tabe
@task0223
2026年7月7日
君たちはどう生きるか
吉野源三郎
読み終わった
かつて少年だったおっさんに刺さる小説「君たちはどう生きるか」
言わずもがなであるが、宮崎駿監督の同名映画「君たちはどう生きるか」をきっかけに、その原作(原案)となった小説である本作を手に取った。
この作品が世に出たのは今から90年ほど前、1937年だ。
世界情勢が不安定で、日本においても日中戦争が開戦した年。
ファシズムが蔓延する中で、自由主義を説くための文庫の一節として書き下ろされたのが、この「君たちはどう生きるか」という作品だ。
啓蒙のための文章というのは小難しい文体が多い中、主人公を中学生のコペルくんとすることで若者にも理解しやすくしたということだが、現代においては時代背景や文化が異なりすぎて、現代の中高生には当時ほど身近には感じられないのではないだろうか。
現代においてこの作品を楽しめるのは、現代と当時の文化の比較や、時代考証ができる中年だろう。
例えばコペルくんは友人を家に呼んで遊ぶ時に、ラジオの真似をして早慶戦の実況中継をする。
私が子供の頃には既にテレビが一般化していたので、思い付きもしない遊び方ではあるが、これが当時の中学生の遊び方だったのか、と思いを馳せると面白い。今であればYouTuberごっこ、TikTokerごっこのようなものだろうか。
また、この作品では、コペルくんが日常や学校生活、友人との関わりから得た気付きや感じたことを、インテリな叔父さんとのやり取りから理解を深めていく、という形式になっている。
そんなコペルくんの体験は、どこか自分の経験に重なる部分もあり、自分の若い頃の記憶も掘り起こすきっかけになる。
私にとっては、コペルくんと浦川くんという豆腐屋の息子との関わりがそうだった。私の家はコペルくんのように裕福ではなかったが、同級生には椎名くんという焼鳥屋の息子がいて、よく遊んでいたことを思い出した。
そんなわけで90年前の時代や、自分が子供だった数十年前に思いを馳せながら、楽しく読み進めることができた。あらためて、自分が人間としてどうありたいのかを考えるきっかけになったし、もっと色々なことを勉強したい気持ちになった。
当時は少年向けに書かれた作品ではあるが、人生経験を積んだ今だからこそ、叔父さんの言葉が綺麗事ではなく、深く心に染み入る。かつて少年だった中年が、これからの生き方を背筋を伸ばして考え直せる、そんな大人のための名著だと感じた。