本葉風路
@homba223
2026年7月7日
読み終わった
7月7日読了。芥川賞候補の中からタイトルに惹かれて購入。
かなり口語的で流れるような主人公の独白で進んでいく作品。その文体と主人公の感性から実在性、現実性を感じることができ、自分と重ね合わせやすくどこか懐かしさを覚える。
極めて現代的な口語で進む文章のなかで時折p86
「心なしかとろみのある水面に、いくつかの思い出話の花が咲く。なんていう花やっけ。でもそれははじめから知らないし、知りえない。」
といった文学的表現が挟み込まれて、そのギャップが心地よい。
また、登場人物が単純な(主人公からみて)好きな人嫌いな人になっておらず、嫌なところがあれば毒づき、良いところがあれば喜び褒める等、その時々に評価が変化する様や、ちょっと前までの感情を棚に上げるシームレスさは、我々実生活と近いところにあるように思う。
作中を通して特に大きななにかが起きたり、主人公が誰かの言葉に心を動かされたりといったドラマは発生しないが、物事を通して主人公が考え、悩み、決断した後もこれで良いのかと考え続けながらまた生活を営んでいくという物語。文化芸術特有のスカした感じがなく、素朴ながらも爽やかな読後感を与えてくれている、こんな作品が芥川賞を獲ってくれると嬉しく思う。
