@sotaono
2026年7月12日
p9
「「デボラ、眠っているの?」」
p19
「「目が、赤いですね。」」
p28
「二百年以上まえのコンピュータ・サイエンスの萌芽期に、マガタ・シキ博士は世界に支配的な役割を果たしている。彼女の構築きたストラクチャは、その先見性と合理性によってその後の人類の文明を支えた。優れていたからこそ、それらは残った。自然淘汰によって選ばれた種となったのだ。したがって、現在のチップはすべて、彼女が仕組んだ機能を保持している。それらのうち、普段は表に出ない部分もある。しかし、いずれなんらかの刺激で目を覚まし、責務を果たす。そのすべてを、彼女は最初から計算していたのである。」
p30
「「デボラと名乗る人物が、自分の中にいて、その人の言うとおりに動いた。自分はただ見ていることしかできない。そういう夢をよく見るそうです。今日が初めてのことではないとも話しています。」」
p34
「「変な夢を見るって言ってきたんです。」」
p43
「「それから、マガタ・シキ博士が開発した初期のシステムの名前です。」」
p44
「黒髪でストレート。今、拘束されている少女も同じ黒髪でストレートだ。」
p50
「「デボラは君に何を見せてくれた?」タナカがきいた。「綺麗な女の人です。」「どんな人?名前は?」「名前は……、わかりません。髪が長くて、目が青い人です。」」
p54
「「未来予測は、単なるシミュレーションです。知能は非常に高い。」」
p57
「「理由も正義もなく、完全なコントロールができるのでしょうか。」」
p65
「「知っている。私の娘。」デボラは答えた。」
p66
「「貴女は、どこにいるの?」と尋ねていた。僕ではない。サリノがきいたのだ。「どこにもいない。それとも、どこにでもいる。」「どこから来たの?」「どこからも来ない。ずっとここにいる。あるいは、どこにもいない。」」
p67
「「デボラ、眠っているの?」」
p70
「「この人に会うために、来たのね?」」
p71
「「デボラ、話ができるか?」」
p74
「どこか、マガタ・シキ博士に似ている。」
p75
「「共通思考とは、どんなものですか?」」
p81
「「忙しくなるよ、君と話をするたびに。」」
p83
「そもそも、純粋よりも不純の方が複雑であり、高機能だ。」
p89
「青い目が二つ、こちらを見ている。」
p99
「「他殺と見られる若い男性、たぶん十代だね。細胞の状態がミントだった。」」
p103
「生きるために人間であることを諦めるというのは、つまり、生きるために死ぬようなものか。」
p109
「とすると、彼女が言った共通思考も、そんな夢を見るのだろう。今の人間社会が、彼女の夢だと考えることもできる。夢の方が情報量が多いのかもしれない。彼女が目覚めたときには、そこにどんな世界があるのだろうか。」
p115
「「デボラ?」」
p133
「「もしかして、マガタ博士が作ったのではないでしょうか?」」
p133
「「人間だって同じ。見た目だけじゃ、何を考えているのかわからないだろう?」」
p152
「「疑ってしまえば、どんな可能性だってある。」僕は答えた。「信じるしかないよ。」」
p157
「「そうそう、ここにも砂の絵がある。」ヴォッシュが言った。」
p161
「「二十パーセントくらいは、取り込んだ新しいデータで、インテリジェンスの構築と修正をしているだろう。ようするに、ラーニング、つまり勉強だ。日々学んでいるわけだね。コンピュータというのは、本当に誠実な装置だ。こつこつと自己研鑽に励む。きっと、自分が高まることが最高の喜びなのだろう。」」
p162
「「ああ、私もそういう作業は大好きです。」「そうか……。」ヴォッシュはこちらを向いた。「初めて理解者が現れたな。」」
p168
「ということは逆に、デボラの発想には、どこか人間的なものを感じてしまう。気のせいだろうか。」
p173
「「掃除をして、また最初からやり直します。」修道僧は答える。」
p174
「むこうから見れば、僕たちの社会が夢の中なのかもしれない。ここが反転している。」
p180
「年齢を重ねると、珍しさも新しさも、どうしても弱くなってしまう。心を動かされるようなことがなくなってしまうのだ。」
p182
「己の欲望という信号を活かそうとしているだけだが、そこに正義や陰謀や愛情や慈悲といった装飾を伴って、判断を複雑かしているだけだ。」
p186
「「人間は、基本的に合理的な思考をしない傾向を持っています。私には、そう観察されます。無駄なことを考え、最適ではないものを選択します。それでも人間は後悔をしない。自分が選んだことに満足し、それで命を落とすことさえあります。違いますか?過去の多くの戦争は、平均化すればこのような不合理の中にのみ成立する現象でした。したがって、歴史からは、学ぶものがほとんどありません。」」
p218
「それは、誰かの思考だった。デボラの発想ではない。僕が考えた。今思いついたのだ。人間しか、思いつかない。」
p219
「単なるインスピレーションだ。人間しか、それをしない。人間は演算しない。偶然。そう、偶然だ。そんなものに頼るのは、人間だけだ。」
p224
「「君は暗闇を見ているか?」ヴォッシュがきいた。」
p225
「「宇宙のようだったね。」ヴォッシュは囁いた。僕は、生命のようだと感じた。」
p227
「コーヒーはもちろん適温を保っていて、この世で一番美味しい飲みものになっていた。」
p227
「「だが、デボラは、ほかにもいる。どこにでもいるだろう。また戻ってくるよ。」」
p233
「「人工知能が天使になるか、悪魔になるかは、人間には導くことができない、ということですね。」「うん、そこは……、まだわからない。私は、基本的に、人工知能は邪悪なものにはならないと考えているんだが、ただ、複数の知能が存在すると、相互関係から歪みが生まれ、対立が生じる。それは、ようするに、人間社会とまったく同じ、個人と同じだともいえるだろう。人間だって、ただ一人で生まれて、一人で育つなら、邪悪なものにならないのではないかな?」「相対的なものですね、正義も悪徳も。」「ただ、自分を優位に立たせたいという願望があるだけだ。自己顕示欲も意地も、他者の存在で生まれるものだ。」」
p236
「「そんな感覚なのか。夢の中では、誰でも、何度も死んでいる。」」
p240
「「我々が個体だと認識しているものも、粘性があまりにも高いから、そう見えるだけだ。指を一万年くらい押し付けていたら、岩の中にめり込むだろうね。」」
p251
「おそらく、デボラだ、と僕は感じていた。」
p257
「「存在することを、生きているというのだ、人間はね。」ヴォッシュは言った。」
p261
「「ヨーロッパは一つではないのですね。」僕はジョークを言った。「世界も一つではない。」ヴォッシュは言い返す。高齢なのに、まったく思考力は衰えない。素晴らしい。」
p262
「人間は、自分たちの至らなさを恥じ、もっと完璧な存在を目指して、コンピュータやウォーカロンを作った。その技術の初心を、忘れてはならないだろう。」
p270
「「ウグイ・マーガリン。」」
p270
「そう言えば、髪がまた長くなっているのかな、と残像で気づいた。壁からウグイの顔が現れた。彼女は舌を出す。すぐにその顔を引っ込めた。」