羊博士
@sheep_phd
村上春樹の作品はほとんど全て読んできた。
いつも通り、文章は平易で読みやすく、独特の比喩表現もある。
比喩表現に関しては、どんどん洗練された感じがなくなってきてるように感じる。中期くらいまでの作品においては「こんな風に世界を見る人がいるんだ」と思わされると同時にどこかでその表現が自然に受け入れられた。
構造やストーリーから提示されるものも今までの作品群の焼き回しとまでは言わないが既視感だけがあり、テーマが深化されているとは思えない。
結果として、今までの作品よりは抑えられたはずの性的な表現や暴力の生々しさが相対的に強く印象に残った。
暴力は現実ではメタファーの中であっても「ぎりぎりのところやっと選択されるもの」という解釈を『ねじまき鳥クロニクル』から私は得た。(他にも書きたいことは山ほどある)
この作品からはそんな切迫したような倫理やテーマを受け取ることができない。
これから村上春樹を読もうとしてる人にも薦めるには良さが出ていない。
次回作があればまた読んでしまうのだろうが、今回は読まなくても良かったと思ってしまった。