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時雨崎
時雨崎
時雨崎
@rainstormbook99
SFとミステリを中心に色々読みます。
  • 2025年10月12日
    人間たちの話 (ハヤカワ文庫JA)
    SF短編集。作風がかなり明るい。オチがふわふわっとした余韻を残してどっか飛んでいく。 基本的に作中の不思議現象は解決せずに終わるので、そういう伏線と回収を期待すると肩透かしを喰らう。 特によかった話 「たのしい超監視社会」 オーウェルの1984の延長線上の世界観でふざけ倒している。現代人はこのぐらい逞しく監視社会を乗りこなすのかもしれない。 「人間たちの話」 表題作。SF的な宇宙科学と地球外生命の可能性の話。なんだけど、たぶん宇宙で孤独かもしれない自分たち人間にとっての他者をどうして見つたいかってことだと思う。科学は結局人間が色々こねくり回しているだけなんだよな、本当に見つけたい他者ってなんだろうな、みたいな。 「No Reaction」 作用はするけど反作用はしない、そんな不便な透明人間は壁をすり抜けることができない物理的作用はしっかり受けるのに、ドアノブを掴んで自分から物理的に干渉することができない。誰かにぶつかっても自分だけダメージを受ける。 透明人間の設定がしっかりしててかなり面白かった。最後まで読むとなるほど!となる
  • 2025年10月12日
    見る・知る・学ぶ 世界遺産でぐぐっとわかる地理
    高校で学んだ(気がする)地理の視点から世界遺産を紹介する本。 図付きでわかりやすい。世界遺産の写真も多い。が、本のサイズがA5なので若干の物足りなさはある。 自然地理学で4.5割、人文地理学で4.5割、危機遺産とか環境破壊•紛争などの問題が1割くらい。人文地理は好きな国だったら大体知ってるって感じだけど自然科学は学校で習ったけどよく知らないことばっかだったのでだいぶ面白かった。今まで旅行先を決める時にあまり考えたことがない視点。鍾乳洞とフィヨルドに行ってみたいな。
  • 2025年10月4日
    会話の0.2秒を言語学する
    "すらすらしゃべることを要求するのは暴力的ではないかと感じた。" 相手の発言が終わって自分が発言する自然な間として許される時間、それが0.2秒らしい。 語用論や生成文法、意味論、会話分析、非言語要素(ジェスチャーをはじめとした会話のサブ的要素)など引き合いにして、0.2秒の間に頭の中で行われていることを紐解いていく。 終章では吃音や自閉症スペクトラム、地域差によりこの0.2秒で行われることが掛け違いになることや、流暢=能力と受け取られやすいことの問題性にも考察を述べている。 あくまで本職の研究者ではないからこその在野視点で、身近な視座から展開される話は気づきが多い。とはいえ専門書でしっかり裏付けはとっているので、一読で理解はなかなか難しい…時間を置いて再読したい。
  • 2025年9月29日
    どたん場で大逆転 (講談社文庫 に 6-39 ミステリー傑作選 35)
    表紙が違う版なので撮影。昔にどこかで見かけたのがずっと気になっていたので入手。 タイトル通り、テーマはどんでん返し。といっても作家ごとにそれぞれなので、 言うほどどんでん返しか???となるのもある。 宮部みゆきの短編はさすが、さらっと話をまとめて行くし、どことなく温かみのある人情を感じる。 中嶋博行/措置入院 しっかり土台をつくったどんでん返しでよかった。 折原一/わが生涯最大の事件 手記の形式で語られる。ちょっと叙述トリックっぽさもあり。こういうことか〜と思わせておいてひっくり返す。 北森鴻/花の下にて春死なむ どんでん返しか感はともかく、ストーリーが良かった。 亡くなった俳人仲間は戸籍不明で身元も故郷も分からぬ人だった。けれども、故郷に帰りたいと願っていたはず。微かな手がかりを頼りに故郷と彼が何故帰れなかったかを追って行く… 全体的にいろんなものが平成初期の感覚なのでまあ今と違うからな…は多い
    どたん場で大逆転 (講談社文庫 に 6-39 ミステリー傑作選 35)
  • 2025年9月28日
    丕緒の鳥 十二国記
    昔読んだけど再読。やはり「落照の獄」の異才っぷりがすばらしい。 人並みに穏和な人間の世界からケダモノと指差される存在に対して、臭いものに蓋をするように切り離してしまうしかないのか。そういう分断を繰り返して、平和で綺麗な世界は保たれるものなのか。平和で綺麗な世界を保つための手段に殺刑を用いることは本当に正しいのか。 それでも殺刑にするのが一番ましな選択であるとき、その決断をしなければいけない人間と、実行しなければいけない人間にのし掛かる重みを、民衆はどれほど理解できているのか。 他三篇も、十二国記の舞台でありながら王でも英雄でもない役人や民衆たちが懸命に生きて、少しでも良い世の中にしようと切に願う感情がひしひしと伝わってくる。 泥臭いけど心に沁み入る群像劇が丁寧に描かれた短編集。
  • 2025年9月21日
    黒祠の島
    黒祠の島
    本土から日に数度の船便しかない島…土着の宗教…外からの婿入り嫁入りを嫌い島内での結婚…本家と分家の確執…不思議な因習…台風で容易く本土と隔絶される… なにも 起きないはずはなく 因習村要素を盛りに盛ったホラーミステリー。というかミステリーとして結構しっかり成り立っていた。すばらしいどんでん返し。解こうと思えば多分解けるヒントはある。が、因習村の雰囲気作りの中で主人公が謎解きに迷いに迷いこんでいくさまが面白いし、ラストは一気に因習村のおどろおどろしい空気にのめり込んで読めるのが良い。 小野不由美は十二国記のイメージが強いけどホラーもなかなか。ご夫婦(綾辻行人)揃ってこういうの得意だね…終盤の殺人と酌量の云々は「落照の獄」を思い出させる。何書いても含蓄がある文章になってしまうな小野先生は。
  • 2025年9月21日
    #100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった
    AIは人間以上の速さと情報量で出力するけど、それが実際に役に立つのは使う人間の能力の範囲を超えない。 AIはなんでも勝手に解決してくれる魔法ではない。主体はあくまで自分。自分が問題を設定して、自分が解決方法を考えて、自分がプロンプトを考えてAIに正確な回答を吐き出させるために頭を捻る。 すごい便利だしほぼ完成されたものが簡単に出てくるからつい勘違いしちゃうけど、AIはただのツールでしかない。 と、いうことを楽してサボって課題を片付けようとした女子大生が自力で気付けるのはすごい。 そこはもうスタートの時点からこの人は違う。冒頭で課題の文章を生成しているけど、おそらく多くの同年代の人間はAI文章が何がどう不自然なのかの理解しようともせず、手直しすることもなく、プロンプトを工夫するという前々段階から進むこともなくそのまま貼る。 AIを最初から主体的に使っている。目的が「自分がサボるため」ではあるものの、主体的にAIを使いこなそうとしている。 教授からの学会のお誘いも軽くこなすので度胸がすごい。 まあまあの厚さに見えるけど軽いエッセイなのでサラサラ読める。仕事でAI活用しようという人に、まずは読んでみてほしい。
  • 2025年9月7日
    中世への旅 都市と庶民
    中世への旅 都市と庶民
    中世ヨーロッパって実際どうなの?をかなり具体的に調べ上げている。いかにも中世ドイツっぽい家の住み心地とか、食生活とか、宗教観とか、医者の迷信めいた治療とか、庶民が生きていくためにどう働いていたのかとか、そもそも職業選択の自由がどれくらい無いのかとか、賎民とされる職業とか、都市や農村間の移動がどれくらいできたのかとか… 都市の名前やカタカナ語が多いので油断すると何の話をしているかよくわからなくなる。でも趣味の知識だから最初から最後まで理解する必要はないかな…面白いなと思ったところだけ付箋貼っておくと良い
  • 2025年8月31日
    口に関するアンケート
    8月下旬に読むといいよ。 去年から本屋で見かけるたびに気味の悪さと好奇心をくすぐられていたので、そろそろ読むか…と。 思ったより怖くはなかったけど現代っぽいエンタメってかんじ。読者にちゃんと引っかかりを持たせて最後にああっ!ってさせてくる工夫がある。 本屋でなんだろうこれ…って印象付けられるとこまでセットで含めて読書体験。さくっと読める夏のホラー
  • 2025年8月31日
    メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット
    伊藤計劃によるMGS4の贅沢なノベライズ。 正直MGS3までのストーリーを知っていないと話の流れが全く理解できないので、伊藤計劃が好きでも読むハードルが高い。ついでに分厚い。話も重い。 とはいえ伊藤計劃好きなら読む価値あり。AIにコントロールされた戦争経済という近未来SF舞台設定があり、「虐殺器官」や戦争ものの短編は明らかに伊藤計劃氏がメタルギアソリッドシリーズの大ファンであることから大きな影響を受けていたことは間違いない。ノベライズへの力の入れようからも、それがよくわかる。 ご存命だったらMGS3までの伊藤計劃版ノベライズも読めたのだろうか…非常に悔やまれる。
  • 2025年8月14日
    動物には何が見え,聞こえ、感じられるのか 人間には感知できない驚異の環世界
    人間が知覚している世界なんて、あらゆる生物のあらゆる能力からしてみたら単なる1パターンに過ぎないということを教えてくれる。 分厚〜〜〜〜いので興味の持てそうな章から読んでも良さそう。序盤の章には結構ページを割いているので順番に読もうとすると圧倒されちゃう。 反響定位の話と、磁場の話がすごく面白かった。渡り鳥やウミガメは生まれながらに何故行くべき方向を知っているのか…ちゃんと実験もしている。 正直難しい内容も多いけどあらゆる生物学者たちの飽くなき探究心は読んでてワクワクを分けてもらえる
  • 2025年8月13日
    宇宙戦争【新訳決定版】
    宇宙戦争【新訳決定版】
    新装版 紫の上質なカバーに銀色の箔押し!かっこいい! SFのド古典。火星人は頭がデカくて触手がいっぱいあって高度な兵器で地球を侵略する。 現代からすればへえ〜宇宙人のルーツだな…ぐらいの感想だけど、当時からしてみれば作中で登場する様々な兵器はまだ現実にはなかったのにその後に戦争で使われるようなものばかりだったらしいから驚き。 やっぱSF作家は技術に夢見ていかなくっちゃ
  • 2025年8月4日
    すばらしい新世界
    すばらしい新世界
    子供は体外受精により瓶の中で"製造"され、階級別に、その階級で幸せを感じるように幼い頃から刷り込み学習をさせ、快も不快もこの社会構造で規程されたものを植え付けられる。 性行為は特別な相手と子供を作る行為ではなくなり、皆が誰とでもやる娯楽となる。母親という言葉は卑猥なものと扱われる。余暇ができたら政府支給のドラッグで気晴らしをする。老いることはなく、ただ60歳になったら急に死ぬだけ。 全部、社会が与えてくれるもので全ての人が満たされている。最下層の労働者でさえ、底辺の仕事をやることを幸福に感じている。そう刷り込まれたから。 これはユートピアか?ディストピアか? 読んでてずっと気持ち悪かったので一周回って面白かったけど、こんなに読んでて疲れる小説は久しぶりだった…すごい…ずっと気持ち悪い… よく1984年と比較されるそう。どっちも嫌だなあ。 貴志祐介の「新世界より」もそうだけど、管理社会を目指すと出産はコントロールされ最底辺の仕事を行う容貌醜い存在を作り出すという嫌な合理性に辿り着いてしまう。
  • 2025年7月31日
    麦酒の家の冒険
    "こんなビールは飲んだことがない。まるでプラズマエネルギーが食道から胃に落ちてゆくような感じ(中略)ほとんど激痛一歩手前の過剰な快楽が、脳天から爪先を駈け抜けたのであった。" 旅行に行った大学生が迷い込んだ山荘にはヱビスのロング缶と凍ったジョッキでいっぱいの冷蔵庫がポツンと置いてあるだけの不思議な家であった―― どう考えてもトンチキで馬鹿ミスかと思う。が、これは本格ミステリ。 なぜ、このような山荘があるのかちゃんと解き明かされる、凝ったミステリだった。 見た目は結構分厚い部類に入るはずだけどものすごくサクサク進む。登場人物が酔っ払いながらずっとこの山荘の謎をくっちゃべっているだけなので。 ビールを片手に読むぐらいがちょうど良い。ビール愛が溢れている。
  • 2025年7月26日
    詐欺師入門
    詐欺師入門
    あっっ…これ……地面師たちでも見たやつだ… 真剣に読んでしまった。 原著の初版は1940年頃、その頃のアメリカの詐欺の手口を紹介。映画「スティング」の元ネタ本。 内容は古いが、騙す方も、騙される方も、その構造と人間の性は変わらない。 儲けてやろうとか、だしぬいてやろうとか、他人より上になりたいとか、そういう人一倍虚栄心が強く「ズル」をしたい人ほど詐欺師の手のひらの上で転がされる。 "ほとんどのカモは上流社会の出身である。(中略)自らも出世を狙っている友人や仕事仲間やおべっか使いのおかげで、自分は優れいているのだと幻想を持ち続けているのだ。" そういう褒められた精神ではない部分を上手く挑発してやる。いざって時にカモが親類や友人に相談して冷静になってしまうこともないし、警察に駆け込むのも躊躇うから。 正直に、真っ当に稼ぐのが一番なんだな…と至極あたりまえのことがよくわかる…
  • 2025年7月22日
    学習する組織
    学習する組織
    めちゃくちゃ難しいけどビールゲームのくだりぐらいだけでも全ての社会人に読んでほしいなと。 自分の責任範囲にしか視野がないことがどれだけ危ういことか。 むしろそれ以外は完全に理解しきれない。事例がたくさんだけど知らん業界だと全然分からん。 kindleで長い間ずっと積読してたけど消化!消化になってる?半分も理解していない気がする
  • 2025年7月16日
    エーコ『薔薇の名前』
    過ぎにし薔薇はただ名前のみ、虚しきその名が今は残れり これが…唯名論と実在論を表しているなんて解説されないと分からない。ていうか解説されても難しい。 主人公は唯名論支持者、「オッカムの剃刀」で有名なオッカムがモデルというのも解説されて初めて理解した。アベラール曰く「薔薇は存在しない」。めちゃくちゃ普遍論争の知識が必要だった。 「チ。」の時代・文化背景が知りたい→「薔薇の名前」が良いらしい→宗教的なことが分からない、解説が欲しくて本屋に行く。 そんなこんなで良書に出会えた。 内容は3部構成で中世という時代背景や舞台から読み解く物語、宗教から読み解く物語、そして書物、知識、異端という物語上で鍵となるものが如何なる文脈で捉えられるものであるのか丁寧に解説。親切だけど難しい。根気が要る。 中世とは?信仰と理性とは?普遍論争とは?修道院において重んじられるべき知とは?書物はどのように扱われた?異端審問とは? 解説が!丁寧!情報量が多い!
  • 2025年7月5日
    金閣寺
    金閣寺
    現代の「無敵の人」を彷彿とさせるが、無敵の人にすらなりきれない小心者。どこまでも滑稽。 吃音ゆえに卑屈で自意識過剰で捻じ曲がった自己愛と破滅願望で独りよがりの傍迷惑な振る舞いをする男が、幼い頃より金閣寺に歪な美の憧憬と理想を抱き、初見で公式(実物)と解釈違いを起こすわ何かにつけて金閣寺金閣寺と執着し人生の大体の不都合は金閣寺が己を狂わせているからであると自己完結する。そして金閣寺を燃やす。 老師が自分のことをどう思ってるのか、叱りつけにくるのか、あの振る舞いは敢えて自分に対してやっているのか、などと自意識過剰ぶりを暴走させる描写が生々しくて嫌な共感を呼ぶのがかなり最悪で卑屈人間の思考パターンの理解が深い。最悪! 老師は面倒だなぐらいしか思ってなさそう。君が期待するほど世間は君のことなんて気にかけないし構いもしないよ。 頻繁に分からん単語を引く羽目になっているがちょっと古い表現ってかっこいいよね。厨二病から逃れられない。 日本語って…美しいよね…!わかる。 "その人生には自然さも欠けていれば、金閣のような構造の美しさも欠けており、いわば痛ましい痙攣の一種に他ならなかった。" "そのとき金閣が現れたのである。威厳にみちた、憂鬱な繊細な建築。禿げた金箔をそこかしこに残した豪奢な亡骸のような建築。近いと思えば遠く、親しくもあり隔たってもいる不可解な距離に、いつも澄明に浮かんでいるあの金閣が現れたのである。" こんな文章を学生の頃に浴びたら100%影響される。間違いない。こういうかっこつけを絶対真似してしまう。
  • 2025年7月4日
    密室殺人ゲーム王手飛車取り
    この、清々しくて潔い不謹慎さ。究極の殺人エンタメ。 密室、アリバイ、殺人にトリックやらに面白さを見出す我々ミステリファンはもとより不謹慎なんだけど。なお将棋は全く出てこない。 倫理の観念やら常識を捨てて、頭を柔らかくしていこう!前半は結構丁寧なヒントなので真剣に考えれば分かったりする。 生首花瓶のトリックが閃いた時は脳汁どばどば。 後半は ウワアア!って度肝抜かれっぱなし。そういえば「葉桜」の著者だから…そうか…!あ〜〜騙された〜〜〜
  • 2025年7月2日
    アヒルと鴨のコインロッカー
    ミステリーだけど殺人やトリックが主役じゃない方の青春ミステリー。 日本人とブータン人の違いなんてアヒルと鴨の違いみたいなもので、そのアヒルと鴨の違いを辞典で引いてみたところでいまいちな情報しか出てこない。 そんなちょっとした雑談がサラリと物語の中心に置かれる。え?じゃあコインロッカーって?が気になって読み進めるうちに物語が繋がってクライマックスへ向かっていく。 はっきりと書かない、すれ違うように出会って別れる不思議な爽やかさが良い。
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