
人工芝
@_k55y
2026年7月9日

嫉妬の香り
辻仁成
読み終わった
恋愛小説でありながら、人の心に潜む「見えない感情」を静かに映し出した作品だった。
物語を読み進めるほどに、出来事そのものよりも登場人物たちの心の揺らぎへと意識が向かっていく。
確かな証拠よりも曖昧な気配や些細な違和感が感情を大きく揺さぶり、疑いというものは現実ではなく心の中で育っていくのだと気づかされる。
また強すぎる嫉妬は人生を狂わすのだと思い知らされる。
恋愛を描いた作品という枠には収まりきらず、
人が誰かを愛することの美しさと危うさ、その両方を静かな筆致で見つめた一冊だった。
読者自身の経験や感情によって、受け取る「香り」が少しずつ変わっていく作品なのかもしれない。


