

時雨崎
@rainstormbook99
SFとミステリを中心に色々読みます。
- 2025年7月5日金閣寺三島由紀夫読み終わった現代の「無敵の人」を彷彿とさせるが、無敵の人にすらなりきれない小心者。どこまでも滑稽。 吃音ゆえに卑屈で自意識過剰で捻じ曲がった自己愛と破滅願望で独りよがりの傍迷惑な振る舞いをする男が、幼い頃より金閣寺に歪な美の憧憬と理想を抱き、初見で公式(実物)と解釈違いを起こすわ何かにつけて金閣寺金閣寺と執着し人生の大体の不都合は金閣寺が己を狂わせているからであると自己完結する。そして金閣寺を燃やす。 老師が自分のことをどう思ってるのか、叱りつけにくるのか、あの振る舞いは敢えて自分に対してやっているのか、などと自意識過剰ぶりを暴走させる描写が生々しくて嫌な共感を呼ぶのがかなり最悪で卑屈人間の思考パターンの理解が深い。最悪! 老師は面倒だなぐらいしか思ってなさそう。君が期待するほど世間は君のことなんて気にかけないし構いもしないよ。 頻繁に分からん単語を引く羽目になっているがちょっと古い表現ってかっこいいよね。厨二病から逃れられない。 日本語って…美しいよね…!わかる。 "その人生には自然さも欠けていれば、金閣のような構造の美しさも欠けており、いわば痛ましい痙攣の一種に他ならなかった。" "そのとき金閣が現れたのである。威厳にみちた、憂鬱な繊細な建築。禿げた金箔をそこかしこに残した豪奢な亡骸のような建築。近いと思えば遠く、親しくもあり隔たってもいる不可解な距離に、いつも澄明に浮かんでいるあの金閣が現れたのである。" こんな文章を学生の頃に浴びたら100%影響される。間違いない。こういうかっこつけを絶対真似してしまう。
- 2025年7月4日密室殺人ゲーム王手飛車取り歌野晶午読み終わったこの、清々しくて潔い不謹慎さ。究極の殺人エンタメ。 密室、アリバイ、殺人にトリックやらに面白さを見出す我々ミステリファンはもとより不謹慎なんだけど。なお将棋は全く出てこない。 倫理の観念やら常識を捨てて、頭を柔らかくしていこう!前半は結構丁寧なヒントなので真剣に考えれば分かったりする。 生首花瓶のトリックが閃いた時は脳汁どばどば。 後半は ウワアア!って度肝抜かれっぱなし。そういえば「葉桜」の著者だから…そうか…!あ〜〜騙された〜〜〜
- 2025年7月2日アヒルと鴨のコインロッカー伊坂幸太郎読み終わったミステリーだけど殺人やトリックが主役じゃない方の青春ミステリー。 日本人とブータン人の違いなんてアヒルと鴨の違いみたいなもので、そのアヒルと鴨の違いを辞典で引いてみたところでいまいちな情報しか出てこない。 そんなちょっとした雑談がサラリと物語の中心に置かれる。え?じゃあコインロッカーって?が気になって読み進めるうちに物語が繋がってクライマックスへ向かっていく。 はっきりと書かない、すれ違うように出会って別れる不思議な爽やかさが良い。
- 2025年6月28日夏への扉〔新版〕まめふく,ロバート・A・ハインライン,福島正実読み終わった時間や場所を超えて駆けずり回る主人公は、さながら物語冒頭に語られるように「夏への扉」を探して期待を込めて希望を捨てずに幾つもの扉を開いてるよう。 なるほど「夏への扉」というタイトルは上手い。おしゃれ。 物語中盤でネコちゃん…と思ったので最後の回収にはニッコリ。伏線は結構わかりやすいかな?前半の車が無くなる描写とか結構念入りに張ってるから展開はこうかな?と楽しく予想しながら一気に読めた
- 2025年6月20日新世界より(下)貴志祐介読み終わったあの集団は我々より下。 って、階級をつけて断絶を作らずにはいられない人間という生き物への皮肉だなあ。 「人間」への攻撃性は徹底的に排除されるシステムだけどバケネズミにはどれだけ残虐になってもいい。普段は汚物かのように触れないようにして、何かあれば平気で殺す。 別に善良で思いやりのある人間であれというわけではないというのがめちゃくちゃ気持ち悪い… という違和感をしっかり回収。うっすら疑わしいとは思ってたけど…そこまでする!?早季の職業が伏線として張られていたのが見事。 超作り込んだ世界観をしっかりストーリー上の大トリックに噛み合わせて来る、満足度が非常に高いSFだった…
- 2025年6月16日新世界より(中)貴志祐介読み終わった理想郷の皮がべりべり剥がれていく中巻。 社会のシステムがグロいし、そのシステムにごく自然に組み込まれていることにうっすらした疑問しか持てない一人称語り手とそのグロさが読者にしか分からない構造、きつい。 思春期の危うい少年少女の繊細な情緒も良い。 あっ…普通に死ぬんだ? そしてその記憶すら消されるんだ…切ねえ…
- 2025年6月14日新世界より(上)貴志祐介読み終わった管理社会だ!やったー管理社会系ディストピア大好き! 近未来の日本、人間が超能力を操れる世界観での少年少女が主人公。 貴志祐介はホラーというかエグいというかそういうイメージあるのにやたら平和な学生生活の描写が続くな〜…?あれ?んん?おお……期待を裏切らない…… 上中下でなかなか長いが上の中盤越えれば続きが気になってサクサク進む。アニメ化もしていることだしネタバレを踏む前に読み切るぞ
- 2025年6月12日文庫版 書楼弔堂 破暁京極夏彦読み終わった心に残る一節「書物と申しますものは、それを記した人の生み出したまやかしの現世、現世の屍なのでございますよ」 タイトルが良い。前から気になってた。 京極先生の本を読むと、本っていくらでも読んでいいんだなあと元気をもらえる。手元におき、開き、字を追い、考える。そのことの価値を信じられる。 現実の偉人が次々出てくる。巷説の人も出て来る。百鬼夜行の人も出てくる。全部繋がってる。 京極著作は読めば読むほど面白くなる。
- 2025年5月27日ますます眠れなくなる宇宙のはなし佐藤勝彦読み終わった系外惑星に知的生命体は存在するのか? 「幼年期の終わり」のような物語を生み出す土壌となったであろう時代の宇宙科学とその発展が分かる。 「星を継ぐもの」シリーズ、「プロジェクトヘイルメアリー」「三体」etc…様々なSF小説で想像される地球外生命体の可能性、彼らへメッセージを発信し、受信することはできるのか?生命とはそもそも宇宙でどのように発生した?といった現実の研究の歩みを知ることで自分の読書体験に深みが感じられる 相変わらず文系でも読みやすくて助かる。 三体で出てきた恒星タウの話もちょっとあって嬉しい。
- 2025年5月22日ある閉ざされた雪の山荘で東野圭吾読み終わった紛うことなき表紙詐欺、そしてタイトル詐欺。 そんなちょっと捻った仕掛けは最初の方で明かされるからな〜んだ、と思いきやそこから展開される話の構造にはもう一段二段の底がある。 さくっとまとめ上げるのは東野圭吾らしい卒の無さがある。 推理小説のクオリティとは関係ないけど仮面荘に続いて一人称語りする主人公の性格がいまいち好きになれない人格なのはなんなのか…
- 2025年5月19日「好き」を言語化する技術三宅香帆読み終わった心に残る一節"自分と推しとの関係に他人の感情を入り込ませる必要、なくないですか?" (本文抜粋) 面白い!好き!と思ったのにSNSを開いて否定的な意見見たらそうでも無い気がしてきただとか、他人の言語化で満足して自分が本当に感じたことが流れて消えて行ってしまったりだとか… 残念ながら人間の思考というのは非常にあやふや。簡単に影響される。 だからこそ自分の感じたことを自分自身で言語化して書き出してみれば、自分の「好き」をもっと大事にできる。 "一度「好き」を言葉にして残しておけば、その感情は自分の中に残り続けます" これはいつも自分が面白い本を読み終わった時に感じていること。何も残さずその感動が風化していくには勿体なさすぎる本がこの世には多すぎる。 さくっと読める手軽な新書で、内容は簡単だけど大変共感できる本でした。
- 2025年5月18日英国の幽霊城ミステリー山田佳世子,織守きょうや読み終わったやっぱヘンリー8世ってクズだわ。 そこが面白いんですけどね。 イギリス各地にある城に出る幽霊について、中世の古城から今も王族が住むバッキンガムまで、満遍なく解説。確かに怪奇現象的なことはあるようだけど大体は害がなくただ現れるだけ、英国人も怖いとかは無い模様。なんといっても国王が住むバッキンガムにまで出るから… もともとは雑誌 建築知識に連載されていたコラムらしく、全部間取り図がある。本文ページでもフルカラーイラストが多くて大満足。
- 2025年5月10日ガニメデの優しい巨人【新版】ジェイムズ・P・ホーガン,池央耿読み終わった「星を継ぐもの」 の続編。残った謎であるガニメアンなる存在のこと、そして彼らがなぜ「ルナリアン」の始祖を含めた地球の生物をミネルヴァに運んだのか、ミネルヴァ原産の生物はどうなってしまったのか… 前作よりちょっと難しい、けどやっぱりミステリー仕立てになっていて壮大な構想が面白い。やっぱ物理的にも時間軸的にも天文学的なスケールの仕掛けは圧倒される。
- 2025年4月29日
- 2025年4月28日シャーロック・ホームズの護身術 バリツエドワード・バートン゠ライト,新美智士,田内志文読み終わった「でもぼくは日本の格闘術であるバリツを少々かじっていて」…バリツ?? いったいバリツはなんなのか。いかなる武術だというのか。日本人は何も知らないぞバリツのことなんか。 元ネタと思しきバーティツの戦法についてかなり実践的に解説してくれる。絵付きで。紳士はこう闘う。なるほど。なるほど?一体何を読んでいたのだろうか私は。 タイトルがもうずるいんだ。本屋で平積みにされてたら買うしかないだろう。
- 2025年4月27日後巷説百物語京極夏彦読み終わった心に残る一節(引用) 部屋の境界が消えている。 もう、言葉しか見えない。 言の葉が明確に像(かたち)を結ぶ。 なる程、こうして物語の中に入るのか。 昔と今を入れ替えるのか。 今は昔。 めちゃくちゃ京極作品らしい文章。 百介さん…! 続巷説のショッキングなラストだったのでどう続けるのかな?と思った負けず劣らずショッキングなラスト。 最後2話で鉄鼠の檻と陰摩羅鬼の瑕にリンクしているので京極ファン的にはニヤリな感じ。
- 2025年4月26日予言の島澤村伊智読み終わった本土と隔絶された孤島…祟り…因習…霊媒師の予言…オカルトの噂を冷やかしに旅行…何も起こらないはずはなく(ミステリー的に) ホラーかな?ミステリーかな?と疑いながら読んでたら斜め上の方向に怖いオチが待っていた。 アンフェアでは〜〜〜〜???という気持ちは無くも無いけど、単純にそれは何か…怖い。すごく…怖い…。
- 2025年4月23日プロジェクト・ヘイル・メアリー 下アンディ・ウィアー,小野田和子,鷲尾直広読み終わったSF小説に出てくる如何にももっともらしい科学的説明って……良い!!! 読み始めはアメリカSFらしいエンタメのノリで軽く楽しめる。読み終えた頃には…生物学って…おもしろ…!(もちろん小説のこじつけではあるものの) 宇宙SFは宇宙物理や量子力学、太陽系外の知的生命体の可能性について想像を膨らますパターンが多いイメージだけど、これはメインが生物学。進化論。新鮮で良い切り口。科学の実験は面白い! そして…最後までアメリカ的なエンタメへの期待を裏切らない…!読後感スッキリで楽しく読めるSF。
- 2025年4月18日プロジェクト・ヘイル・メアリー 上アンディ・ウィアー,小野田和子,鷲尾直広読み終わった
- 2025年4月16日狐花 葉不見冥府路行京極夏彦読み終わった心に残る一節「お前の幽霊は、私が見よう」 珍しく分厚くない京極夏彦。歌舞伎の脚本用の書き下ろしたものなのでサクサク読める。 彼岸花の着物を纏った美貌の男性 萩之介が、とある家とその関係者たちの前に現れる。しかし彼は、痴情のもつれで密かに殺されたはず。彼は幽霊なのか、それとも。 少しずつ明らかになっていく過去の因縁はさすがの話の上手さ。 話の閉じ方が物悲しくやりきれない。憑き物落としをするのは「百鬼夜行シリーズ」の中禅寺秋彦の曾祖父にあたる御方。あれの雰囲気が時代劇的な舞台に、そしてコンパクトにまとまっている。 今後の京極作品布教の候補になりそう。
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