
時雨崎
@rainstormbook99
2026年7月14日

読み終わった
表題作「走馬灯のセトリは考えておいて」は世にも奇妙な物語でドラマ化している。本書書き下ろし。
6作品の短編集でSFのような…なんとも言い難いものもあるような…
「オンライン福男」
実際にありそうで無さそうでやっぱありそうな話。コロナによって福男(新年に神社の本殿に向かって徒競走で一番にたどり着いたに者の勝ち)が開催できなくなって、じゃあバーチャルでやろうという。
無駄にリアリティに溢れる取材記事のような形式で、多少トンチキな展開で雲行き怪しくなってもお構いなしというか真顔でボケてるというか。
このノリに付いて来れなければこの先の話にも当然付いていけない。気を抜くと振り落とされる。
「クランツマンの秘仏」
信仰と質量に関する架空の自叙伝みたいな。正気で書いたのかこれ?ってぐらいぶっ飛んでる。っていうか妙な熱の入り方で実在した気になってしまう。内容は荒唐無稽なんですが。
「絶滅の作法」
人類は滅びた後に宇宙人が地球で文明を再現して人間という種族を追体験している。
ようやくちょっとゆるめの話。人間って変な生き物かもしれないね。
「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」
後々調べたら「異常論文」と題して複数の作家が架空論文書いてるアンソロジーがあるそうで。うーんプロの作家による悪ふざけにも程がある。悪ふざけにしてはしっかり論文調の固い文章だし専門用語的なものも出るし、架空の訳者注もあるから意味が分からない。
が、あとがきまで読んで分かった。この短編集、人間として生きていく上で心の拠り所として必要になる宗教あるいは信仰の対象(一般的な宗教組織に限らない) に関する仮想と現実の話をしている。
「姫日記」
最後の一行読んでしばらく声出して笑ってた。なんなんですかこれ!
「走馬灯のセトリは考えておいて」
ドラマ見た時もすごい良い話だなあと思ったし、小説で改めて読んでみてもやはり目頭が熱くなる話だった。
散々アクセルを踏み切った短編のトリを飾るのが結構直球の良い話というのが、作者これ全部正気だったのかみたいな感じもして何とも言えない顔をしてしまうが。
"ライフキャスト"により、生前の死者の言動を再現し、バーチャルまたは物理的なボディを通して故人とコミュニケーションも生活も容易な世界。
主人公は、その故人を再現するためのコーディネーター。
出版当時もドラマ放送当時も今ほどAIが進化していなかったからどこか遠い話のように思えたけど、なんかもう…出来るんじゃないかな?でも出来たとしてもさあ、と。
地の文のおかげか、ドラマで見た時より主人公と依頼人の心の動きと傷つきやすさが繊細に感じられた。直前の「姫日記」との温度差が激しすぎる。
それにしてもタイトルが優勝すぎる。死に纏わる痛みを伴った話なのにこの爽やかさ。本短編集の中で最もキレのあるタイトル。



