
りら
@AnneLilas
2026年7月17日

U
皆川博子
読み終わった
WW1
西洋史
流浪の果て
@ 自宅
2冊目の皆川博子作品。
第一次世界大戦を扱ったフィクションを探していて行き当たったのがこの『U』だった。
戦前生まれで今年96歳になられる皆川先生が今なお分厚い新刊を上梓なさっているのも驚嘆するけれども、『U』をお書きになった時点でもすでに80代後半という衝撃。
17世紀、オスマン帝国のデウシルメ(強制徴募)によって現在のルーマニアから連れ去られたザクセン人、マジャール人、ルーマニア人の、それぞれ言葉も境遇も異なる3人の少年の辿った苦難の道行き。1915年、ドイツ帝国海軍の誇る潜水艦Uボート一隻がイギリス海軍に鹵獲されたため、友軍のUボートが脱走し自沈させた捕虜を救出するまでの決死の航海。手記という形態を採ることで、二つの時空が、やがて青年へと成長した三人の生をプリズムのように眩く映し出しながら混ざり合っていく。
片方だけでも唆られる筋立てだというのに、流転しながらどちらの時空の煌めきも鬱屈も味わえるなん。…!
ムスリムへと強制的に改宗させられイェニチェリとなるべく修練を詰み、絶望の中で若きスルタンへの忠誠心や束の間の自由の歓びを知る瞬間も、奈落のような喪失感を抱えながらも名を変えて生き続け、深海に沈みながらも友との再会を待ち侘びる切望もそこにはある。
まさに耽読。読み終わりたくなかった。最高でございました。
いつかは読んでみたいと思っていた皆川作品をこれまで手に取らなかった己の蒙昧さを悔いつつ、これから先生の著書をあれこれ読んでいけるのはひたすら幸せ。手始めに〈エドワード・ターナー〉シリーズ三部作を手元に揃えた。