
M市のR氏
@aoi-honmimi
2026年7月19日

禍
小田雅久仁
読み終わった
──これは禍か、それとも祝福なのか。
口、耳、目、肉、鼻、髪、裸。人体に備わるものたちによる奇妙な物語。
口から伝わる物語への没入感。人の耳に潜り、体の持ち主を操る優越感。視線から接続される灰色の世界はただの夢なのか。痩せた妻しか知らない男はいつしか肉の塊のような女たちに異常な執着を見せ、鼻は培養され、耕され、そして削がれる。髪にまつわる新興宗教の後継者の引き継ぎの儀式は異様を極め、電車内で起きた裸にちなんだ変事は世界中に波及し、やがて文明そのものが変わっていく。
ホラーという触れ込みだったが、どちらかと言えばSFの傾向が強めな印象で、四作目の「柔らかなところへ帰る」に至ってはSF通り越してもはや神話のようだった。
どの物語も客観的に救いはないのだが、当人たちはどこか幸福そうに見える。彼らの身に起きたことは不幸な出来事ではなく新たな世界への一歩なのだろうか。
