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時雨崎
時雨崎
時雨崎
@rainstormbook99
SFとミステリを中心に色々読みます。
  • 2026年1月9日
    N
    N
    この話は、親子の情の話でもあり、ペットとの関わりあいの話であり、あの時こうしなければという後悔の話でもあり… 全6章を気になった順で自由に読む本。 主に読み始めと読み終わりに何を選ぶかで大きく印象が変わりそう。 犬→毒→少女→鳥→硝子→蜂の順で読了。 毒の章のラストはこういうことか…というカタルシスを得たけど犬を最後にしたらああこの犬は…というカタルシスだったと思う。どの順番で読んでもそれぞれの別の章でカタルシスを得られると思うし、特に強いメッセージ性を感じるテーマがどれなのかも読者によって違うと思う。 どれかの章ですれ違った脇役は別の章で主役。ひとりひとりに物語があって、同じ舞台の中で違う景色が見えてくる。 世界の広げかたが上手い。読み終わる頃には彼らが住んでいる街が現実味を持って想像できるようになっていた。
  • 2026年1月1日
    異常【アノマリー】
    異常【アノマリー】
    これは何のジャンルだろうかと一晩考えたけど分からなかった。 斜線堂有紀さんによる解説を読んでまた唸っている。 読み手に委ねられている。大雑把に言えば群像劇。一人一人に人生があり、とある出来事で交差する。 その出来事自体はSFっぽいけど、それはこの話の主題ではないと感じた。 「何故、それが起きたのか」 ではなく 「もし、こういう形で自分とその人間関係に向き合わなければならなくなったら?」 という問いに対する思考実験、哲学的な話なのかな。3部構成で各人の心の動きを様々な文体を用いて描いている。同テーマの小説を違う軸で同時に読まされている気分。 どこまで咀嚼できるかは読者の感性次第。この話では中心となる主人公はいないとも言えるし全ての人間がそうとも言える。すごく奇妙。 「このシミュレーションは海の動きに興味があるのであって、水の分子のそれぞれがどう動こうが知ったことではありません」 という比喩が出てくるけど、この小説のほとんどはずっと海の動きを観察する視点を無視して水の分子の取るに足らない動きを描いている。 パイロットの話は…そうなっちゃうんだ… 前フリがあってオチがある物語カタルシスは無く、人間模様や情緒それ自体の深みを味わうもの…純文学的楽しみか…?やはり難しい。 第3部のタイトルは映画パロディにしているっぽいけど全部は分からなかった。 ・ソフィーの世界 ・007は二度死ぬ ・バットマンvsスーパーマン ・ボブ・ディランの頭の中
  • 2025年12月30日
    失われた貌
    失われた貌
    正義と倫理と情の危ういバランスに何とも複雑な切なさを感じる話だった。 刑事が主役。事件は山林に遺棄された顔の無い死体が発見されることから始まる。そこから鮮やかに解決する有能な…ではなく、情や善意や正義感ゆえに脇道に逸れた調査をしていたら予想外のところで解決への道筋が立っていく。 現代的だな〜という印象。 トリックは分かりやすいヒントを出している。勘が良ければ中盤で多分〇〇〇がミスリードになって誰かが〇〇〇〇〇をしているってことだろうなと。タイトルもかなり大きなヒントっていうかそのまま。顔ではなく貌です。 が、途中で気づいてもなお犯人が「誰」なのかに差し掛かると あっ、あ〜今までの日常描写はそういうこと、もうやめようやめてくれと悲しい気持ちに。 ささやかな良心だったんだ…家族を想う感情は世間的な正義じゃままならないんだ…そういうやるせなさを感じるには十分な描写がさりげなく全体に仕込まれている。 令和の日本の倫理観だな…登場人物の感情の揺れが絶妙。ミステリでありながら人間ドラマの深みのある良作品だった。 今年のこのミス一位を取るのも納得。
  • 2025年12月29日
    文庫版 邪魅の雫
    世界のことを分かった気になり、自分が世界の中心にいる、あたかも創作物の主人公のような使命感を妄想することに対して丁寧に向き合った話なのだと思う。 まあ突き詰めてしまえば渦中の人物それぞれの視野の狭さが中二病乙という話ではあるんだが、その幼稚さを指摘しながらも別に否定しているわけではなくそれが人間だものな、それでも懸命に自分の個人の世界と社会とを擦り合わせて生きているんだからさ、という優しさを感じる。 「私の世界は、何も変わらない。何故変わらない。どうして壊れない。私は、天に誅されるべき、地に糾されるべき、どんな罪より重い、決して取り返しのつかぬ大罪を犯したのではないのか?」 自分の内側に閉じた狭い範囲では世界を揺るがすほどの大事件であることが、外の社会では取るに足らない卑小な存在であるギャップを認識出来ていない。私にとってあなたは私の世界の一要素に過ぎないが、あなたにとっては私こそあなたの世界の一要素に過ぎない。 それが分からない傲慢で愚かで幼稚な思考過程を生々しく書いてる。京極先生自身はそのへん達観してそうな印象があるんですけど、何故そんな真に迫った表現ができるのか… 最後まで読むと、途中で鞄に纏わる話をする関口くんはこれでも懸命に生きてるんだな…って感慨深くなる。 そんな話を幾重にも仕掛けをして、あらゆる視点を以て表現している。なので、事件を起こす個々人の話は収集がつかない。全員が全員、自分こそ事件の中心人物だと思っているので。 その幕引きをするのがいつもながらに京極堂、そして今回は意外なことに榎木津。 榎木津の「世界を社会や個人と強引に接続してしまう」、京極堂の「社会と世間の、世間と個人の関係を一旦反故にして、事件の起きている場そのものを解体してしまう」がラストに向けて重要な意味を帯びる、深みを感じるまとめかただった。 次巻はようやく最新刊の鵺だ!やっと積めるぞ〜〜
  • 2025年12月27日
    カササギ殺人事件 下 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)
    巨匠へのリスペクトとミステリ小説への愛を感じる。これでもかというほどに作りこまれた二重構造の本格ミステリ。 クリスティをもっと読まねば…自分がイギリス人でないことをこんなに悔やんだことはない。英国のミステリドラマ事情にも触れ、ロンドンの地下鉄名とリンクし、英語の言葉遊びを絡め…これをイギリスで育ち母国話者として原文で楽しめる読者が心底羨ましい。翻訳、辻褄合うように頑張っているなあ… 本文135−136でクリスティの元ネタはこれだよって丁寧に解説してくれるので助かる。 ほなホームズと違うか…と思ったけどフーダニットとしてはホームズ読者的に予想はついた。どちらかと言えば作中作の解き明かしの方が面白かったし鮮やかだったけど、物語的になんと皮肉な…申し訳ないがそれはサー・ドイルにも言えるのでやはりリスペクトなのか。 一箇所、表現であれ?と思ったところ。 「確実なことなど何もないこの世界で、きっちりと全てのiに点が打たれ、全てのtに横棒が入っている本の最後のページに辿り着くのは、誰にとっても心の満たされる瞬間ではないだろういか」 調べたところ、英語特有の慣用句なのだそう。手書きで英文を書くと(とりわけ筆記体で書くと)、iやtの点や横棒は最後に仕上げで、転じて「細部に至るまですべてを完璧に行う」ことを指すのだそう。 これは注釈がほしかったな…
  • 2025年12月24日
    カササギ殺人事件<上>
    カササギ殺人事件<上>
    作中作の形を取っている。作中作といえば綾辻行人の迷路館を思い出すけど何か仕掛けがあるのかな。 今のところ話の構造がわからないけどクリスティやホームズのような古典のオマージュや雰囲気はとてもわかる。湖に宝が沈んでるのってマスグレーヴ家の儀式(ホームズの思い出)を意識したのかな? 嫌な田舎の狭さって世界共通なんだな…ミステリ的にはミスリードっぽい思わせぶりな描写が多いけど事件としてはどうまとめてくるのだろうか、下巻が楽しみ。
  • 2025年12月20日
    密室殺人ゲーム・マニアックス
    密室殺人ゲームの第三作目。 というか外伝っぽい感じ。トリック自体がすごい面白いわけではなく、「密室殺人ゲーム」という題材、設定をメタ的な視点で再構築している感じ。 「他者より優越していることを自慢したくなるというのは、人間として自然な心理状態だ」 「野次馬気分でちょっと覗きに来たのに、気づいたら舞台に上げられていた」 ミステリ、とりわけ殺人のトリックを嬉々として読んで探偵役が解き明かす前にあーだこーだと頭を捻らしてどうだ解いてやったぞなんてしている読者の結局同じ心理なのかも。 個別のトリックは前作と比べて若干退屈ではあるが、本作の大トリックは別にある。シリーズものの外伝としては楽しめたかな。
  • 2025年12月18日
    かがみの孤城
    かがみの孤城
    いい話だ…。そんなシンプルな感想が、読後まず出てくる。子供向けだけどいい話だよ。 それぞれの事情で学校にいけない中学生の少年少女たちがそれぞれ自分の家から鏡の中を通って不思議な孤城に集まる話。ちょっとファンタジー。 おおきな伏線が3つ。1個目はかなり分かりやすいけど、2個目、3個目の回収が物語として美しい。全体通して、思春期の不安定さ、自意識過剰さ、そして狭い世界での現実の辛さを繊細に描いている。大人になった今だからこそ、昔を思い返してほろ苦い懐かしさに耽りながら、やっぱり良いななんて思えたりする。 孤城、というタイトルに、闘ったり、一人籠ったり、大人の知らないところで仲間と集まったり、そんな思いが込められていると思う。いいタイトルだ…。 アニメ映画化されているそうなので今度見ようかな。
  • 2025年12月18日
    安楽死が合法の国で起こっていること
    価値ある人生、ただ生きながらえるだけでなくQOLを大事にした生、それ自体はいいことだと思う。 でも、いつの間にか他人の生の価値まで一方的な尺度で測り始めていないだろうか。 ただ生きていても苦しい難病の人が最後に自分の意思で縋るはずのものが、医者が無益な治療だからと勧めるものに。 難病の人の最後の手段が精神的な問題を抱える人への安易で軽率な解決策に。 ひいては死ぬ必要もないのに「このまま生きていても人間らしい、意味のある人生を送れないから」という独善的な基準のもと「生きるに値する命であるか」判断される。 そうして囲いこんで、本当にそれは、本人の意思や正しい医学的判断で安楽死を選んだと言えるのだろうか。 正直言って、自分が年老いた時に、もしくは障害を得てしまった時、人に迷惑をかけるくらいなら、苦しみながら生きるくらいならば、合法的に楽に死にたいという考えを持たない自信はない。 けど、それは本来必要な安楽死ではなく、経済的に、精神的に、ただ楽だから何も考えずに飛びついているだけなのだろう。 安楽死を合法化するということは、この危険な誘惑を理性で抑えながら、あれも、これも、安楽死で解決しないようにすべり坂を耐えなければいけないということだ。 果たして、そんなことが出来るだろうか?安楽死が無いことで苦しむ人たちがいることを認める一方で、常に問い続けることが必要ということなのもかもしれない。
  • 2025年12月14日
    カラマーゾフの兄弟(2)
    カラマーゾフの兄弟(2)
    一生読み終わらないんじゃないかと思いながら、いつ読み始めたのかもわからない(2)を読了。(1)もざーっと読み返して内容をなんとか思い出す。 光文社の新訳は読みやすくて助かる。それでもカラマーゾフは話がどこに向かって進んでるのか、何を言いたいのか難解で読みこなすのは難しい 終盤のゾシマ長老の若い頃の話はかなりわかりやすかった 「人間が人間を殴る!なんという罪だろうか!」 「じっさい、わたしにどんな価値があって、わたしと同じ神のに姿である人間がわたしに使えたりしているのか?」 繰り返しこの話をしている。グルーシェニカの話はどうなったの?イワンは?次の巻に持ち越し。いつ読み終えられるのやら…
  • 2025年12月12日
    新装版 七回死んだ男
    SF(少し不思議)系能力持ち主人公のミステリ 1日が複数回ループする能力を持つが、ループする日は完全にランダムで、都合の良いタイミングでループはしてくれない。その能力を主人公は「反復落とし穴」と読んでいる。 ただし、その設定以外はしっかり謎の伏線と解き明かしが綿密に張られた本格ミステリ。この特殊設定を忠実に守って、そのルールの中でちゃんとミステリしている。 ループの中で本来起きるはずがない殺人が起きている、おかしいと思いつつも様々な方法で避けようと主人公は駆け回るのにことごとく失敗する。 コメディっぽく軽快に進んでいくのでふ〜〜んと思いながら楽しく読んでいるだけだと、最後にえっそこちゃんと理由あったの!?!?の連続でかなりびっくりする。 この小説は本格ミステリであることを忘れてはいけない。違和感は必ず拾われるために置かれる。そこ!?!?とは思うけどフェアではある。 あと同作者の麦酒も読んだことがあるけど、お酒、好きなんだなあ…というのが今回もよくわかる
  • 2025年10月24日
    密室殺人ゲーム2.0
    前作にあたる密室殺人ゲームの世界観を引き継ぐ話。ミステリとしては短編の連続だけど、これは前作から続けて読まないとと歌野晶午お得意の叙述トリックに惑わされる楽しさを十分に味わえない。 個人的には前作の方がトリックが面白かった。本作は叙述トリックと展開の面白さというか奇をてらってる感がある。なので最後のトリックはなんかメタ的に分かるかな。ラストを飾れる衝撃の展開ってもうそれしかなくない…?みたいな また時間をおいて最終作を読もうかな
  • 2025年10月13日
    ひどい民話を語る会
    ひどい民話を語る会
    京極夏彦ほか、民俗学や妖怪に造詣の深い名だたる方々が「ひどい民話」を語る。対談を記録した形の本なのでサラサラっと読める。 物語や昔話とは違う、寝しなや囲炉裏端でお婆ちゃんお爺ちゃんが聞かせるような、その場のノリで盛り上がればそれでヨシみたいな雑な誇張をするの民間で語られる民話。 もちろん子供の大好きなうんこや屁の話が頻発するし、オチも適当。艶笑譚は敢えて抜いているそう。それにしてもよくもまあ次から次へとひどい話が…屁っぴり嫁は子供の頃に読んだ記憶あるけどギリギリのマイルドさだったんだな。 「お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯へ」の前段で、厠の茅葺屋根を修理しようとした爺さんの足元の屋根が抜けたせいで便所に落ちて、婆さんは糞まみれの服を洗濯に、爺さんは屋根の修理のために芝を刈りに とは知らなかったなあ…あまりに披露しにくい雑学。 このくだらなさが面白い。 最後に「そんなどうでもいいものが後世に伝えられるなんて、素晴らしいことではありませんんか」という京極先生の言葉に和む。
  • 2025年10月12日
    人間たちの話 (ハヤカワ文庫JA)
    SF短編集。作風がかなり明るい。オチがふわふわっとした余韻を残してどっか飛んでいく。 基本的に作中の不思議現象は解決せずに終わるので、そういう伏線と回収を期待すると肩透かしを喰らう。 特によかった話 「たのしい超監視社会」 オーウェルの1984の延長線上の世界観でふざけ倒している。現代人はこのぐらい逞しく監視社会を乗りこなすのかもしれない。 「人間たちの話」 表題作。SF的な宇宙科学と地球外生命の可能性の話。なんだけど、たぶん宇宙で孤独かもしれない自分たち人間にとっての他者をどうして見つたいかってことだと思う。科学は結局人間が色々こねくり回しているだけなんだよな、本当に見つけたい他者ってなんだろうな、みたいな。 「No Reaction」 作用はするけど反作用はしない、そんな不便な透明人間は壁をすり抜けることができない物理的作用はしっかり受けるのに、ドアノブを掴んで自分から物理的に干渉することができない。誰かにぶつかっても自分だけダメージを受ける。 透明人間の設定がしっかりしててかなり面白かった。最後まで読むとなるほど!となる
  • 2025年10月12日
    見る・知る・学ぶ 世界遺産でぐぐっとわかる地理
    高校で学んだ(気がする)地理の視点から世界遺産を紹介する本。 図付きでわかりやすい。世界遺産の写真も多い。が、本のサイズがA5なので若干の物足りなさはある。 自然地理学で4.5割、人文地理学で4.5割、危機遺産とか環境破壊•紛争などの問題が1割くらい。人文地理は好きな国だったら大体知ってるって感じだけど自然科学は学校で習ったけどよく知らないことばっかだったのでだいぶ面白かった。今まで旅行先を決める時にあまり考えたことがない視点。鍾乳洞とフィヨルドに行ってみたいな。
  • 2025年10月4日
    会話の0.2秒を言語学する
    "すらすらしゃべることを要求するのは暴力的ではないかと感じた。" 相手の発言が終わって自分が発言する自然な間として許される時間、それが0.2秒らしい。 語用論や生成文法、意味論、会話分析、非言語要素(ジェスチャーをはじめとした会話のサブ的要素)など引き合いにして、0.2秒の間に頭の中で行われていることを紐解いていく。 終章では吃音や自閉症スペクトラム、地域差によりこの0.2秒で行われることが掛け違いになることや、流暢=能力と受け取られやすいことの問題性にも考察を述べている。 あくまで本職の研究者ではないからこその在野視点で、身近な視座から展開される話は気づきが多い。とはいえ専門書でしっかり裏付けはとっているので、一読で理解はなかなか難しい…時間を置いて再読したい。
  • 2025年9月29日
    どたん場で大逆転 (講談社文庫 に 6-39 ミステリー傑作選 35)
    表紙が違う版なので撮影。昔にどこかで見かけたのがずっと気になっていたので入手。 タイトル通り、テーマはどんでん返し。といっても作家ごとにそれぞれなので、 言うほどどんでん返しか???となるのもある。 宮部みゆきの短編はさすが、さらっと話をまとめて行くし、どことなく温かみのある人情を感じる。 中嶋博行/措置入院 しっかり土台をつくったどんでん返しでよかった。 折原一/わが生涯最大の事件 手記の形式で語られる。ちょっと叙述トリックっぽさもあり。こういうことか〜と思わせておいてひっくり返す。 北森鴻/花の下にて春死なむ どんでん返しか感はともかく、ストーリーが良かった。 亡くなった俳人仲間は戸籍不明で身元も故郷も分からぬ人だった。けれども、故郷に帰りたいと願っていたはず。微かな手がかりを頼りに故郷と彼が何故帰れなかったかを追って行く… 全体的にいろんなものが平成初期の感覚なのでまあ今と違うからな…は多い
    どたん場で大逆転 (講談社文庫 に 6-39 ミステリー傑作選 35)
  • 2025年9月28日
    丕緒の鳥 十二国記
    昔読んだけど再読。やはり「落照の獄」の異才っぷりがすばらしい。 人並みに穏和な人間の世界からケダモノと指差される存在に対して、臭いものに蓋をするように切り離してしまうしかないのか。そういう分断を繰り返して、平和で綺麗な世界は保たれるものなのか。平和で綺麗な世界を保つための手段に殺刑を用いることは本当に正しいのか。 それでも殺刑にするのが一番ましな選択であるとき、その決断をしなければいけない人間と、実行しなければいけない人間にのし掛かる重みを、民衆はどれほど理解できているのか。 他三篇も、十二国記の舞台でありながら王でも英雄でもない役人や民衆たちが懸命に生きて、少しでも良い世の中にしようと切に願う感情がひしひしと伝わってくる。 泥臭いけど心に沁み入る群像劇が丁寧に描かれた短編集。
  • 2025年9月21日
    黒祠の島
    黒祠の島
    本土から日に数度の船便しかない島…土着の宗教…外からの婿入り嫁入りを嫌い島内での結婚…本家と分家の確執…不思議な因習…台風で容易く本土と隔絶される… なにも 起きないはずはなく 因習村要素を盛りに盛ったホラーミステリー。というかミステリーとして結構しっかり成り立っていた。すばらしいどんでん返し。解こうと思えば多分解けるヒントはある。が、因習村の雰囲気作りの中で主人公が謎解きに迷いに迷いこんでいくさまが面白いし、ラストは一気に因習村のおどろおどろしい空気にのめり込んで読めるのが良い。 小野不由美は十二国記のイメージが強いけどホラーもなかなか。ご夫婦(綾辻行人)揃ってこういうの得意だね…終盤の殺人と酌量の云々は「落照の獄」を思い出させる。何書いても含蓄がある文章になってしまうな小野先生は。
  • 2025年9月21日
    #100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった
    AIは人間以上の速さと情報量で出力するけど、それが実際に役に立つのは使う人間の能力の範囲を超えない。 AIはなんでも勝手に解決してくれる魔法ではない。主体はあくまで自分。自分が問題を設定して、自分が解決方法を考えて、自分がプロンプトを考えてAIに正確な回答を吐き出させるために頭を捻る。 すごい便利だしほぼ完成されたものが簡単に出てくるからつい勘違いしちゃうけど、AIはただのツールでしかない。 と、いうことを楽してサボって課題を片付けようとした女子大生が自力で気付けるのはすごい。 そこはもうスタートの時点からこの人は違う。冒頭で課題の文章を生成しているけど、おそらく多くの同年代の人間はAI文章が何がどう不自然なのかの理解しようともせず、手直しすることもなく、プロンプトを工夫するという前々段階から進むこともなくそのまま貼る。 AIを最初から主体的に使っている。目的が「自分がサボるため」ではあるものの、主体的にAIを使いこなそうとしている。 教授からの学会のお誘いも軽くこなすので度胸がすごい。 まあまあの厚さに見えるけど軽いエッセイなのでサラサラ読める。仕事でAI活用しようという人に、まずは読んでみてほしい。
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