ピエ "失われた足跡" 2026年6月30日

ピエ
ピエ
@pie_202
2026年6月30日
失われた足跡
失われた足跡
カルペンティエル,
牛島信明
初めて読んだカルペンティエル。 文体が少し堅く(古くはないが)、初めは読みづらく感じたが、もしかすると牛島信明の訳の癖もあるのかもしれない。黄金世紀など比較的古典を訳しているイメージがあるので… しかし、高山や密林などの情景描写が豊かで、次第に引き込まれた。 主人公があまりにも身勝手というか愚かなインテリといった風情で、物語が進むごとに「なんやこいつ…」とムカムカしていたのだが、幕引きできっちり報いを受けて満足した。周りの人々はみな主人公がどんな人間か分かっているのに、自分だけが何も見えていない、滑稽な人物だった。 しかし、音楽に対する知見の深さや、ラテンアメリカ生まれのヨーロッパ人という出自、ラテンアメリカに対する憧れと愛着など、主人公には作者自身が投影された面も多い。そんな人物に対してこの仕打ち、カルペンティエルはなかなかおもしれー男なのでは?と思い、興味が湧いてきた。 主人公もカルペンティエルも、ラテンアメリカを驚異的なもの、あるいは人類の全ての歴史を内包するものとして憧れている。しかし、自分の中のヨーロッパ性から逃れることができず、ラテンアメリカの一部になろうとしても異物のままである、ということなのだろうか。
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