 「私が守ると申し上げているのです。非を厭うのも理に倣うのも、それは私。凡ては私のことで御座います。人は、理を見失えば惑わされ、操られ、非に屈すれば倫を忘れ、心を盗られまする。さすれば世を見誤る。行く末が曲がる。時に死を選ぶ。斯様な迷妄に囚われた者を夢から覚ますがー私の仕事」 「それが憑き物落としと言うかえ」 「然様に御座る。目の前に、迷い騙され惑わされ、落ちずとも良い死の淵を覗いておる者が居たならば、背を押すのではなく手を引き思い留まらせる。非を厭い理を重んじるなら何方様でもそうすることでありましょう。それだけのことに座います」(p.16)
  • 2026年5月20日
    人形歌集 骨ならびにボネ
    わが夢ゆ抜けやまぬ羽根敷きつめて巣となせば夢魔のひろき翼よ きみの眠りのほとりに憩う鳥たちの、白骨となるまでの眠りよ 赤・青・黄がそろつてゐれば何処へでもゆける立ち止まれる躊躇へる
    人形歌集 骨ならびにボネ
  • 2026年5月19日
  • 2026年5月19日
    人形歌集 羽あるいは骨
    人形歌集 羽あるいは骨
    羽のない小鳥のために拵へし車椅子より木の芽伸びつつ <カヤクグリ> プラスチックのやうなるかろき骨を秘めて天へときみは逸りやまぬを <かろき骨のみこ> わたしのからだは何でできている やはらかく沈むところと飛び立つところ
    人形歌集 羽あるいは骨
  • 2026年5月18日
    文庫版 書楼弔堂 炎昼
    いかなる戦も愚策、とご主人は珍しく厳しい口調で仰いました。 「戦は愚策か」 「戦略とは、戦を略すと書くのです。戦わずに済ます方策を考えることこそが、人の上に立つ者の仕事ではないのですか。戦の道を選んだ段階で、もう国は護れていない」  それはご承知でございましょうとご主人は仰いました。 「その愚かな戦争に、そのような時代遅れの覚悟で臨んだならば、兵隊は皆死んでしまいまするぞ。いや、国が滅んでしまう。義を通すために国を滅ぼす、これはもう本末転倒ではございませぬか。陛下のために死ね、義を通すために死ねと謂われて、兵隊が皆死んでしまったとして――それで敵国が降伏したとしても、それは勝ちなのですか」 ----------.----------.----------. 時は移ろい万物は流転致しますとご主人は仰いました。 「諸行は無常でございますよ、塔子様。花は枯れ人は老い、死ぬ。移ろうこと、変わることは世の習い。当然のことにございます。ですから、変わることを畏れては――いけません」 「はい」  やっと気付きました。  変わってしまうのが怖い――それが、百日草を見た時の気持ちなのでした。  お祖父様のことも、結婚のことも、それ自体が厭なのではないのです。単に変化を厭うていただけなのでしょう。
  • 2026年5月10日
    文庫版 鵼の碑
    「仲良くしようと云うのは、同じになろうと云うことではないんですよ。違うものを違うままに容認し合うと云うことでしょう。でも、これが出来ないと云う人は殊の外多いんですよ。違うのは間違っている、直せと云う。自分と同じにしろと強制する。出来なければ」  排除する。 「人は一人一人皆違う。個と個は対等です。でも何か基準を設け、それに当て嵌まるか否かと云う形で見るならば、それは数値化される──数として認識される。そうなると、個個の違いなんかは無視されてしまうんですよ。多数は少数に勝ると考えてしまうのでしょう。その方が楽だからです。そして少数派は同化を強いられるか排除されることになる。時に、人権までが蹂躙されることになる。多数派が常に正しいとは限らないんですがね」 「それは」  何だか身に沁みて判るよと関口が云った。 ----------------- 「そうしたことは、今に始まったことではありません。しかし、その昔は、そうした自分とは異なる者と共存するための文化的装置があった」  妖怪ですと中禅寺は云った。 「それは解らない。そう云う人達を化け物扱いすると云うこと? それって、余計に差別的じゃない?」 「違うんだよ緑川君。化け物は化け物なのであって、人間じゃない。人は人ですよ。化け物は、異った文化習俗を持つ他集団との間に生まれる恐怖、軋轢や齟齬そのものなんだ
  • 2026年5月10日
    妖怪の理妖怪の檻 (怪BOOKS)
  • 2026年5月2日
    文庫版 書楼弔堂 破暁
    「見て見ぬ振り、云わぬが花の約束ごと。それを解さぬは――愚か者。そう云うことでございますよ。ないものはない。ないと識って尚、あるように振る舞う――この国にはそうした文化があったのです。それは、この国の良きところ、残すべき在り方だと私は思いまする。ところが、その文化が失われてしまった。あるかないかの二者択一、結局ないものもあるように考えてしまう。それこそ蒙昧、迷妄と云うもの。」 --------------- 「皆が右を向いて走っているからと云って、あなた様の目的も右の方にあるとは限らないのでございます。右を向いて左に進めば、後ろ向きに進んでいることにもなりましょう。ならば、本来の目的からの距離もどんどん離れることにもなりましょうな。隙間が大きくなる。それが――」  闕如として感じられるのですと主は云った。 「あなた様のお仕事は、決して後ろ向きではございません。無意味結構。非寓意結構でございます。小説とは本来そう云うものでございましょう。意味だ思想だ、そんなものはそれこそ幽霊のようなもの。小説を読み、そこに何を見出すか、どんな幽霊を見るのかは、読者次第でございます。 --------------- 善し悪しなど誰に判じられると云うのですと、弔堂は云った。 「人間は、先程の書きかけの書物と同じです。未完なのですよ、高遠様。未完で良いのです。本は書き終われば、或いは読み終われば完です。しかし、生きていると云うことは、ずっと未完と云うこと」 「未完か」  ならば明日のことなど判りますまいと弔堂は云った。
  • 2026年4月19日
    了巷説百物語(7)
    「空いた穴は決して塞がらぬ。その傷は一生消えぬ。忘れることも出来ぬ。だから──慣れるよりないと」 「そうだ。でもの、夢というのはあくまで夢でしかないのだからの。現実ではないのだ。だからもう、二度と同じ夢は見られんのだよ。しかし、それが判らぬ者は殊の外多い。一度味を占めるとな、同じ夢を欲するのよ。何度でも繰り返せる、またあの愉しい夢が見られると思ってしまうのだわ」  そんなことは絶対にないのだぞと藤兵衛は言った。
  • 2026年3月25日
    遠巷説百物語
    遠巷説百物語
  • 2026年3月25日
  • 2026年3月1日
    賽の河原
    賽の河原
    私の苦しみは私にしかわからないかもしれないが、外に目を向ければ、同じような苦しみに向き合った人々が遺した模索の痕跡が、仏壇から路傍の地蔵に至るまで、さまざまなモノや実践として残されている。無数の人の悲しみとそれとの和解の蓄積としてそれらを見るとき、悲嘆とは自分一人のものではないことが感じられる。(p.199)
  • 2026年2月22日
    水木しげると京極夏彦
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