イシイルカ "本屋さんのある街で (文春文..." 1900年1月1日

本屋さんのある街で (文春文庫)
本屋さんのある街で (文春文庫)
一穂ミチ,
三浦しをん,
凪良ゆう,
坂木司,
瀬尾まいこ
「続きは書店で」(瀬尾まいこ) 閉店間近の書店という、今どき多分よくあるであろう寂しいシチュエーションでもとても明るい、楽しいストーリーが素敵。本屋っていいよなあ。元書店員としては涙が出そう。 「歌うように生きて」(一穂ミチ) 魯迅の『藤野先生』を読んで日本に留学し、言葉と文化を勉強し続けてそのまま日本の商社に就職した中国出身の男の子と、極々一般的な今どきなドライな日本人の女の子。 二人の間には仲の良い友人の雰囲気とは別に、生まれた国による大きな溝や隔たりが、見えないけれどもはっきりと存在してる。 本屋がどうこうとは別なところで気持ちのいいラブストーリー?だよな? 彼の国の闇の深さに愕然とする。 そして日本の公安も無茶苦茶怖い。 穿大半个中国去睡你 「手にとって見てみろよ」(坂木司) 再販制度で取次を介して書籍を仕入れる本屋は構造的にもはや採算が取れる事業ではないことを思い知らされる。 地方都市のシャッター商店街街で新規に書店を開業するにあたって、取次さんが鬼コーチになって素人二人を徹底的に鍛える。 斜陽産業なのは間違いないから、生半可な覚悟ではやっていけないよ、と厳しい言葉の裏には優しさと思いやりが。 実際に手にとって確認できる、選べることの強みを最大限に。 「小鳥たち」(凪良ゆう) 離婚して実家に帰り、家業の書店を継ぐ女性。 心を病んで休職中のかつての同級生。 彼が言う公園のベンチのような、あるいは止まり木のような心休まる場所。 書店でのアルバイトの最初の仕事が市内各小中学校への教科書の配本だったので、とても懐かしく感じた。 元夫が泣き言を言いにやってきたときに、さり気なく救いの手を差し伸べてくれる常連さんや、奥で聞いていて励ましてくれる父親とのやり取りがとても優しい。 「贔屓の蕎麦屋、喫茶店、飲み屋、本屋、これで日々はなんとかなる」 「見晴らし書店の一日」(三浦しをん) 書店のルーティーンワークである早朝の開店前の検品と品出し、雑誌の輪ゴム留めやコミックのシュリンクなど、おそらく経験者でなければと思える描写と筆致。番線とか、普通出てこないはず。流石しをんさん。 東京の西の郊外、まほろ市、つまりは町田市、しをんさんも住んでいたこの街に、私もしばらく住んでいたので、なんとも感慨深い。 定期購読で、看護系の雑誌を病院に、女性誌や週刊誌を美容院に配達して回ったのもいい思い出。 町のセーフティネットとしての書店の存在の重要性。 作者の皆さん、みんな本屋さんが大好きなんだなあ、ということがしみじみ伝わる短編。
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