ちゃそす
@1000book_zautusu
2026年7月12日

細胞内共生説の謎
佐藤直樹
読み終わった
50
細胞小器官の中でも特異な特性を持つ葉緑体とミトコンドリア。それぞれ、かつては細胞内から生じたオルガネラだと信じられてきたが、ある期を境に細胞外から取り込まれたとする説が生まれ、今ではこの考えが主流となっている。
本書では、科学史と現在に至るまでに生まれた研究的知見をもとに、細胞内共生説についての確からしさについて検討していく。
筆者は専門ということもあり、ミトコンドリアについては脇に置いて、葉緑体について議論されている。
ミトコンドリアと葉緑体は独自にDNAを持ち、自ら細胞分裂することから、外部から侵入した微生物が共生したものだと確かに教科書では習った。だがその説は確かな証拠の下立証されたわけではないという。
葉緑体とシアノバクテリアの類似点については当時から認識されていたが、それでも共生説は当初は奇天烈な考えとされていたらしい。それが独自のDNAの発見とゲノム解析技術の発展によって遺伝的相同性が説の後押しとなり、今では葉緑体は細胞外部からの共生によって獲得したオルガネラだとされている。
だがそれから分子系統技術等の発展により、シアノバクテリアが共生したものという理屈では説明できない発見がいくつもされている。
代謝経路の相違や、経路は同じでも酵素が異なっていること。葉緑体の膜合成は宿主の核にコードされているにも関わらず、その遺伝子はシアノバクテリア由来ではなく別の細菌由来であること。他にも他の細菌由来と思われる遺伝子も多く見つかっていることなど。
共生説が新たな発見に対する認知バイアスになっている可能性を筆者は指摘していた。仮説にとらわれず、観察された現象をいかにしてありのままに精査するのかが科学の核心なのかもしれない。
科学史、今の定説に至るまでの軌跡から学説を見直し、研究に取り組む筆者からは、物事を正しくを知ろうとする真摯な姿勢を感じた。
