
霧
@yoruto
2026年7月7日

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あらすじ
佐吉が人を殺めた疑いを受け、自身番に身柄を囚われた。しかも殺した相手が実の母、あの葵だという。今頃になって、誰が佐吉に、十八年前の事件の真相を教えたりしたのだろう?真実を探し江戸を走り回る平四郎。「叔父上、わたしは、本当のことがわからないままになってしまうことが案じられるのです」。
本文p129より、抜粋。
「つまり旦那も、俺がーーその、おふくろを手にかけたかもしれないってーー思っておられるんですよね」
平四郎が何か言う前に、笑い出すような勢いで急き込んで続ける。
「そうですよね。そりゃ当たり前だ。どう見たって俺は怪しいもの。しかも、亡骸の転がってるその場にいて、ふん捕まえられちまったんですからね。疑われたって何も言い返せませんよ。そりゃそうですよ」
裏返ったような声で、本当に笑い始めた。平四郎は膝の上に肘をつき、その手に顎を乗せて、奥歯を噛みしめながら佐吉の一人笑いを見守った。
「疑うということと、不安に思うということは違うぞ、佐吉」