
RIYO BOOKS
@riyo_books
2022年8月20日

山猫 (岩波文庫 赤 716-1)
トマージ・ディ・ランペドゥーサ
読み終わった
「われわれは自分たちの息子や、たぶん孫たちのことを、真剣に心配するかもしれない。しかし自分たちの手で愛撫できるものを越えては、義務はすこしもない。だからわたしは一九六〇年の偶然の子孫たちがいったいどうなるかなどと、ほとんど気にかけていられない」という公爵の没落意識は、階級的な没落意識であると同時に、一個のエロス的人間の没落意識であって、おそらくあらゆる時代、あらゆる文化の生んだすぐれたデカダンス文学が、この二つの精神のなかの「死」に直面したのである。
──澁澤龍彥
