
読書猫
@bookcat
2025年3月28日

風と光と二十の私と
坂口安吾
読み終わった
(本文抜粋)
“君、不幸にならなければいけないぜ。うんと不幸に、ね。そして、苦しむのだ。不幸と苦しみが人間の魂のふるさとなのだから、と。
だが私は何事によって苦しむべきか知らなかった。私には肉体の慾望も少なかった。苦しむとは、いったい、何が苦しむのだろう。私は不幸を空想した。貧乏、病気、失恋、野心の挫折、老衰、不知、反目、絶望。私は充ち足りているのだ。不幸を手探りしても、その影すらも捉えることはできない。叱責を怖れる悪童の心のせつなさも、私にとってはなつかしい現実であった。不幸とは何物であろうか。”
“私は近頃、誰しも人は少年から大人になる一期間、大人よりも老成する時があるのではないかと考えるようになった。”
“自殺が生きたい手段の一つであると同様に、捨てるというヤケクソの志向が実は青春の跫音(あしおと)のひとつにすぎないことを、やっぱり感じつづけていた。”


